月末
アモンは瓦礫の山の頂きに立っていた。
辺りを警戒するのは勿論、怠ってはいない。
望遠鏡を覗き込みながら、
「やっぱりそうだ。月末か。」と、呟いた。
ちょうど山の下をジョーが歩いているのが見え、アモンはダッシュで山を下りた。
「ジョーさん!」
山の下りで加速のついたアモンは、凄い勢いでジョーの前に飛び出した。
「うわっ!――アモン君か、びっくりさせないでくれよ。」
「す、すみません。ところで今日は月末ですよ。新人が入ってくる日じゃないですか?」
「そうだね。もうしばらくしたらセットが連れてくるんじゃないか。」
アモンは若干の期待を寄せていたのかもしれない。
最近はタヌキもカジも忙しそうで、アモンは一人、暇な時を過ごしている。
タヌキは毎日帰ってくるが、疲れた様子ですぐに眠ってしまう。
カジにいたっては、帰って来ない日も増えていた。
「あのジョーさん。俺ずっと思っていたんですけど、赤とか黒って平気でここ、青にやって来るじゃないですか。ってことは、俺が赤や黒の地区に見学しに行っても別に問題はないんですか?」
アモンは退屈していた。
冒険心、好奇心から赤や黒が、どんな所で生活しているのか気になって仕方なかった。
「行くのは当然、問題ないさ。」
「本当ですか!」
「行くのは自由だ。ただ――瞬殺されるよ。」
「や、やめておきます。」
二人が、そんな会話をしていた時だった。
「おーい!」
その声にアモンとジョーは身構えた。
そして声の主を見て安堵する。
――セットだ。
しかしセットは一人だった。
新人を連れていない。
「やあセット。新人たちはどうしたんだい?」
ジョーの問いかけにセットは頭を掻きながら、
「それが今回は誰も来なかったんだよ。」と、落胆の表情を見せた。
「珍しいな。だがいいじゃないか。こんな所に送られる人間が一人でも減れば。」と、ジョーは言った。
「まあ、そうだけど。俺としては仕事がへっちまう訳だし、なんだかな。おっ、そういえば今日は、あの生意気そうな金髪とタヌキみたいなおっさんは、どうしたアモン君。」
アモンは二人の現状をセットに話した。
「そうか構ってもらえないのか?かわいそうに。」
「そんなんじゃない。」と反論したかったが、こう色んな人に言われていると、実際そうなのかもしれないと、アモンは諦めた。
「それじゃあ俺たちの所にでも遊びに来るか?」
「えっ?それってどういう――。」
「何もないけどな。俺たち紫が暮らしている地区さ。目玉は何と言ってもピンク――桜回廊の地区の目と鼻の先に在るってことだ。あの姉ちゃんたちもよく来るんだぜ。どうするアモン君、ヒャッハー!」
「行きます。」
アモンは即答した。
そして何故かジョーも手を挙げていた。
こうして紫の地区へ行くこととなった三人は足取り軽く秋の柔らかな日差しの中を、まるでピクニック気分で歩いていくのであった。




