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犬の彼

ブルーノの朝は早い。

彼は起きたら、まず自分の容姿を整える。


まじまじと鏡をみて、よし、今日も俺はイケてるな、とチェックするのだ。

そして、朝から走りこみをする。


走った後は庭で筋トレだ。

そうしていると、洗濯物を干しに、サヤが来る。こうやって庭で筋トレをしているとサヤが褒めてくれるのだ。


犬だった時のように撫でてくれる。

自分がサヤを独占できる至福の時だ。


そして、洗濯物をサヤと一緒に干す時も好きな時間だ。

身長の高いブルーノがサヤを見下ろすと、サヤの服の隙間から谷間がみえるのだ。

ブルーノだって男だ。

見てしまうのはしょうがない。

目の保養だ。




サヤは朝食を準備しにいく。

その間、ブルーノはまた筋トレをする。


サヤの悲鳴が聞こえた。

慌てて、サヤの元へ向かうブルーノ。


カミルのベッドにいるサヤを救出する。


クソッ

このムッツリ変態仮面が。

サヤは私のなんだ




ブルーノは、サヤがいない隙にさりげなく嫌味を言うが、全くカミルは聞いていないようだ。しかし、言わないと気が済まない。


サヤがアルフォンスとエアハルトを食卓に連れてくる。



このダメダメ王子と甘ったれ坊やも、わかっていない。サヤは私のなんだ。


そう思いながら、サヤの料理を褒めながら、味わうブルーノ。









「ブルーノ、散歩に行きましょう」


サヤにデートに誘われる。

これもブルーノの特権だった。


のどかな村の道を歩くサヤとブルーノ。


サヤを上から見下ろすのもなかなか良いが、下から見上げるのも色々見えて良かったな。



ブルーノはまだ犬だった頃、サヤと初めて会った時の事を思い出す。












ブルーノは可愛くない犬である以上、平和で暮らせるような、そんなところはないのだろうか。

と、絶望していた。


ただ、森を散策して、時折見つけた木の実などを食べていた。


可愛かったはずの女達が、醜く顔を歪めて、ブルーノを拒否する。

あれを思い出しては、落ち込み、女性不信になりそうだった。

しかし、自業自得だ。

生き延びるすべを探さないといけない。



そう考えていたところ、


血の匂いが風にのってブルーノの鼻に届く。


飢えていたブルーノは肉のおこぼれを貰えるだろうか、生肉は食べれるだろうか、といやしいことを考えて、その血の出処に行った。


なんと!女性が野犬に襲われている!

守らなければ!

と思ったブルーノは野犬を追い払った。


野犬よりブルーノは大きくて、強かった。


女性が息をしているのに、ほっとしてブルーノはまた思った。

そのままにしたら確実に死ぬ。

守らなければ。


女性は小柄だったため、ブルーノの背中にのせることが出来た。


そして、カミルの診療所に着いたのである。


カミルはブルーノを追い出すことはしなかったが、女性のいる処置室には入れてくれなかった。



女性は回復してるらしい。

一日経つと処置室から、彼女がヨロヨロと出てきた。

彼女はブルーノを見てこう言った。


「大きい・・・トサケンみたい」


そして、ブルーノの頭を撫でて微笑んだ。


「あなたが命の恩人みたいね、ありがとう」


ブルーノは初めて受け入れてもらえたことに泣いた。


犬だから、クゥゥンという情けない鳴き声に変わったが。




それからというもの、診療所で働くことになった彼女のそばに極力いるようにした。


守らなければ。


初めて持った使命感に燃えて。


今まで騎士として仕事をしていたのに関わらず、初めてだった。



サヤが何処かに行くたび、おとなしくついて行った。


そして、最初は大きくて可愛くない犬を遠巻きに見ていた村人も、ブルーノを可愛がるようになっていった。


村人が重い荷物を運んでいたら、引っ張って手伝う。

子持ちの人が忙しそうな時は、子供を背中に乗せて、遊んでやる。

畑を荒らしにくる獣を追い払う。


そうしたら、いつしか、村人に、笑顔でありがとうというようになってきた。


守らなければ。


とまた使命感に燃えた。


そして、そのきっかけとなったサヤにはいつしか愛しいという気持ちが芽生えるようになる。



サヤや村人のサポートをしながら、暮らすのは中々平和な毎日だった。


しかし、犬では何もできないな、と思っている時。


人間に戻った。


そして、ライバルが3人増えた。



サヤの作った料理にありつく3人をみて、思う。



いつか君たちのサヤをここから連れ出すよ。

ごめんね。









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