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プリズン8  作者: 田仲 真尋
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見せしめの制裁

この日は誰もが朝からピリピリしていた。

その理由は、奴らがくるからだ。

午前中の間に赤が、午後からは黒。

今回の新人三人の中には女性はいない。

ヤマちゃんが、どういう行動に出るか予測がつかない状況のため、ブルーゾーンの住人たちは気が気でない様子であった。


赤の訪問が刻々と迫ってきていた。

アモンたちは人目につかない場所から固唾を飲んで見ていた。


「あれ?あいつ一人じゃん。」


カジは驚いた様に言った。


「他の連中に見捨てられたのかもしれな。」


タヌキは満足そうに腕を組んでいる。


「そうでやんすね。ざまあないですね。」


アモンが、ふと隣を見ると、

「ハ、ハッチ君!いつの間に――。」と、大声を出した。


「馬鹿!アモン静かに!」


カジの声の方が、より大きいことに一同はカジを睨んだ。


「あはは。わりぃ。」


「来たぞ!」


全員がもう一度身を隠しながら、ヤマちゃんへと視線を送りなおした。


今回のレッドドリンクの訪問は二人だけだった。

アモンたちの時と同じく、まずはブル。それから、あのプロレスラーの様な山の様な男。

そこへヤマちゃんと同期の二人も、ようやく姿を見せた。


「おい、お前ら。他の奴はどうした?」


ヤマちゃんは不機嫌そうに二人に訊いた。


「そ、それがどこにも見当たらなくて。」

「僕たち一生懸命探したんですよ。」


「チッ!」


ヤマちゃんのストレスは最高潮に達した様子である。

足を震わせて、苛立ちを顕にした。


「やあ。どうもどうも遅くなって申し訳ない。朝から腹の調子が悪くってさ――。」


バキッ!


その場にいた全て(隠れている青のツナギも含めて)の者が思わず「あっ!」と声を出した。


ヤマちゃんの不意討ちがブルの顔面をきれいに捉えた。

ブルは倒れこそしなかったが、口の中を切ったらしく吐いた唾には、はっきりと見てとれる程の真っ赤な血が混ざっていた。


「はっは!元気だね兄ちゃん。どうだいうちに来ないか?」


口についた値を袖で拭いながらブルは言った。


「俺は誰にも従わねえ!まずはてめえらを、ぶっ殺してやる!」


ヤマちゃんは、まるで狂犬の様であった。


「ったくしょうがない野郎だぜ。おい、ゴン太。相手してやれ。」


ブルは後ろに控えていた巨体の男に、そう言った。


「ゴ、ゴン太……すげえネーミングセンスだ!はっ!じゃあゴン太の本名は……分からねえ――もしや本名か!?だとしたらブルは関係ねえ。うぉおお、どっちなんだ。」


カジの苦しみは誰にも分からない。


「ういす!じゃあ、オイラが相手してやるな。こい!」


ゴン太の体格に一瞬、ヤマちゃんは怯んだが、すぐに切り替えて突っ込んだ。


「でかいだけで調子にのってんじゃ――。」


バギッ!


鈍い音が鳴り響いた。

ヤマちゃんは人の仕業とは思えない程に、吹っ飛んだ。


「うぅ……。」


もはや立つことさえ出来ないヤマちゃん。

すると、ブルが近寄り、

「かわいそうに。俺が起こしてやるよ。」と、言ってヤマちゃんを

強引に起こし、そして背中から羽交い締めにした。


「おーいゴン太。いいぜ。」


「あいよ。」


その後の二人の行動は、常軌を異っしていた。

動けなくなったヤマちゃんにゴン太は容赦なく殴りかかった。

何度も、何度もだ。

それから、しばらくそのリンチが続いた後、ブルはヤマちゃんを解き放った。

ヤマちゃんは何の力も入っていない糸の切れた操り人形のように崩れ落ちた。

そして、それは誰の目から見ても明らかに――死んでいた。


「ああ貴重な人材をうしなっちまった。またリーダーに説教されちまうかもな。」


「いいや、逆だよブル。きっと、あの人は褒めてくれるって。」


「そうかな。それじゃあ早いとこ帰るか。」


ブルとゴン太は遊び終わった子供のように、その場を後にしようとした。


「そうそう、忘れてた。おい、お前ら明日は必ず赤を選択しろよ。さまなきゃ、そいつみたいになっちまうぞ。」


ブルは残った新人二人に、そう告げて去って行った。


――翌日、結局二人は黒を選んだ。

それは当然といえば当然なのかもしれない。

アモンは昨日のことが頭から離れなかった。

このプリズンエイトのことを、まだ何も知らないのかもしれない。

少し、ここにも慣れてきた、という勘違いにアモンは、ただ怯えることしかできなかった。


秋風がアモンの心とは裏腹に、爽やかに吹き抜けていった。


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