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イワクツキ共

目を覚ましたサヤは、今朝のあれは夢ではなかったんだと実感する。



サラサラとした黒髪、クールそうな切れ長の黒い瞳をもつ端正な顔立ちの男性は座って本を読んでいる。


堅そうな茶髪に、優しげな茶色の瞳をもつ男らしい顔立ちの男性は立って、剣を磨いている。


癖のある赤毛で、翠の瞳をキラキラさせた、どことなく幼さが残る男性はベッドのそばにサヤの手を握って寄り添っている。


フワフワとした金髪で、儚げな青い瞳をもつ大人しそうな、しかし彫刻であるような顔立ちをした男性がサヤの隣のベッドで横になっていてサヤを見ている。



「サヤ!」

「サヤ・・・」


金髪と赤毛がそういうと、茶髪と黒髪がパッと顔を上げてサヤを見た。


黒髪が立ち上がり、サヤに近づいて、脈を測ったり、おでこに手を当てる。


「サヤ、調子はどうだ?」


「先生、ですよね?大丈夫です。・・・けど何がなんだか・・・」


4人の説明が始まった。


※ ※ ※


先生こと黒髪のカミルの事情。



カミルは国随一の魔法使いだった。

冷酷で人を寄せ付けない。協調性?そんなのがなくとも一人でやっていける。

そんな性格で反感を買うことが多かった。

しかし天才的なその魔力で勝てる者はおらず、誰も口出しをしなかった。


あの、破天荒な魔女が王宮に現れるまでは。


「あんた、本当につまらない男ね。あなたから魔力を取ったら、本当に一人でやっていけるのかしら?」


そう言って、魔女はカミルに魔力を封じる仮面をつけた。カミルはただの一般人になってしまった。魔力がない、使い物にならない存在になった。仮面のことを調べても取り方は誰も知らない、記載されてなかった。


どこにもカミルの居場所がなかった。

魔力以外に、誇れる知識で医者を目指した。

しかし、今まで不評だったカミルは医師になっても誰も訪れることはなかった。


そして、カミルのことを知らないような場所に行き、医師として生活しようとこの村に来たのだという。





※ ※ ※



ポチこと茶髪のブルーノの事情。



騎士をやっていたブルーノは男らしいが甘いルックスでそれはそれは女性にもてた。

女をとっかえひっかえして遊んでは捨て、遊んでは捨て。高貴なお姫様も、おとなしいお嬢さんも、淫らな娼婦も。ブルーノの手にかかればイチコロだった。そして、相手がすがりついても容赦なく捨てた。


ある日、色っぽい女性が道を歩いていて声をかけてみた。


「あんた、本当につまらない男ね。そのご自慢なルックス。それがなくなったらどうなるのかしら?」


そう言った色っぽい女性(魔女)はブルーノに、可愛らしくない犬に変身させた。

ブルーノはどうしたらいいのか分からずに、今までの女に助けを求めた。しかし、見た目は犬。さらに可愛らしくない犬。女たちは嫌悪感を露わにしてブルーノを追い出した。王都は可愛らしい犬をペットにはするが、ブルーノのような犬はペットにはしない風習があった。ブルーノは犬を処分する保健所に追いかけまわされる。そして殺害されるのを恐れて王都から出ることを決意。

どこの町や村でも嫌がられたブルーノは森にきたところに血だらけのサヤを発見する。


助ける使命感に燃えて、この村の診療所まで運んで、居つくことになったという。



※ ※ ※


ナナシ君こと金髪のアルフォンスの事情。


アルフォンスは国の第3王子であった。とてもネガティブな性格で、人間不信気味であった。アルフォンスは国王の気まぐれで娼婦と遊んだために出来た子供である。国王はもちろん、母は有り余るお金をちらつかせて男遊びに夢中であり、愛情を知らずに育った。兄弟もしかり、売女の子供と罵られ、乳母や仕える侍女たちも冷ややかだった。


ある日、政略結婚の為に婿養子に行けと言われた。その時に護衛についたのが魔女であった。静かな馬車の中で、アルフォンスは魔女に今までの自分の生い立ちなどを話して、自分なんて存在する価値なんてない。とこぼした。


「あなた、本当につまらない男ね。そんなにこの世が嫌なら自殺でもすればいいのに、出来ない臆病者。じゃあ、ずっと現実逃避すればいいんじゃないかしら?」


そう言った魔女によってアルフォンスは意識はあるものの、動けない目が覚めない眠り王子となった。瞼は閉じているのに周りのことが見える。不思議な状況になっていた。

そして、運悪く、アルフォンスが乗っていた馬車は野盗に襲われた。


魔女は笑いながら一人去った。


野盗はアルフォンスが死んでいると判断して森に捨てた。そしてこの診療所にきたのだという。



※ ※ ※



サミャこと赤毛のエアハルトの事情。


エアハルトはそこそこ名のしれた貴族であった。長男であるエアハルトが跡をつぐべきであるが、それが出来なかった。

大の女嫌い、子供嫌いなのだ。

幼少期の頃、継母に虐待をされていた。継母の連れ子の幼い妹や弟もそれに加担していた。それ以来大きくなり、虐待されなくなっても、どうにも女や子供が嫌いだ。

避けたり、罵詈雑言を浴びせて、極力近づかせないようにしていた。


そんな息子に父は跡継ぎには無理だと諦めて、姉に婿養子をとらせた。

しかし、ずっと一人というのも将来が心配だという父は、息子に無理やりお見合いをさせた。


王宮の魔法使いである女性とお見合いすることになったエアハルト。会ったら、罵詈雑言、そして自分がいかに女性と子供が嫌いかを話した。


「あなた、本当につまらない男ね。そんなに嫌な女性に庇護される子どもになったらどうなるのかしら?」


言って笑った女性(魔女)はエアハルトを子どもにした。驚いたエアハルト。魔女にかわいい、かわいい、と追いかけまわされて屋敷の侍女にも追いかけまわされる。なんとか逃げきれたエアハルトはあやしい裏路地にいた。


そこにいる奴隷売りに捕まり、異国に売り渡されるために馬車で移動していた。移動中に奴隷売りが仮眠をとっている隙にエアハルトは逃げだした。


小さい歩幅でヨチヨチよたよた隠れながら歩く。木の根元で仮眠しては歩き、を繰り返し時々木の実や川で水を飲んで彷徨った。


終わりが見えないそれに、エアハルトは堪えきれずに泣いた。嫌いな子どもの様に。


そうしたら、サヤにあやされていたのだという。

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