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十字架を架ける 【蒼碧の鎖-2-】  作者: 沖津 奏
第2章 影を知った
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07 プリンスの悲劇

 シアーズの目が見開かれた。

「どういうことだ……」

 ローランド卿が目を伏せる。

「シアーズ伯爵は、何よりも血統を重んじた。対してローランド卿――私の義父上――は、身分の低い私を養子にした。ローランド卿は位が高かったから、後を継げば、必然的に私も位が高くなる。シアーズ伯爵は、私が権力を持つことを恐れた。そして殺そうとした。だから私は伯爵を殺したんだ。自分が殺される前にな」

「海賊を使って……?」

 シアーズの声が震える。

「だが先に海賊を呼んだのは伯爵だ。伯爵は海賊に船を襲わせ、事故として私を殺そうとした。私はリーガに頼んで、全く同じ方法で伯爵を殺しただけだ」

 シアーズは剣を拾い、立ち上がった。

「まだやるのか……今のお前に勝ち目はない」

 ローランド卿は冷たく笑った。

「ウィル、お前は……俺も殺すつもりだったのか?」

 一瞬時間が止まったかのような錯覚を覚えた。ローランド卿はびっくりした顔をしたが、すぐにふっと笑うと、嫌味ったらしくシアーズを見た。

「さあ……どうかな」

「いずれにしろお前は、俺を反逆罪で殺す気なんだろう」

 シアーズは顔を上に向けて続けた。

「だったら……」

 ローランド卿の顔を見つめ直し、シアーズはふらつきながらリーガの横へ移動した。



「俺はこっちにつくぜ」



 リーガとローランド卿はゼンマイのきれた人形のようになった。だが、リーガはすぐに、にやっと笑った。

「何で……裏切るのか!」

 ローランド卿が焦ったように言った。自業自得だとでも言いたげに、シアーズは鼻で笑った。

「先に手を下したのはお前だ」

「そいつは海賊だぞ……それに、部下はどうする気だ!」

「悪いが、俺の信じるものはすでにこちらにあるようだ」

 リーガが二人の間に割って入った。

「見たかアルバ、全ての結末がこれさ」

「アルバ……?」

 シアーズがリーガの顔を見た。心底うれしそうな笑いを浮かべている。海賊を恐ろしい目で睨み、黙れ、とローランド卿が声を絞りだした。

「ウィリアム=ローランド卿なんて名乗っちゃあいるが、こいつの本当の名前は、アルバ――。」

「黙れ!」

 リーガの声は、ローランド卿の叫び声に掻き消された。

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