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【本編完結】王子の寝た子を起こしたら、夢見る少女では居られなくなりました!  作者: こさか りね
後日談

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8

季節が過ぎるのも早いもので、今日は卒業パーティーである。

そして、その前に嬉しい報告があるのだ。

兄とメルティアが婚約したのである。


結婚は卒業してからすぐとの事なので、後1、2ヶ月でメルティアが私の義姉になるのだ。


今は週一回のペースで、花嫁修行と言う名の逢瀬を楽しんでいるそう。


そんな2人の幸せそうな姿を見ると嬉しくなる。


それにしても、兄の変わりようったらない。

父2号になってしまったのだ。


今は子供がいない分、愛情を向ける先がメルティア一択しかないので、見ているこっちは暑苦しい。


やっぱり、血は争えないのだなと感じる出来事だった。

それでも、メルティアは嬉しそうなので、良しとしよう。


そして、既に兄はメルティアを迎えに出ており、私はウィルフォードを待っていた。


今日はウィルフォードが送ってくれたドレスを着ている。

薄い水色のマーメイドラインで、デコルテ部分はレースで覆われていて露出が控えめな物だ。


姿見鏡に立って見ると、昔みたいに、ドレスに着られている感はもうない。

そこには、1人の女性が映っていた。


絵姿で見た事のある、祖母クリスティアーナに似てはいるが、ソックリではない。

やっぱり、私は私なのだ。


すると、サーシャがウィルフォードが来たと教えてくれたので、私はエントランスへと向かう。


今日のウィルフォードは、髪の毛を後ろに撫で付け、白を基調としたフロックコートに、私のドレスと同じ水色を差し色に使っていた。


そして目が合うと、嬉しそうに微笑み『とても綺麗だ』と言ってくれた。


私は笑顔で『ありがとう。ウィルもすごく素敵よ』と言い、ウィルフォードの手を取り馬車へと乗り込んだのである。


会場へ着くと、すごい人と熱気だった。

うちの馬車があったので、兄達は既に入場しているのだろう。


そして、馬車を降りたところで、アグネスに会ったのだ。

アグネスは親戚に頼んだそうで、私達と挨拶を交わし、入場して行った。


それから、私達も会場入りをしてAクラスの集合場所へと向かう。


するとそこには、ベティニアとラウルが居た。

2人は今回、パートナーとして参加している。

こちらに気付いた2人が笑顔で迎えてくれたのだった。


「妖精ちゃん、とっても綺麗だよ!

本当の妖精みたいだ」

とラウルが褒めてくれる。


それに続くように『よく似合っている。ウィルフォードの見立ては、悪くないな』とベティニアが言ってくれたのだ。


私は2人にお礼を言うと共に、2人の衣装を聞いてみた。


「2人の衣装もすごく素敵ね。それは、アリステリアスの正装なの?」


すると2人共、一度自分の衣装に目をやり、顔を上げて話してくれたのである。


「そうだ。

動き良さそうで、よかろう?」


ベティニアが動き良さをアピールする為に、足を前へと出した。

すると、ラウルが付け加える。


「うちの国は暑いからね、だから、薄い布を重ねた衣装が主流なんだよ」


そういって良く見せてくれた。

ベティのは何となく、前世であった、アオザイに似ている。

所々に切り返しがあり、涼しそうだ。


そして、ラウルが着ているのは、薄い布を何枚も重ねた、ゆったりとしたシルエットの衣装だった。


そして、学園長の挨拶が始まり、パーティーが開始したのだ。


私は、ウィルフォードとダンスを踊る。


すると、色々と懐かしい思い出が、頭の中を(よぎ)った。


今日でこの学園も最後だ。

この3年間は、私の人生の中で、もっとも濃密な時間だと言える。


そして、これから先、みんなそれぞれの道に進む事になるのだ。


出会いがあるなら別れもある。


一緒に居られなくなるのは寂しいが、みんな自分の人生をひたすらに進むしかないのだ。


変わって行く事は怖い事じゃない。

その先の幸せを掴む為に、みんな頑張って行くんだ。


そう思うと、別れも寂しさだけじゃないと思えたのだった。


「何か、考え事か?」

ウィルフォードが優しく聞いてくれる。


「いいえ。

これからも、頑張らなきゃねって思ったのよ」


そう言って微笑むと『程々にな』と微笑み返してくれた。


そうして曲が終わり戻ると、ラウルにダンスを申し込まれたのである。


私はラウルにエスコートをされ、ダンスホールへと舞い戻った。


後ろを見ると、ウィルフォードとベティニアも踊ろうとしている。


そしてラウルのリードで踊り始めると、静かに口を開いたのだった。


「妖精ちゃん。

僕はこの国に留学して、今では本当に良かったと思っているんだ。

ウィルフォードや妖精ちゃん、みんなに出会えた事は一生忘れないよ。それに、君は僕に色々な事を教えてくれた。とても感謝している」


「私、何もしていないわよ?」


「いいや。

君のおかげで、人を大事に思う事を知れたんだ。

だからね、君は僕の、生涯大切な友達だよ。

ウィルフォードと、幸せにね」


そう言って微笑むラウルが付け加えるように言ったのだ。


「僕等は明日、国へ帰る事にしたんだ」


・・・え?


予想していたよりも早く、そして急過ぎて驚き『なんでもっと早くに教えてくれなかったの?』とラウルを攻めてしまった。


すると、ぎこちない笑顔で返してくれた。


「前もって言うと、名残惜しくなるだろう?

だから、前日までは黙っていようって、ベティニア王女と決めたんだよ」


「でも、お別れ会とか何も出来ていないじゃない。

もっと前に教えて欲しかったわ」


そう口を尖らせて言う私に、苦笑しながら『ごめんね』と返してきたのだ。


「・・・明日は、何時に出立するの?」


「昼過ぎかな。見送りに来てくれる?」


「もちろんよ!必ず行くわ!」


そう伝えると、白い歯を見せて笑ってくれたのであった。


そうして、曲を終えると、ウィルフォードとベティニアが待っていた。


「エルとは話せたか?」


ベティニアがラウルに問いかけている。


「ええ。

僕はもう大丈夫です」


するとベティニアが『では、今度は私と踊ろうか』と誘ってくれたのだ。


周りを見ると、女性同士で踊っている人はいない。

けれど国へ帰ったら、もう直接会える機会はないかもしれない。


そう思ったら、ベティニアの手に自分の手を重ねたのだった。


ベティニアが男性パートを踊ってくれると言うので、ベティニアのリードで踊り始める。


「ベティは、何で帰る事を言ってくれなかったの?」


すると、私と目を合わせてニヤリと笑い『理由はラウルから聞いているだろう?』と言う。


聞いてはいるが、納得が出来ないのだ。

口を尖らせて下を向いていると、ベティニアが口を開いた。


「エル。

そんな顔をするな。

生きていれば、いずれ会える機会もある。

だから、笑顔で送り出してはくれないか?」


その言葉にハッとした。

ベティニアだって、きっと寂しいと思ってくれている。

だから私は『明日は、必ず見送りに行くわ!』と泣き笑いになりながらも、笑顔で伝えたのだ。


すると、ベティニアも『ああ。待っている』といつもの笑みで答えてくれたのである。


そうして曲が終わり、私達は別れの抱擁を交わしたのであった。


その後、パーティーも終わり家へ帰ってからは、ベティニアとラウルに渡す餞別(せんべつ)を考えて、用意したのだ。


【そして次の日】


ウィルフォードと2人で見送りに行くと、ベティニアとラウル、それからミレットが居た。

しかも、ベティニアの侍女服を着ている。


え!?どう言うこと?


そう思ったのは私だけではないようで、ウィルフォードの顔も如実(にょじつ)に語っていた。

そして、ラウルは既に取り乱していたのだった。


「何で君が付いてくんのさ」


「ベティニア王女の侍女として、付いて行く事にしました!」


「は?なんで?

・・・王女、どう言う事か説明願えますか?」


ラウルは眉間に皺を寄せながらベティニアを見ていた。

すると、ベティニアも気まずそうに口を開いたのである。


「いやぁ。

うちの国に興味があるから、侍女として連れて行って欲しいと頼まれてな。

それに、ほらっ!ラウルもミレットがいた方が楽しかろう?」


「はい?

そんな事、一言も申し上げておりませんが」


作り物みたいな笑顔で言うラウルが怖い。


「けど、今更なかった事には出来ないからな。

・・・まぁ、なんだ。

取り敢えず、そう言う事だから、仲良くするんだよ」


そう締め括ったベティニアを横目に、ラウルが溜め息をついたのだった。


そして、話も落ち着いたようなので、問いかけてみた。


「ミレットさん。家は大丈夫なの?」


「はい。うちは男爵家で、継ぐ領地がないので大丈夫です。

ベティニア王女の侍女として箔が付いたら、ラウルさんのお嫁さんになりたいんです!」

と嬉しそうに言うミレット。


もちろん、それに反応したのはラウルだ。


「いやいやいや。

本当、何言ってんの?

もう、解放してくれない?」と(なげ)いた。


だが、ここまで来ると、一生解放されないような気がする。

そして最後には、押しかけ女房となるのではなかろうか。

そんな事が頭を(よぎ)るのであった。


そうして感動的な別れになる事もなく、3人は馬車へと乗り込む。


あっ、そうだ!餞別(せんべつ)


私はベティニアとラウルにそれぞれ渡したのだ。


「これは、私とウィルが作ったマジッククレーなの。

使い方はメモに書いてあるから、良かったら使ってね」


すると2人は嬉しそうに受け取り『ありがとう。また会おう』と言い残して馬車は出発したのであった。


ウィルフォードと2人、手を振って見送る。


「行ってしまったな。だが、また会えるよ」


そう言って私の頭を優しく撫でてくれたのだ。


気付けば、私の瞳からはポロポロと涙が溢れていた。


・・・やっぱり、寂しいものは寂しい。


私はそのまま、ウィルフォードに寄り掛かり、我慢せずに泣いたのであった。

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