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消えた白衣の天使

5人の関係には変化はなく、相変わらず皆で診療所で暮らしていた。


サヤは4人の初恋の相手だ。

皆、手を出すにも出せず四苦八苦していた。





カミルは相変わらず、医師をしていた。


ブルーノは村の青年団に入った。

村の青年団は、防犯目的の自衛団も兼ねており、ブルーノはそのリーダーになった。


教育が不十分ではない村に、教育を取り入れようとエアハルトは、学校を作り、教師になる。


動けるようになったアルフォンスは、木こりと共に森に出かけては薬草を取ってきて、薬の研究をしながら、薬剤師として村に貢献している。




サヤも相変わらず、看護師をしていた。

そんなサヤには後輩が出来た。

看護師志望の村の、若い素朴な女の子だ。

彼女には時には厳しく、時には優しく、看護師として指導をしていた。










そんな中、サヤは階段から落ちた。


頭を強く打ち、彼女は1日経っても目覚めることはなく、4人はもちろん、村中が心配した。





今だに寝ているだろう、サヤの様子を見に、一番早起きのブルーノはサヤの部屋に向かう。


サヤの部屋の扉をノックして開けると、もぬけの殻だった。


「サヤがいない!」


ブルーノは診療所に住んでいる男共を叩き起こす。

ブルーノは青年団に声をかけて、サヤを知らないか聞くが誰も情報を持ってない。


エアハルトは学校に通う子供やその親に尋ねたが、誰も知るものはいない。


カミルは村を練り歩き、くまなく探すが、見当たらない。


アルフォンスは木こりとともに歩き慣れた森を探すが、サヤを見つけることができなかった。



4人はサヤの部屋に集合する。


サヤが戻ってないか、と皆思ったからだ。


しかし、いない。


「誘拐か?」エアハルト。


「サヤは流れ者だから、もしかしたら元の世界に?」アルフォンス。


「魔女の仕業かもしれない」ブルーノ。


「おい、今朝は気がつかなかったが、紙が床に落ちている」カミル。


風に飛ばされて床に落ちたのだろうか。

その紙をカミルは拾う。


紙に書かれていた文字を見て、カミルは目を見開く。


他の3人も、カミルの手元にある紙を覗き込む。



“ ご心配をかけてしまい申し訳ありません。


階段から落ちましたが、なんの後遺症もないので大丈夫です。


階段から落ちた拍子に、私はある忘れていた記憶を思い出しました。


それで、この、診療所にはいてはいけない。


そう思いました。

あなた達のそばにいてはいけないような人間なのです。


今の診療所は、私が指導した後輩の看護師もいるため、私がいなくても大丈夫かと思います。


私のことは、心配しなくて大丈夫です。

本当に。

本当に。


記憶を思い出した事で、私は力を取り戻して、強くなりました。

今の私なら、どんな所でも一人でも生きていけるでしょう。


勝手なことをしているのはわかっています。


けれど、やっぱり、私は、あなた達のそばにはいられません。


ごめんなさい。

優しくて幸せな思い出をありがとう。

さようなら。


サヤ ”






「ど、どういうことですかね?」混乱するアルフォンス。


「俺たちのそばにいたくないってことだろ」苦々しい表情のエアハルト。


「本人からちゃんと聞かないとわからないね」困り顔のブルーノ。


「勝手にしろ、と言いたい所だが、サヤは不可欠な存在だ。見つけ出すぞ」不敵な笑みを浮かべるカミル。


笑うことが少ないカミルに一同、驚く。が、みんな、目を爛々とさせて、力強く頷いた。



















「サヤをどうやって探しましょう」アルフォンス。


「サヤの足ではそう遠くに行っていないはずだ」エアハルト。


「強くなったってサヤの手紙には書いてあった。それが魔力だったら、魔法でどこにでもいける」ブルーノ。


「サヤの身につけたものを使って探知の魔法で探してみた。しかし、探知が出来ないように魔法で阻止をされている」カミル。


「強くなったということは、魔力の事か?あるいは、魔法使いのそばにいるか」エアハルト。


「魔法を無断で使ったら魔法使い連盟の皆さんにそれはキツイお仕置きをされると聞いたことがあります。王都にある魔法使い連盟に聞いてみるのはどうです?」アルフォンス。


「それはいいな。魔法使い連盟は、連盟に登録をしていない魔法使いの魔力や魔法を探知することが出来る物を持っているのだと聞いた。それは探知を阻止するのは不可能らしい」カミル。


「だが、サヤは記憶を思い出したって手紙に書いていた。つまり、過去に魔法使い連盟に登録をしていた可能性もあるんじゃないか?」ブルーノ。


「その可能性もあるが、まずは魔法使い連盟に直接行って聞いてみたほうがいいと思う。サヤのいる場所の手がかりになるかもしれないだろ?」エアハルト。


「しかし、探しに行く場合、僕たちの仕事はどうしますか?皆、村には必要不可欠ですよね」アルフォンス。


「お前らは待ってろ。俺は魔法を使って自分をもう一人作ればいいからな。俺がサヤを探しに行く」カミル。


「はぁ?抜け駆けするつもりだろ?俺はしばらく休校すればいいだけだ。俺が行く!」エアハルト。


「私こそ行くべきだ。この村は平和だから、私がいなくても大丈夫だろう。代理のリーダーをたてておけば、なんとかなる。私が行こう」ブルーノ。


「薬剤師の僕だって、薬を作り置きしてカミルが患者に渡せば、なんとかなりますよ。僕だって行きたいです。しかし、このままじゃ拉致があかない。カミルの魔法で、もう一人の僕たちを作るのは無理なんですか?」アルフォンス。


しぶい顔で黙るカミル。


「国随一の魔法使いが、できないのかよ」ボソッと吐き捨てるエアハルト。


カミルの眉が不機嫌そうにあがる。


「カミル、できるのかい?」ブルーノ。


カミルは憮然としていて答えない。


「できるんですね。じゃあ、それで。全員分作ってもらって、全員サヤを探しに行きましょう。これなら抜け駆けも心配ありません」アルフォンス。


皆、賛同した。

カミルはブスッとしていた。












そして4人はカミルの作った影武者(といっても本人そのままの仕上がりだ)を村に置いて、サヤを探す旅へと出かけた。


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