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異世界探偵

筆、弘法を選ばず

作者: にゃきもん

 絶体絶命。絶体に絶命だ、どうあがいても死ぬのだろう。


 ワタシは先程、甚兵衛を着て町を歩いている書道家と肩がぶつかってしまった。その時に書道家に引くほどキレられ、おでこに文字を書かれた。


 その文字こそが絶体絶命だ。一流の書道家が魔法筆で書いた文字は現実のものとなるらしい。彼はまだ駆け出しの書道家だと言っていたが、高級な魔法筆を自慢気に話していた。


 高級な魔法筆が書道家として足りないスキルを補い、書かれた文字を現実のものにするらしい。お金持ちが優位なのはどの世界も同じようだ。


 人は何故、窮地に立たされた時などに絶体絶命の大ピンチなどと言うのだろう。絶体絶命は絶体絶命以外の何物でもない。ワタシのように諦めてほしいものだ。


 こんな形で最後がやってくるとは考えもしなかったが、生きてる限りはいつか死ぬ。

 自然の摂理だと割り切って今日もワタシは働く。


 今日の依頼は猫探しだ。やはり探偵といったら猫探しに限る、依頼された猫が化け猫でないことを祈る。


 先日購入した魔法鈴のおかげで猫探しが随分と楽になった。路地裏のフリーマーケットで買った掘り出し物だ。


 魔法鈴などの道具や魔法で猫を探せるのに何故ワタシに依頼するのだろうと疑問に思う時もあるが、ワタシの仕事が一つなくなってしまうので気にしないことにしている。


 魔法鈴を鳴らし、鈴の音に集まって来る猫達の中に依頼された猫が居ないか顔を見る。居なければ場所を変え鈴を鳴らし猫を集める。


 四回目の鈴を鳴らして集まってきた猫の中に依頼の猫が居た。ペット用のキャリーバッグに入れ、依頼者の元へと向かった。


 数十分後、本来なら依頼者の元に辿り着いている時間なのだがワタシはとあるカフェに居た。


 猫が喉が渇いたと言うのでカフェに入ったのだ。猫サイズの男性がと言った方が正しい。猫に変身する魔法を使っていたようだ。


 男性は依頼者の旦那で、浮気を疑われて言い争いになり猫に変身して逃げ出したらしい。


 浮気でない事を熱弁しているが、今はそんな事に興味を持てない。コーヒーをすすり飲みながら男性を一瞥する。全裸だ。全裸にしかみえない。


 何故全裸なのに捕まらないのだろうか? いくら異世界だといっても全裸はまずいだろう。地毛で体が覆われている獣人の類ならまだしも純然たる人間だ。


 もしかして全裸に見えるだけで全裸でないのかもしれない。異世界の人間ーーこの場合はワタシーーには見えない服でも着てるのだろうか。だったら納得だ。違ったらどうしよう。


 カフェを出て全裸の成人男性と共に依頼者の住む家へ向かった。


 他の人にはきちんと猫に見えているらしく、途中でカワイイ猫ちゃんですね〜〜と話しかけられた。いいえ、全裸の男性ですとは答えられる訳もないので適当に相づちした。


 依頼者と男性の自宅へ着くと、男性は服を着た男性に戻った。先程のカフェで他の人は猫に見えていたらしい。どうやら魔法鈴が猫化の魔法を打ち消していたようだ。


 全裸問題が解決した所でお次は浮気かどうかの修羅場かと覚悟していたが、円満に解決した。浮気ではなく奥さんへの誕生日プレゼントを職場の女性に頼み一緒に選んでいたのだ。


 サプライズで用意していたので浮気を疑われた時に言う訳にもいかず、つい猫に変身して逃げ出してしまったとの事だ。


 依頼だけでなく、浮気問題も無事解決したとして上乗せされた代金を受け取る。浮気問題についてはワタシは全裸問題を気にしていて全然話を聞いていなかったのだが、お礼の気持ちとして受け取ってくれと言うので受け取った。


 今日の依頼は無事にやり遂げたことだし、解決した祝いに酒場へ繰り出すことにした。


 ワタシは絶体絶命なのだ、宵越しの銭をもつ意味などない。

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