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プリズン8  作者: 田仲 真尋
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カジの行動

アモンは一人眠れずにいた。

テントの中にはアモン一人だけである。

タヌキは、サイダー先生の所で今日は泊まり込むと言って出て行った。

カジは……どうしているのか分からない。

たまにフラフラと帰ってきては、すぐに眠った。

そして起きたらカジの姿はいつも、そこに無かった。

アモンは、ここにきてようやく自分の気持ちに気づいた。

――孤独だ、と。

そんな思いをしていたアモンの元へ突然、彼が現れた――カジだ。


「あれ、アモンまだ起きてたのか。タヌキさんはいないのか。」


「カ、カジ。どうしたんだ急に?」


「どうしたもこうしたも、帰って来ただけだぜ。あっ!もしかしてお前、寂しかったんじゃねーの。」


「な、なに言ってんだよ。そんな訳ないだろ。」


そんなことを口にはしてみても正直嬉しかった。

アモンの中では既にカジを友だちとして見ていたからだ。

それを自分が全く知らないハッチとばかり、つるんでいたのに焦りを感じていた。

そのことを口が裂けても言えるはずがなかった。


「なあ、アモン。実は俺の兄貴が、ここにいるかも――いや居るんだ。」


アモンは絶句する他なかった。

カジは座り込んで続けた。


「ここに入ってからずっと思ってた。兄貴がいるんじゃないかって。でも探す宛もないし、むしろ居ない確率のほうが高いだろって考えていたんだ。でも、ある日ハッチと知り合って考えは変わった。あいつは情報屋みたいなことやってるから情報通でな、兄貴の話ししたら一緒に探してくれたんだ。」


アモンは「じゃあ、どうして俺も誘ってくれなかったの」とは、言えなかった。


「それでようやく手がかりを見つけた。どうやら兄貴は黒に居るらしい。」


黒!?

アモンは激しく動揺した。


「本当に?」


「ああ、ハッチの話では間違いないそうだ。だから俺は明日、黒狼會へ行ってみようと思うんだ。」


「どうやって!?普通に行っても殺されてしまうぞ。」


アモンは以前ジョーが言っていたことを思い出していた。

青が赤や黒の地区を訪ねるのは、もはや自殺行為だ。


「それくらい分かってるよ。ハッチがさ黒のツナギを用意してくれるんだ。」


またハッチか。

アモンは正直なところ、その名にうんざりしていた。


「何とか兄貴を探せるように頑張ってみるぜ。」


本来なら俺も行こう、と言わなければならない場面であるだろう。

だが、アモンにはその気持ちは皆無であった。


「お兄さんって、どうして捕まっちゃったの?」


「……さあ。俺も詳しくは知らないんだけどさ、ハハハ。」


どうやらカジは自身の罪や家族の罪を言いたくないらしい。

アモンも最初はよく、色々な人に訊ねていたが最近では少々煩わしく感じていた。

それで初対面の人には絶対に、その質問はしないと決めていた。


明け方ゴソゴソとテントを出て行ったカジ。

アモンは、一言だけ、

「気をつけてな。」と、声をかけた。

カジはアモンが起きていることに驚いた様子で、

「悪い。起こしちまったな。じゃあ行ってくる。」と、まだ早朝の静まり返ったブルーゾーンへと消えて行ったのであった。


その夜、サイダー先生の元から帰ってきたタヌキに、カジの事を話した。


「そうか、そんなことが。まあカジ君がそう決めたのなら仕方ないことだ。我々がとやかく言えないな。」


アモンは何だかモヤモヤとした気持ちを胸にかかえていた。

急に胃酸が逆流してくるような、気持ち悪さだ。


「俺、病気かな。サイダー先生とこで診てもらおうかな。」


そう言ってタヌキを見ると、すでにガーガーと鼾を立てて眠っていた。

アモンは、ハァーと深くため息を吐いて今日も眠りにつくのであった。


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