1話 はじめて
「……どうなるかしら?」
「……うまくできるはずだ」
若い男女の声が聞こえる。安達浩輝はこの声を聞く事はできるが、後は何もできない状態だ。
何もできない、どうすればいいのか分からない。この暗闇の中で声を聞く。
「……いくぞ」
「……楽しみね」
この声を最後に意識が無くなった。
布団に入っているかの様に温かかった。ゆっくり目蓋を開くと、低い天井だった。
浩輝は、布団で眠っていた様だ。左右に首を動かす、カプセルホテルの様な場所だった。
「何でカプセルホテルで寝てるんだ?」
顔をしかめ独り言を言う。困惑していたが右側に置いている浩輝の携帯電話の着信音がした。ビクッとしたが携帯を手に取り確認する。
[おはよう、カプセルホテルから起きてこの公民館へ来て下さい]
謎のメールが入っていた。誰からのメールかは分からなかった。
「うーん、公民館の場所の地図がメールとあるから行くべきかな」
浩輝はカプセルホテルから出る事にする。普段使っている鞄が見当たらなかった。今の所、所持品は携帯だけだった。
携帯を持ち、カプセルから出る。服装はVネックの長袖の黒シャツに左胸に黄色のSと刻まれてる赤い線が袖などにあるスタジャンを着て、ジーンズをはいて、靴はスニーカーだ。髪型は黒ショートのウルフカットだ。
首元に変な感じがした。近くにある鏡を見ると銀色の首輪が着けられている。
「何で俺に首輪なんか着けられている?」
首輪が着けられているのを知り眉をひそめる。今の所呼吸は苦しくない。
「……公民館に行けば理由が分かるかな……?」
目的の場所に行かなければならない事を思い出し、歩き始める。
カプセルホテルを見ながら歩くが店員も客も見当たらない。ここにいるのは浩輝一人だったので不安だった。
「何故店員がいない?」
明かりはついてるが一人という状況に手足がゾクゾクする。
カプセルホテルの出口が見えた。自動ドアの前に立ちドアが開き外に出る。
外は晴れていて太陽が暖かく感じた。外の建物を見ながら歩く。
コンビ二やレストラン、スーパーなど人がいてもおかしくない場所が在りながら人は全く居ない。まるで世界に残された人間の様だ。
不安と恐怖の中、浩輝は歩き続け目的地の公民館へ着いた。
公民館に入り、ホワイトボードが見えホールに来いと書かれていてホールの場所まで描かれていた。
「……ホワイトボードに書かれているから俺以外の人間は居ると言う事か?」
少しだけ安心し、ホールの場所に進む。
ホールに着き扉を開く。
ホールの中には老若男女十七人が居た。若いのは小学生位の子、年寄りは七十位いってる老人、浩輝と同じくらいの年の人と集まっていた。
この集まりに混ざりに行くと、浩輝位の年の青年が話しかけてきた。
「なぁ、お前もカプセルホテルから目覚めてここに来たのか?」
スウェットズボンにジャージ、茶髪のアシンメトリーの髪型の青年が質問してきた。彼も浩輝と同じ様に目覚めてここに来た様だ。
「あぁ、もしかしてお前も?」
「そうだ、ちなみにここに居る全員も同じだったみたいだ」
青年は落ち着いて話した。この青年も浩輝と同じ様に首輪がある。
「自己紹介が遅れたな、俺は押田達之だ、よろしく」
自己紹介をしてきたので浩輝もする。
「俺は安達浩輝、達之もしかしてここに居る人全員に自己紹介を?」
「あぁ、俺が名前教えてやろう」
達之は以外と積極的な奴だと知る。
「あの野球帽を被ってる少年は中村雅也八歳」
「迷彩服の少年は影山和彦十四歳」
「藍色の長ズボンの人は野村庄吾三十歳」
「薄手のオレンジ色のダウンベストの老人は小川徹七六歳、……正直あまり関わらない方が良い」
達之がしかめ面してその老人の名前を言う。
「何かあったのか?」
浩輝は小声で達之に質問した。
「簡単に言うと老害だ」
シンプルに答えてくれたが、何があったのかは答えてくれなかった。
「話を戻すぞ、学ランを着てる奴は大杉直人十七歳だ」
「チノパンツをはいている人は山藤豊四三歳だ」
「学生服を着てる奴は伊藤真十六だ」
男性はこれで全員の様で女性の名前を教えてくれた。
「髪がハーフアップの子は木村彩十九歳」
「前髪パッツンショートの女性は山崎幸恵二三歳」
「プリーツスカートの子は上原美由樹十八歳」
「ミディアムサイドダウンの髪の女性は佐藤智枝美二六歳」
「ショートボブの髪型の人は大下真純二二歳だ」
「あの老人は有島花子七四歳」
「アンサンブルを着ている人は西岡文恵二十歳」
「汚れたワンピースを着ている子は長岡由貴子十五歳」
「小学校の制服を着ている子は渡辺友里八歳だ」
「とりあえずここに居るのはこれで全員だ」
達之の説明で名前と年などが分かった。
「ありがとう、達之の年齢は?俺は十九だけど」
達之はニッコリ笑い、
「俺も十九だ」
同い年の奴だったので嬉しかった。笑っていたが達之は真剣そうに話した。
「安達、彼らと話をしたが俺らと同様首輪がついてるのが分かった」
腕組みをしながら達之は話す。
「首輪をされてると言う事は、これから何かが起こると言う事か?達之」
「恐らく、そうなるかもしれん。状況がまだ良く分からない」
「俺達がこのホールに集まっているが何故ここに集合しなきゃいけないかはメールに書かれていないんだ」
達之は浩輝と同じくメールが来てたみたいだ。
「確かに俺のメールも理由は書かれていなかった」
浩輝は不安になってきた。
少し待っていると放送が鳴った。
《皆さん、ステージの机に注目して下さい》
謎の女性の声がして、ステージの机に注目する。全員で見ていると、トイレの男女ピクトグラムの様な服をした人形? が二体出てきた。
『初めまして皆さん、マイです』
女のピクトグラムの人形? が話した。
『俺はケイだ』
男のピクトグラムの人形? も話す。
『皆さんには殺し合ってもらいます』
マイと言う人形の突然の発言に周りがザワついた。
達之を見ると顔は冷静だったが、黒い手袋を片方だけしている左手が震えていた。
名前 年齢 誕生日 血液型 身長体重 家族構成 髪型服装 (携帯情報男性)
安達浩輝 十九歳 九月十日 O型 一七四cm六二kg 両親 一話の説明通り
押田達之 十九歳 八月六日 O型 一八一cm七十kg ? 茶髪アシンメトリー、一部に青ラインがあるスウェットズボン、ジャージ、黒い靴
中村雅也 八歳 五月十六日 B型 一三一cm二九kg 両親弟 黒短髪、野球帽、水色ベースの服にバットとボールが刻まれている、茶色の半ズボン、青い運動靴
影山和彦 十四歳 二月十二日 AB型 一六五cm五四kg 両親兄 黒ベリーショート、Uネック半そで黄緑右腕あたりに階級、迷彩色のズボン、黒の紐靴
伊藤真 十六歳 十月十四日 O型 一六六cm五六kg 両親妹 黒ミディアム、学生服、ローファー
大杉直人 十七歳 十一月二二日 A型 一七一cm六十kg 両親姉 黒スパイキーヘア、学ラン、白靴
野村庄吾 三十歳 一月十四日 O型 一八二cm七二kg 妻息子 ネープレス、白のTシャツ、藍色長ズボン、黒靴
山藤豊 四三歳 七月二七日 A型 一七三cm六一kg 妻息子娘 ツーブロック、ワイシャツ、茶色いチノパンツ、茶色靴
小川徹 七六歳 十一月二五日 A型 一六七cm六三cm 妻 白髪短髪、半袖緑横線ポロシャツ、オレンジ薄手ダウンベスト、灰色スウェットズボン、白長靴