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【時は遡る】
フェアリエルが3歳の時、お披露目を兼ねて王宮へとご挨拶に行った。
親族のみの内輪な会の為、国王に対しても無礼講である。
その国王が私を見た瞬間、息子の妃になってほしいと両親に言い放ったのだ。
後で聞いた話だが、国王が少年の時、叔父の婚約者。つまり私の祖母に並々ならぬ憧れを抱いていたという。
・・・前世で言う推しかな?
それが理由で、父と陛下の攻防が始まる事となった。
「陛下、そういうのは、もう少し大きくなってからでも良いのではないですか?」
「何を言う、ベンジャミン!うかうかしていたら、フェアリエルちゃんを誰かに取られちゃうじゃないか!」
国王はこの機を逃すまいと必死に追いすがる。
「いやいや、まだ誰とも婚約をする予定はございませんよ」
「予定は未定と言うじゃろう?何があるか分らんではないか」
なかなか引き下がってくれない事に痺れを切らした父は策を打って出た。
「では、仮婚約ではどうですか?
婚約証書ではなく、仮婚約契約書を作りましょう。
仮婚約であれば、何かあっても、互いに傷は残りません。」
「ふむ、仮婚約している間は、フェアリエルちゃんに来る釣書は断ってくれると言う事か?」
「もちろんです。
そうですね、期間としては学園を卒業するまで。
その期間に、お互いを知ってもらい、結婚したいと双方が認めれば、その時点で婚約証書を交わすと言うのはいかがでしょう」
「もし、息子がフェアリエルちゃんに気に入られなかった場合はどうすればいいのじゃ?」
「そこは殿下に頑張ってもらわないといけない事ですね。
しかし、逆もあり得ますよ?殿下がフェアリエルを気に入らないという事も。
・・・それに、好意がない相手との結婚を子供達に強いたくはありません。
幸せになってもらいたい。
そう思うのが親ではないでしょうか?」
父は親心を煽る言い方をして陛下に揺さぶりかけた。
陛下は暫し考えていたが、元々が子煩悩な父親である。
自分の願望より子供の幸せを優先させたのだ。
「・・・そうじゃのぅ。わしも子供達には幸せになってもらいたいと思っている。
ベンジャミンの言う通りじゃ。子供達の気持ちを尊重せねばならん。」
「では陛下、仮婚約で問題ありませんか?」
「うむ、それで頼みたい」
「そうしたら後日、契約書を作成致しましょう。」
こうして、第三王子ウィルフォード・ネイトピアとの仮婚約が整ったのだった。
【後日】
「ベンジャミン!契約書の言い回しが堅苦しいぞ!
もっと柔らかくしないといかん」
「陛下()で書き込まないでください。」
と、すったもんだしながら出来上がったのがこれだ。
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【仮婚約者契約書】
ウィルフォード・ネイトピア第三王子とフェアリエル・クリーヴランド公爵令嬢は下記の事を遵守するものとする。
【契約期間は3歳から17歳の学園卒業まで】
1.妃教育として6歳から2週間に1回王宮に通う事。
(気軽に遊びに来る気持ちで良いぞ!)
2.初めての顔合わせはお互いに5歳を迎えた4月に行う事。
3.定例のお茶会は月1回以上行う事。
(1回と言わず、いっぱい顔を見せてくれたら嬉しいぞ!)
4.学園卒業までに、お互いが結婚を望まない場合はこの契約は無効とする。
また、お互いに結婚の意思がある時はその時点で正式な婚約と認める。
5.両者の親は子供の気持ちを尊重し、強要する事をしてはならない。
以下余白。
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フェアリエルがこの内容を詳しく知らなかったのは、両親、お互いが娘に伝えているだろう、と思い込んでいた為だ。
そのせいで可愛い娘が、しなくてもよい作戦を実行し、泡を食う羽目になるとは、露程も知らなかったのである。
因みに、ウィルフォードは母から詳しく聞かされて、知っていのだった。




