標的の村へ。いざ襲撃の時
「お、これええやんけ」
ぼくは道端で良い感じに折れた巨木を見つけ、幹を落としたり蹴り折って適当に加工して、棍棒にした。剣先に向かうほどに大きくなる、極太タイプ棍棒の一丁あがりだ。それをぶんぶんと振り回しながら、道沿いに歩いて行く。
空は青く、空気は澄んでいる。
どこかで小鳥が囀っているのが聞こえる。
なんてのどかで平和な素晴らしい場所だろう。
この完璧すぎるカントリーロードにある集落を、これから地獄に叩き落とす事が出来ると思うと、いまから胸の高鳴りがドキドキ止まらない。
「あっ!」
ぼくの視力2.5の眼が、トロール化によって6くらいに強化され、10キロくらい先の山際に小集落を捉えた。人口50人ほどか。水車や、食料庫、そして、干された洗濯物……イキのいい村娘とかもいそうな感じだ。
「まずいですよ、これは……」
ぼくは興奮を抑えきれず、やや小走りになりながら、そこに向かった。
向かいながらも、どんな風に村の平穏をブチ壊すか演出を考える。まず手頃な壁とかぶち壊した方がいいかもしんない。放火もセットでやるべきか。奇声とかも上げた方がいいだろう。金切り声か? いや、金切り声はなんか華奢なオタクっぽくて弱そうに見えるかも知れない。せっかくトロールになったんだから、この巨躯に合わせた雄叫びが必要だろう。獣じみた咆哮がいいかもしれない。出来れば最初に女性に発見されて、そいつが悲鳴をあげてくれたらモアベターなんだけど。ちょっと集落の少し手前で雄叫びの練習した方がいいかもしれない。ドラミングとかもした方がビビるだろうか。
などと、楽しいことを考えながら移動していると、トロールの機動性もあってか、あっという間に集落の手前まで来てしまった。
さあて、どうしてくれようか。
とりあえず、立ち止まって思案に暮れていると……
ふと、おかしなことに気がついた。
村からは、既に火の手と悲鳴が上がっていた。