聖女の苦手なもの
「ナイスミドル、こういう場合は男性がエスコートするべきよね。」
私はひさしぶりの王都の人の多さに戸惑ってしまいました。
「ええ、その通りですね。かしこまりました。」
ナイスミドルは心得たもので手を出して私をエスコートしてくれた。
ちゃんと手の震えは止めておいたので大丈夫。
だからナイスミドルにはばれてないはず。
ええ人がちょっと怖いですけど何か?
ええひきこもってるのはそのせいですけど何か?
【人が怖いのなら人に会わなければいいじゃない by聖女】
ええ、名言です。
とっても名言です。
え?私の二つ名が聖女じゃなかったっかって?
そのとおりです。まあ気にしないでください。
ただの現実逃避ですから。
六英雄なのに人が怖いってのを笑いますか?
別にいいじゃないですか。六英雄が人を怖がったって。
ナイスミドルになれるのにも結構時間がかかりました。
商会に無理言ってオークションについて、
私との打ち合わせをナイスミドルだけにしてもらったかいがあるよ。
本来はこういう打ち合わせの時は証人と交渉人とのふたり組なんだけど、
私の心労がすごくなるために一人だけにしてもらった。
しかも毎回ナイスミドルにしてもらってます。
普通は手の空いている人を派遣するのですが、ナイスミドルの仕事の方を調整してもらって、私との打ち合わせに合わせてもらってるんだ。
まあ私が商会に落としてるお金は結構な額になるのでこれぐらいのわがままはいいでしょう。
「御嬢さん、もう少しで商会ですよ。」
少しの間黙っていたのでナイスミドルが間を持たすために話しかけてきた。
「ええ、わかってますよ。」
その後は何事もなく商会に歩いていきました。