チュートリアル
ギルドカード発行の翌日。昨日は結局恥ずかしさからまともにギルドにいられなかったのですぐに外に飛び出してしまったのだが、幸いなことにギルドで一日の寝泊りには十分な資金を受け取っていたので、特に困ることはなかったのだが、
「はぁ…。」
俺はギルドの大広間にある窓際の席でギルドカードを眺めながら大きな溜息をつく。たった今とんでもなく困っていることが一つある。……それは名前だ。なんでかって?それは――
「よう新入り君!なんか元気ないねぇ」
「やあ新入り君!昨日はすぐに帰っちゃったけど何かあったのかな?」
「うわ!なに!?」
え?何かすごい髪の色した人たちに絡まれた!一人は赤でもう一人はやや緑がかった青。これで黄色い髪の人が来れば見事に信号機。じゃなくて!いや、見るからにチャラそう。これカツアゲ?ギルドの洗礼ってやつ?
思わず身構える俺にキョトンとした二人は顔を見合わせ笑い出す。
「いやいや脅かせちゃったかな?」
「ギルドのこと全然わかないだろうからちょっと教えてやろうと思っただけさ」
「「だいせんぱいとしてね!!」」
息がぴったりの二人。よっぽど仲がいいんだろうか。いや、髪色はともかくよく見るとよく似た顔をしている。もしかして、
「もしかして双子?」
「「ごめいとう!!」」
どこまでも息が合う二人だ。会って早々だが感心してしまう。
「まずは俺から自己紹介。」
赤い髪の好青年が言う。
「俺の名前はヒュース!得意分野は土!」
「続いて俺はユーズ!得意分野は風!」
「「二人合わせてヒュースユーズ!!」」
「そのまんまじゃん…。」
何のひねりもないネーミングに少しばかりあきれる俺にお構いなしで話を進める青い髪のユーズ。
「ここいらじゃ割と有名なチームに所属している。」
「でも今はリーダーがクエストで不在なんでチームは休止中。」
「「だから二人合わせてヒュースユーズ!!」」
「な、なるほど…。」
この二人めちゃくちゃ勢いで話してない?交互に話してきてなんかもう疲れてきた。こういうタイプあまり得意じゃないんだよなぁ。
「それで新人君?君の名前は何なんだい?」
「え…?」
「おっと気にしないでくれ!シャイボーイならギルドカードを見せてくれるだけでもいんだぜ!」
「あ、いやその」
「お、机の上にあるの君のじゃない?」
「あ、ちょっと!」
俺が慌てて取ろうとするが一手遅く青い髪に取られてしまう。
「えっとなになに…。キョースケ!君の名前はキョースケかなるほど」
そうだ。そうなんだ。本来なら”キョウスケ”のはずなのに”キョースケ”としてギルドカードに登録されてる。
文字こそ読めても書けないからと口頭で代筆を頼んだ結果がこれだ。え?些細な違いじゃないかって?いやこれ自分の名前だからね。そりゃ些細なことも気にしますよ。
おまけに一度登録した名前は変更できないらしい。つまりはこの名前で俺はこの世界を生きていくことになるのだ。これは耐えられない。
頭を抱えている俺に対してにやにやしながら訪ねてくるヒュース。
「でもほんとはキョウスケなんだろ?新入り君。」
「え?なんでそれを」
「だってそりゃねぇ」
「ねぇ。君が受付で頼み込んでるのを見て話しかけようと思ったんだからなぁ」
「「はっはっはっはっは!!」」
えぇ?!なにこの人達わかっててやってたの?!道理で身振りが大げさだなあなんて思ってたけども!いや本当多いよこういうのここのところ。あの悪女エルフといいこの二人といい俺に辛辣過ぎない?この世界。もうつらいんですけど。
ぐぬぬと権幕を見せる俺をまあまあとなだめる双子。とにかくと話を切り替えるヒュース。
「まあまあ、そんな右も左も上も下もわからない君に手取り足取り教えてやろうって根端さ。」
「そういうこと。とくにこの、ギルドカード!結構面白いシステムになってるんだよ!知ってる?」
ギルドカードを取り出しながら言う二人。もうすでに苦手な人リストに入りかけてはいるが、何もわかってないのも事実。
正直なところこういうタイプの人間とはあそりが合わないのだが、相手を逆なでしないようにピカピカの新人を少しばかり演じて彼らの厚意を甘んじて受けよう。うん。そうしよう。
「ありがとうございます。ぜひ教えてください!」
威勢のいい返事をして俺のギルドチュートリアルは始まった。
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窓際から長机に移った俺はまずカードのステータスについての説明を受けることになった。
「とりあえずははステータスだな」
「耐久、CP、筋力、魔力、敏捷、運、センスの7種類だな」
「耐久は文字通り耐久力だな、体力という認識でいいが、いいけどその人が受けられる衝撃の限界でもある。」
「CPはコストポイントだ。後で詳しく説明するが、魔法スペルだったりクラフトだったりっていうのを使う時に消費されるものだ。これは時間経過以外で回復する手段がない。」
(要は魔法を使うためのMPといったところか。回復手段がないのは気になるがまんまゲームだなこりゃ。)
「次は筋力、自分が持ってる力だな。まぁこれもそのままの意味でいい。」
「魔力もそのまんまだね。ただスペルを使うときにこれが重要になってくるから魔力の数値は入念にチェックした方がいいぞ。」
「「説明はそれくらいかな~」」
「いやいやいやあと三つは説明しないのかよ!」
「「敏捷はすばやさ。運は運。センスはセンス。はい。」」
「雑!」
絶対途中で話すの飽きたでしょこの人たち。まあ最初の方の説明もゲームやってたら大体は想像できるものだからこの辺の話は割愛してくれても問題ないかいいけども。
センスや運はフレーバーテキストのような見かけのステータスという認識でもよさそうではある。
要はゲームそのもの。まあここまでゲームのステータスそっくりだとこの世界が仮想現実じゃないと疑いたくなる。いや、逆にゲームのステータスの方が人を測るのに適しているということなのか。
「あとは、レベルと属性傾向か」
「さっき見たけどキョースケは星持ちなんだよな」
「星持ち?」
「そ、天の3属性のうちの一つ。星属性。これめちゃくちゃレアなんだぜ」
「普通なら属性傾向にある属性しか使えないんだけど星の場合は上位と下位の基本属性の6つがすべて習得できるからなぁ」
「そうなのか。」
「そうそう。だから今はレベル低いけど高レベルになって実力が身につけばあっちこっちから引っ張りダコだぜ?」
基本属性全部が使えるってかなり有用だよな。ってことは当たりを引いたのか。これは今後が期待できそうだ。
「あとはレベルだな。クエストをやるなり戦闘をするなりで経験値を貯めるとレベルアップできるんだけど、レベルが上がったからと言ってステータスが上がるわけじゃないんだぜ?」
「じゃあただの飾りじゃないですか。」
「いやいや、更新室に行ってギルドカードを更新するんだけど、その時レベルが上がっていればボーナスとしてポイントがもらえる。」
「そのポイントをギルド所有の下位スペル大全に使えば無条件で下位スペルが習得できるっているめちゃくちゃ画期的なシステムなんだぜこれは」
「そんなこと言われても全然実感わかないし」
「ま、それはスペルとクラフトの説明をするときにわかるさ」
「とりあえずレベルはその人の実力と重ねてきた経験の数値化って感じだな」
レベルが上がってもステータスが上がるわけじゃないってことは、自己鍛錬の結果が更新時に反映されるということだ。そう簡単に強くなれるわけじゃないのか。ここはやはりゲームと現実の違いといったところだろう。
少し期待していた部分が思っていたのと違ったためにがっかりはしたが概ね理解した。
「よし、まだカードの説明は全部じゃないが先に別の説明に移ろうか」
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「さて、クエスト板のところまで来たわけだけど、なんで文字が読めるのかって思ってそうだから説明しておこう。これは共通言語ってやつだ。」
「共通言語?」
昨日からずっと気になっていたがなぜ文字が読めるのか。書いてある字は見たことがないものだが、目を通すと意味が分かる。この違和感はかなりのもので気持ち悪ささえ感じられるほどだ。
このよくわからないものはどうやら共通言語というらしい。これはどの国どの世界から来てもその人の知っている言語として読むことができる超万能言語だとか。
といっても見えている知らない文字が読めるというのは違和感でしかない。しかし今後この文字に付き合っていくことになるのは間違いないので慣れるしかないか。
ちなみに文章でやり取りする場合もこの共通言語を使わなければならない。要はこのわけわからない文字を覚えないといけないわけなんだが…。まさか異世界に来ても外国語の勉強をやらされるとは。そう簡単に楽させてくれないか。
「ま、パターンが判ればすぐ書けるようになるから安心しな」
「はぁ、そうですか」
「まあ気を取り直して次!このギルドには3種類のクエストがあります!」
「難易度順に討伐系クエスト、調査クエスト、そして町のお手伝いでーす!」
ヒュースの切り替えに続いてヒュースが説明する。っていうかステータスの説明もそうだったけどやっぱり雑じゃないかこの人たち。
「最初の二つは言葉通りまさにクエストって感じですけど最後の一つなんか完全に雑用じゃないですか」
「しょうがねーよ、君みたいな初心者じゃレベル制限がある討伐と調査は到底無理だからなぁ」
「俺たちぐらいにならないとなぁ」
「「な~」」
な~。じゃないよ自慢しちゃって。だが、実際のところ討伐や調査は当然危険が付きまとうのは想像に易い。レベル制限を設けているのも低レベルの状態で無茶をして命を落とすようなことがあってはいけないというギルド側の配慮なのだろう。
それに昨日の受付嬢では治安を維持するのもギルドの役割だと言っていたので、些細な事でも依頼として受注しておけば俺のような低レベルの冒険者もお金を稼げるし、町の治安は守られるしで損することはほとんどない。まさにウィンウィンといったところだ。
「ま、とにかくこの町を出て旅をするにしてもなんにしてもここで依頼を受けて経験値を貯めるのが第一だよ。そうすれば下級スペルならポイントで使えるようになるし、最低限のことはできるようになるからな。」
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クエスト板を後にした俺たち続いて来たのはギルド内にある訓練場だ。この訓練場には2つのスペースがあり、的が設置されていて、一定間隔で線が引かれている射撃スペースと実践のために用意されただだっ広いスペースが壁で仕切られている。ちなみに俺たちは射撃スペースに来ている。まあ戦う相手がいるわけじゃないから当然だが。
「次は新人君お待ちかねのスペルとクラフトについてだ」
「お、待ってました!」
スペルとクラフトはやはり魔法的な奴だろう。異世界に来たからには、と自分が一番期待しているところでもある。
「威勢がいいねぇ!先輩ちょっと張り切っちゃうぞ」
射撃スペースは簡単にレーンが分けられているだけで仕切りがあるわけではない。それに今ここには俺たちに誰もいない。
ゆったりお互いの間を開けて的のそばまで来た。的を正面に構えているユーズ今回の説明を仕切るのようだ。
「さて、さっそくだが魔法スペルの説明は割愛して」
「割愛するのかよ」
「だって見たところなんとなくわかってる様子じゃない?」
「まあなんとなくは」
「なんとなくの部分がおおむね正解だからそれでいいかなって」
「「な~」」
「雑すぎ!」
完全にこの人たち説明飽きてるじゃん。息ぴったりに同調する双子に呆れる。そんなのでよく解説を提案してきたものだ。
「はぁ、スペルは上中下の3つの位に分かれている。下位はさっき言ったギルド所有の下位スペル大全を使えば簡単に使えるようになるんだが、中位以上になるとスペルを習得している人から直接教えてもらう必要がある。そして習得に期間がかかる。これだけ知っとけば上出来だろ。」
「で、俺たち冒険者にっとって重要なのはクラフトの方さ」
「へぇ、そのクラフトって何なんですか?」
「簡単に言っちゃえばスペルをより戦闘用にアレンジするって感じだな」
「戦闘用にアレンジ?」
「そ、クラフトはスペルに何らかのアクションを加えてより威力を増したり扱いやすくしたものだ。その例を今ここで、実演するってわけよ。オッケー?」
「(百聞は一見にしかずってことね)わかりました。」
「ではまずこれを見てください!」
そう言うとヒュースは右の手のひらを上にするとぼっと火がふき出した。
「これは下位スペルの『ファイア』。魔法適性があれば属性傾向関係なく誰もが使える超メジャースペルだ。」
「これをクラフトするわけだけ、ど!」
と燃え盛る炎ごとぐっと手を握るヒュース。
「え?熱くないんで――」
「あちちちちち!」
「え?だ、大丈夫なの?」
「――なーんて嘘!ははは驚いた?」
おいぃ!驚かせるなよ!冗談がきつすぎるって…。
「そんなげんなりすんなって、こうやって火を握って手にまとわりつかせるというアクションをした。そしてこれを、投げる!」
そう言うなり素早く腕を振り的に向かって炎を投げつけた。ホーミングするように吸われていき、炎は的に直撃した。
「『ファイアショット』ってとこかな。スペルにアクションを加えて戦闘用にアレンジするって意味が分かった?」
「なるほどなぁ。でもこれってスペルと何が違うんですか?当然戦闘用のスペルもあるわけでしょ?」
「これだから新人は」「これだから素人は」
「はいはい、そうですよ教えてください。」
「さっきも言ったけどスペルに使うCPは時間経過以外の回復手段がない。」
「ということはなるべく節約したい。洞窟探索とかっていうのは何が起こるかわからないからな」
「だから下位スペル相当のCP消費で中位スペルクラス、いや下手したら上位スペルクラスの威力が出せるようになるクラフトは冒険者必須要項ってわけ。」
「だから下位スペルが無条件で習得できるギルドカードシステムは画期的ってわけ。」
なるほどそこにつながるのか。冒険者はいつ起こるかわからないアクシデントに備えて少しでもエネルギーの消費を抑えたいが単純な下位スペルではどうしても力不足になるだろう。
それを解決するために編み出されたのがクラフトということか。そしてそれを補助するためにギルドカードシステムで習得にかかる時間を節約できるようしているのだろう。……やっぱり無駄にハイテクだなこのシステム。
「それと応用編だが、クラフトには大きく分けて二種類の発動方法があるんだ。」
「二種類?」
「今やったのは『ノーマルスタイル』の技だが、もう一つ『シュートスタイル』というというのがある。」
「シュートスタイル?」
「そ、足で蹴るんだよ。こんな風にね!」
そういうと先ほど同様手のひらから炎を出すとそのまま地面に落とした。地面につくかつかないかのところで火の塊を思いきり蹴りつける。
バァン!
勢いづいた炎はものすごい勢いでまっすぐ的に向かっていき、大きな音を出して的を破壊した。
「うわ、す、すごい。的がばらばらに…。壊しちゃってよかったんですか?」
「大丈夫大丈夫。自動的に補充してくれるから。」
そういう所も無駄にハイテクなんだなこのギルドは。それよりもこの『シュートスタイル』という方法。さっきと同じスペルを使っているのに全く威力が違う。ただ蹴っただけでここまで威力が変わるのにはどんなからくりがあるのだろうか。
「さっきの『ノーマルスタイル』の方はホーミングする分にもCPを使わなきゃならなかったが、この『シュートスタイル』はその分さえも節約してより威力、そして弾速を上げられるんだよ。まあその分コントロールが難しい高等テクニックだけどな。」
「逆にホーミングはそのままで発射に使う分のCPを節約する技もあったりするわけだけど、その場合は筋力の値が高くないといけないからもっと難しくなるぜ。」
魔法やクラフトだけでは解決できないCPという問題を極限まで節約する手段かと灯ったが、どうやらそれだけはないらしい。これら二つで放たれる技の原理が分かっていなければ使いこなせないのが『シュートスタイル』ということなのだろう。
とにかく今の自分には到底できない芸当なのはわかった。
「なるほど…。すごいですねこれ。まさに努力の結晶というか」
「ま、使ってる人はほとんどいないんだけどね」
「え?じゃあ、なんで説明したんですか!」
「そういうテクニックもありますよってことだよ。この世界にゃ魔力を増大させたりCP消費を抑えたりできるマジックアイテムの存在があるからな。」
「旅人となる冒険者の多くはそのマジックアイテムを洞窟なり遺跡なりで発見するのが主な目的だからな。値打ちが高いから売ってもよし、自身の強さを底上げするために使ってもよしで良いことしかないからな。」
「(俺のちょっとした感動を返してほしい…)そうなんですか。」
「もうそれこそもってるCPがあまりにも少ない人かモンスターを殲滅しながら探索するような戦闘狂冒険者じゃない限りこの方法を使う人はいないな。」
「だが知ってて損はないぜ。『ノーマルスタイル』込みでの自身の限界を引きあげられる手段だからな。」
確かにそういう受け取り方もできる。何より現状じゃ自分がどれくらい成長できるかわからないからなるべく多くの可能性を知っておいた方がいいだろう。そういうことを考えてこれを教えてくれたのか。どのぞのエルフとは大違いでこの二人結構優しいんだな。
俺は随分と適当になってきた説明によって下げつつあった彼らの評価を一段上げたところでユーズが最後の説明に移った。
「最後はギルドカードに戻ってアビリティの説明だ。」
「二種類に分けられてますよね。パッシブとアクティブか」
「パッシブは自動的に発動している能力、アクティブは自分で発動させることで効果を発揮する能力だな。」
「キョースケはパッシブに道具適性と高速習得のアビリティがあるな」
「これってどういう効果なんですか?なんとなくは想像できるけど」
「道具適性はアイテムを使った時に効果が上昇したり、使用条件が軽くなったりするものだな。」
「高速習得はスペルの習得期間が短くなる能力だよ。文字の部分をタッチしてみると詳細が表示されるんだぜこれ。」
「え?そうなの?めっちゃハイテクじゃんこれ!」
「そりゃギルドの技術の結晶だからなこれは。」
試しに文字をタッチすると『高速習得(特殊):上位スペルの習得にかかる期間を大幅に短縮。』という説明が表示された。単なるカードかと思っていたが意味の分からないほど高度な技術で作り出された超薄型の端末だったのか。というかここまで詳しく記載されていると自分の内面が丸裸にされているような気分になる。
「ちょっと恥ずかしいですねこれ。自分の秘密がばらされてる感じがして」
「ま、そういう人のために申請すれば他人にステータスが見られないようにすることもできるのさ」
「へぇ…。うん?アクティブの部分の『??????』っていうの。これはなんですか?」
「あー。これはまだ君がちゃんと扱えてないアビリティだね。こういうのは修行とかでその能力が開花されると表示されるようになるよ。」
「なるほど、そういうことか。(俺がまだ使いこなせないアビリティ…。ちょっとワクワクするな!)」
ひょうきんな(という評価が自分の中で確定した)双子によるすべての説明が終わるともう昼時ぐらいなのだろうか、気が付けば室内の方が騒がしくなっていた。
「よし、これで説明は全部終わり!」
「時間もちょうどいい感じだし、君もさっそくクエスト板で依頼を受けてきなよ。明日の生活のためにもね!」
「そうか、そうだった。」
確かに昨日の晩こそ支給された資金でやり過ごすことができたが、今日の夜以降のお金はもうない。
何を始めるにもやはり金か。少しばかり夢を見ていた自分に現実的な問題が降り注いでいて想像していた異世界生活との乖離にがっかりしているが仕方のないことだ。
「じゃあ俺行きます。ありがとうございました!」
「おう!充分に感謝してくれたまえ」
「充分感謝して行きたまえ!」
「「はっはっはっは!!」」
早くもこのお調子者の双子のペースにも慣れてきた。
二人からのチュートリアルを終えた俺は明日のため、そして冒険の資金のために働き口を探すのであった。
追記 内容を読み安くなるよう少し変更しました。(2018年7月6日)