17話 憂苦
図書館まで着き建物内に入って行く。
浩輝は野村さんのリボルバーを右手に握る、弾が六発入ってる事を確認してゆっくり隠れながら進んでいく。
本棚に隠れて奥を見てみると小川の爺さんがレミントンM700というライフル銃を持ち図書館の天井に向けて発砲した。
「……木村達は無事か?ここからじゃ見えない、爺さんをこっちに誘き寄せてみよう」
浩輝は小声で喋りもう少し近付いていく。本棚に張り付き覗き込む。今の所浩輝が居る事は分かっていない様だ、リボルバーの撃鉄を押し引き金に人差し指を入れ、威嚇射撃で一発奴の足元に飛び出し撃ちで発砲する。
奴が少し驚いた様だ、浩輝は本棚に張り付きリボルバーを鞄にしまう。
奴が近付いてきたので待ち伏せし本棚の角に来た。浩輝はCQCを仕掛ける。小川はうまく倒れてくれた、嫌な臭いがした。
「……この爺さん酒飲んで暴れていたのか……」
浩輝は呆れていると、
「見事なCQCだ、安達」
達之の声がした方向を向くと小さく拍手しながらこっちに来た。
「遅くなって悪い、もう終わったみたいだな」
達之は倒れてる小川をチラッと見て喋った。
「酒臭いがまだ生きてる、お前は良くやった」
達之が浩輝の行動を褒めてくれた。浩輝は嬉しかった。
「もう大丈夫だから木村達探そうか達之」
浩輝は達之と共に図書館の奥へ進んでいく。
奥に進んでいると木村達が固まって体育座りをして怯えていた。浩輝はゆっくり近付き木村の肩を優しく叩く。
「木村……もう大丈夫だ」
「安達君……」
木村は浩輝の顔を見た、あの状況がかなり怖かったみたいだ。友里ちゃんと長岡も浩輝達が居る事に気がついた様だ。
「安達君……ごめんなさい、あなたをこんな危険な目に遭わせてしまって……」
木村が謝罪してきた、木村が浩輝を気遣う。
「いや、俺は平気だ、木村達に怪我は無いか?」
「はい、……幸い」
木村達が無事だったので安心した。しかし一つ気になる事があった。
「木村、何であの爺さんは図書館に来て発砲してたんだ?」
浩輝は気になって質問をした。
「図書館で本を読んでいて、野村さんが殺されたメールが入って少し経った頃にお爺さんが突然私達に発砲してきたんです」
「何の警告も無しにか?」
達之は友里ちゃんと長岡を心配そうな目で見ながら喋る。
「はい……、渡辺さんと長岡さんは私より離れて絵本を読んでいましたが、銃声に驚いてうまく逃げれなくなって、私と一緒に図書館の奥へ逃げ身を小さくしながら、安達君へ電話しました」
木村の話が終わり友里ちゃんと長岡は絵本のコーナーへ行ってしまった。
小川がライフル銃を撃ってきたとはいえ、本棚は少ししか壊されていなかった。
「……あの、あのお爺さんはアルコール依存症ではないのでしょうか……」
木村が小声で立ち上がりながら喋る。
「長岡さんがスーパーで襲われた時、お酒の臭いがしたと言ってきたので」
確かに俺が止めた時酒臭かったからな、心の中で呟くと、
『大正解です』
マイの声が聞こえた、本棚の後ろからケイとマイが出てきた。
『小川徹さんはアルコール依存症です、スーパーやコンビ二からお酒を買って飲んでいます』
何だと! こいつらはそれを知っていて参加させているのか!?
『アル中と分かってて何故参加させてるか?、とでも言いたいか?まずゲームを面白くさせてくれるから、生きてるお前ら死んだ奴ら全員ゲームに参加してるのは理由がある、これは安達には言ったのだが忘れてたか?』
ケイ発言の後半部分を忘れるはずが無いが、達之と木村は驚いて浩輝の方を見ていた。
「……」
浩輝は黙っていたが心配掛けたくなかったから喋らなかった。
『俺達はこれで』
ケイの発言を最後にケイとマイはいなくなった。
「……安達、何で黙っていた」
達之は腕組みをし下を向いて喋る。
「……悪かった、あいつらの話で心配させたくなかったんだ」
浩輝の発言で達之の視線は浩輝の顔に向けた。
「……一人で抱え込みすぎだ、俺はずっとお前の味方だ。悩みは俺に言え、少し楽になれるかもしれんぞ?」
「私も……あなたの味方です。一緒にこの世界のゲームを終わらせて皆で元の世界に戻りましょう」
達之と木村の優しい発言に浩輝は心の悩みが少し減った。こんなに安心できる友人は初めてかもしれなかった。
「ありがとう……」
浩輝はとても嬉しかった、黙ってた事で暴言を吐かれたり責められたりしなかったから。
三人の会話は終わり、本棚へ向かい読みたい本がある棚に行く。
浩輝はあるフロアへ行ってみた。
「野村さんは警察官だったよな……、難しいかもしれないが事件が書かれてる本を調べてみるか」
浩輝は下の段にある少し分厚い本を手に持って読書スペースに行き座って本を読み始める。ページをめくっていく。
色んな事件があるな、俺達は現実世界ではどんな扱いになってるんだ? 拉致監禁扱いではないのか? そう考えながら読んでいく。
「……殺人事件やいろんな事件の事が書かれてる」
浩輝は小声でボソッと吐くと、達之が何かの本を左手に持っていた。
「この本は……?」
浩輝は達之の持ってきた本を指差す。
「仮想空間関係の本だ、この世界が仮想空間だからな」
喋りながら本を開いて読み始めた。
最後に木村が看護関係の本を浩輝の席の正面で読み始める。
……嘘だろ~、集中しにくいじゃないか……。
心の中でそう吐いて集中して本を読んでいった。