VS山賊 1
「ヒャッハー!」
「殺せ、殺せ、殺せーっ!」
村は既に襲われていた。
モヒカンに皮の肩パッドをし、顔に隈取りを入れた、北斗の拳に出てきそうな筋骨隆々な連中が、バイクの代わりに馬に乗り、火炎放射の代わりに火矢と松明を装備して、狭い村の中を縦横無尽に暴れまくっていたのだ。
山賊である。
「うひひひひひーっ、作物は焼却だーっ!」
腕にドラゴンのタトゥーを入れた賊の一人が、収穫したばかりの農作物に火を付けて回る。愉悦に酔って、喜びに涎を垂らすその表情はまさに狂気のそれだ。
「や、やめてくだされー!」
長老っぽい村人が、賊の足にすがりついで懇願する。
しかし……
「あ゛ぁ゛ーーーーーーーッ!? 触るんじゃねぇ、ジジィーーーーッ! 俺のアルマジローニのズボンにシワが寄るだろうがよォーーーーーーーーッ!」
賊は老人を容赦なく蹴り飛ばした。
老人はもんどり打って地面に叩きつけられる。
「ぐう……うっ!」
「──おじいさまっ!」
閉ざされていた家々の戸の一つが勢いよく開いて、中から若い娘が飛び出してきた。慌てて倒れた老人の所に駆け寄っていく。化粧もしておらず、垢抜けない服装をした十四、十五の村娘だったが、身体の発育は良く、よく日焼けした肌は、太陽の匂いに似た健康的な色気を醸し出していた。
「……い、いかん、家に入っておるのだ、シャロン」
「でも、おじいさま……!」
「ほほう……なにもない、しなびた村だと思ったが、なかなかどうしてマブい女がいるじゃねぇか」
賊のリーダーらしい、一際大きな図体の、熊の毛皮を纏った男が、舌嘗めずして娘を見た。娘は、老人を抱き起こすと……恐れに眉を震わせながらも、熊皮の男を睨んで言った。
「あなたがたの言うとおり、たいして収穫もないしなびた村です! あなたがたのほしがるようなものなんてなにもありません……! 出て行ってください!」
シャロンという娘の、くすんでいるが手入れの行き届いた金髪と、水色の眼、そして粗末な衣服の下の、膨らんだ胸、しまった腰つき、足……熊皮の男はなめるようにそれを見て、嬉しそうに、いやらしく髭面をゆがめていく。
「ふふふ、なかなか気の強い娘だ。ますます気に入った。……だが、ワシらのような男がほしがるものがなにもないとは、自分というものの価値に疎いようだな。ふふふ、これは教育が必要だな」
「な、なにをするつもりですか……」
「ふふふ。いつまでそんな強気な口を聞けるかな。ふふふ、ふふふふふふ」
熊皮の男は馬に乗ったまま……なんという手綱遣いだろう……まるでアルプス越えのナポレオンの絵のようにぴょんぴょん跳ねながら、娘と老人の周りを回る。他の賊それに倣って、うひひひ、げははははは、とこれから起こる惨劇とそのお零れに期待しながら、同じようにびょんびょんとその周りを回っていた。
傍目には滑稽に見える光景だったが、実際、やられている側にはプレッシャーと恐怖感がマックスのおそろしい囲い込みだった。娘……シャロンも、なんだかわからない、これから起こることへの恐怖感から、自然と震える声で許しを請うていた。
「い、いや……や、やめて……!」
ずどむ!
土塊を打ち砕く轟音が、その場の緊迫していた空気を打ち払った。