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やっとラピスライト合同国へと入国する事が出来ました。
そして、そのやっとには、理由があるのです。
ミカさんを見た門番は怪しいと思ったのか、通過する為に必要な母の紹介状だけでは足りず、ラピスライト合同国の一領地の王子だと告げるも、余計に不信感を煽り、仕舞いには、ミカさんが持っている王家の紋章を見せて通過する事が出来たのだ。
ラピスライト合同国へ入る前に、女装を止めさせれば良かったと、今更だが悔いたのは言うまでもない。
そしてまた、その紋章を探す事に時間を取られてしまった。
だって、トランクにあるフリフリスカートのポケットに入っているなんて、誰が思う?
そうして、ドタバタしながら、やっと入国出来たのである。
それからは、ミカさんのスーツ選びをして、化粧とカツラを取らせる事に成功した私達は、お祖父様の屋敷の門を潜ったのであった。
「フェアリーちゃん?これ、地味よね?
これじゃ、あたしじゃないわ」
と今も文句を言っている。
私は、少し我慢してと話し、到着したので馬車を降りたのだ。
すると、お祖父様と、叔祖父様達が出迎えてくれたのである。
それに動きを止めたのはミカさんだった。
『あたし、降りないわ』と、取っ手にしがみつき、駄々を捏ねている。
それを見兼ねた叔祖父様が『ミカエル、いい加減に降りて来ないなら、強行手段に出るぞ?』とミカさんよりもムキムキのゴツい叔祖父様が言うと洒落にならない。
それを横目で見たミカさんは、仕方無さそうに馬車を降りたのだった。
「フェアリエル、久しぶりだな」
ニカっと豪快に笑いながら話しかけてくるのは、祖父のヴァルカンだ。
そして、目線を私からウィルフォードへと変え、二人は挨拶をしている。
私は静かだなと思い、周りを見回すと、ミカさんは既に連れ去られた後だった。
そうして、その後は皆で晩餐を取る。
カチャカチャと食事をする音が聞こえる中、祖父が口を開いたのだ。
「二人とも、少し良いか?」
そう言って、私達に目を合わせた祖父が続ける。
「マリアベルから手紙で書いてあったように、獣人の記述がある物を、三領地から集めたんだ。
その方が領地を移動するよりも早いだろう?」
と得意気な顔をしている。
私が『お祖父様、ありがとうございます』とニッコリ笑って返事をすると、とても嬉しそうに歯を見せて笑ったのだ。
因みに、晩餐にミカさん親子はいない。
色々と積もる話もあるからと別室で取っていると言う。
そうして晩餐は終わり、ウィルフォードと二人で各部屋へと帰る道すがら、聞いてみた。
「ねぇ、ウィル?
さっき、お祖父様の話しで気付いたんだけど、瞬間移動のマジッククレーを使えば一瞬で来れたんじゃない?」
すると、ウィルフォードは首を振り話し始めたのだ。
「いいや。瞬間移動と言っても、何処へでも行ける訳ではないんだ。
2つ、マジッククレーがあったろう?
対の1つを、行きたい場所に置いておかないとダメなんだよ」
なるほど。
同じ所を行き来する為のものだったのだ。
私が頷いていると、ウィルフォードが再度、口を開く。
「そして、1日に1回しか使えないんだ」
そう言って、バツが悪そうにしているではないか。
あちこちに行けなくても、1日1回でも、瞬間移動が出来る物を作ってくれただけで、すごいし、感謝しているのだ。
私の言い方が良くなかったのかと思い、ウィルフォードの手を握り締めて、話しかけたのだった。
「ウィル?私の聞き方が良くなかったのかもしれないわ。
ごめんね。
それに、ウィルが作ってくれたマジッククレーは、とてもすごい物よ。
私、結婚してから使うのが、本当に楽しみなんだから。
だから、そんな顔しないで?」
すると、ウィルフォードは私の手を握り返して『本当は、もう少し精度を上げたかったんだがな。でも、そう言ってくれると嬉しいよ』
と微笑んだのであった。
そして、明日からの予定を話し、各々の部屋へ戻ろうとしたら、ウィルフォードが私の額にキスを落とし『おやすみ』と愛おしそうに目を細めて言ってきたのである。
当然、その顔にドキドキして、全然眠れなくなってしまった事は、言うまでもない。




