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あれから1週間
あれ以来、ウィルフォードはいつも通りだが、私がベティニアに近づくと、あまり良い顔をしない。
まさか、私がベティニアに何かするとでも思っているのだろうか・・・。
そう言えば、私とベティニアが2人きりになりそうな時には、必ずウィルフォードが付いて来ていた。
良く考えれば、考える程、疑念が確信へと変わっていく。
でも、何故そう思われているのか、理由が分からないのだ。
すると背後から『じゃあ、僕はこっちを片付けるよ』とラウルの声が聞こえた。
・・・そうだった。
今は、移動教室の片付け当番をラウルと2人でしていたのだった。
『では、私はこっちを片付けるわね』と話し、二人で手分けしながら片付けていく。
そして、最終確認を先生にしてもらい、教室を出てウィルフォードとベティニアが待つ中庭へと急いだのだった。
別棟を出ると、日差しが木々の隙間から零れ、木漏れ日が舞っていた。そろそろ夏になろうとしている。
私達は目的地を目指して歩いていたら、2人がベンチに座っているのが見えてきたのだ。
そして、声を掛けようとした、その時。
ウィルフォードがベティニアの前に跪き、手を握っているではないか。
私は、あまりの事に言葉を失ってしまった。
2人が何を話しているのかは分からない。
だが、2人を取り巻く空気感が特別な物なのは分かった。
【二人だけの世界】
その言葉が一番しっくり来る。
私達など、お呼びでないと言われているようだった。
そして程なくして、ベティニアが笑ったのだ。
いつも見せるものとは違う、心からの笑顔だと思った。
私は居ても立っても居られなくなり、気が付いたらその場から走り去っていたのだ。
そして、目的も無く走り、裏庭へと入った頃・・・。
「待って!
・・・待って、妖精ちゃん!」
追いかけて来たのだろう。ラウルが私の手を掴んだ。
走ったせいで息が苦しい。
・・・呼吸が乱れる。
すると、ラウルが静かに口を開いた。
「妖精ちゃんは、ウィルフォードが好きなんでしょ?」
私は驚いて振り向き『・・・え!・・・な、んで・・・?』と返す事しか出来なかった。
息も絶え絶えで言葉にならない。
「そんなの見ていれば分かるよ。
・・・だって僕は、妖精ちゃんが好きで、君を良く見ているんだから」
いつもヘラヘラとしているラウルの顔が、真剣な事に怖くなり、思わず掴まれていた手を振りほどいてしまった。
静けさの中、私達の息遣いしか聞こえない・・・。
どうしていいのか分からず、俯いてしまう。
すると、ラウルが思いつめた顔で再度、口を開いたのだ。
「ねぇ、ウィルフォードやめて、僕にしない?
絶対に傷付けないと約束するし、君を1番に大事にするよ。
・・・それに君も、さっき見ただろう?」
そう言われて、先程のプロポーズのようなワンシーンが頭を過る。
ウィルフォードとベティニアは、きっと想い合っている。
でも、私が居るから、どうにもならないのだ。
私が・・・・・・邪魔者?
衝撃の事実に打ちのめされ、意識が遠のきそうだ。
ふらふらとその場に座り込んでしまった私に、ラウルが心配そうに声を掛けてくれるのだが、一切耳に入って来なかった。
そして、その後の事はよく覚えていない。
気が付いたら家に居たのだ。
サーシャが言うには、体調が悪くなり早退して来たと言う。
『ちゃんと休んでくださいね?』と言い残し退出して行ったのだった。
私は自室で一人、漠然と考えた。
———なんて、馬鹿なんだろう。
今頃、分かるなんて・・・。
認めたくないと、虚勢を張っていたからこうなったのだ。
ずっと前から、ウィルフォードが好きだと気付いていたのに。
先延ばしにした結果が、これだ。
笑えなさ過ぎて涙が出て来る。
そして今更、後悔しても遅い。
ウィルフォードはベティニアに惹かれている。
私がこれ以上、2人の邪魔をしたら、本当に嫌われてしまう。
・・・だったら、友達のままで良い。
その時、何か用があったのか、再びサーシャが入室して来たのだ。
泣いている私を見て、心配そうに近寄って来るが、私は『大丈夫』としか返せなかった。
サーシャはウィルフォードが来ていると言う。
でも、とても会う気にはなれないので、体調不良で断る様にお願いしたのだ。
それを聞いたサーシャは、何かを感じ取ったようで深刻な表情で頷き、退出して行ったのだった。
その日は1日中部屋で、自分の不甲斐なさに涙したり、これからどうすれば良いのかを考えて過ごしたのだ。
家族は、出て来ない私をきっと心配しているだろう。
だが、そっと見守ってくれた。
明日からはまた、いつもの自分を保てる様に、と何度も何度も心に言い聞かせるのであった。




