ウィルフォード視点
早いもので、明日から3年生になる。
晩餐室には両親、一番上の兄夫婦と俺。
甥っ子は乳母と別室で食べているので、ここにはいない。
そろそろ離乳食が終わるそうなので、みんなで一緒に食事が出来る日も近いだろう。
俺は、夕食を黙々と口に運びながら、これからの事に思いを馳せていた。
婚約解消まで、あと1年。
フェアリエルは、俺の事を少なからずだが、意識してくれていると思う。
けれど、なかなかそれ以上進まないのだ。
グダグダしている場合ではない。
何か一押しあれば・・・。
と思案していると、父が何かを話していた。
「3年からよろしく頼むぞ。
・・・ウィルフォード?・・・聞いとるか?」
自分に話し掛けられているとは思わず『・・・はい』と返事をするのが遅くなってしまった。
父は俺を見て、『考え事か?・・・まぁ、いい。さっきの話じゃが、3年からよろしく頼むと言うことじゃ』とそう言って笑顔で頷いて来たのだ。
・・・何をだ?
周りを見回すと、頑張れよと言う空気が出ている。
とても今更聞ける雰囲気ではないので、了承する事にしたのだ。
明日になれば嫌でも分かるだろうと思い、その日の晩餐も、いつものように、和やかに終わりを迎えたのである。
そして次の日、学園へ着き早速クラス表を眺める。
とその時、フェアリエルが『おはようございます。ウィル』と言って、にこやかにやって来た。
最近のフェアリエルは、人がいても愛称で呼んでくれるのだ。
これは、大きな進歩だと思いたい。
俺も挨拶をして二人でクラス表を見る。
すると俺も、フェアリエルもAクラスだった。
思わず心の中でガッツポーズをしてしまうのは仕方のない事だろう。
「フェアリエル、3年も一緒だな。よろしく頼む」
「はい。こちらこそ、よろしくお願いします」
それから一緒にクラスへ行こうとすると、フェアリエルが友達を確認したら行くと言うので、俺は先に向かう事にしたのだ。
クラスに着き、自分の席へ座る。
後から何人かやって来た生徒達の中に、ラウルがいたのだ。
「おはよー!ウィルフォードは元気だった?
また一緒だね!よろしく!」
先日、国へ帰ると言っていたので、初日に間に合うとは思っていなかったのだ。
だから俺は『始業日に間に合ったんだな』と聞いた。
するとラウルは、疲れた様子で口を開いたのである。
「まあね。かなり急いで頑張ったんだよ。久々に国へ帰ったのに、逆に疲れちゃった」
「そうか。まぁ遠いからな。
またこれからよろしく頼む」
そう言うと、ラウルが言いづらそうに問いかけて来たのだ。
「うん。
・・・それより話、聞いてる?」
俺は良く分からず『何のだ?』と聞き返したんだ。
「・・・。
なんだ、聞いてないのか。
・・・じゃあいいや」
と、素っ気なく言うではないか。
しかも、その態度が余計に気になる。
「・・・。
そこまで言ったら普通話すだろう。
何の話だ?」
そう聞くと、ラウルは逃げる様に『話したいのは山々なんだけど、もうすぐ分かる事だから、そのまま待っててよ』と、言い残して自分の席へと行ってしまったのである。
・・・一体、何なんだ?
周りを見るとフェアリエルも着席していた。
そう言えば、ムーア嬢とマルティネス嬢がいないな。
別のクラスになったのか?
すると、少ししてから担任がやって来たのだが、さっき言われたラウルの言葉が気になり、俺は考え込んでいたのだった。
「皆さん、おはようございます。
今年度、このクラスの担任となりました。
アルバーニと言います。
早速ですが、転校生の方を紹介します。
このクラスで過ごす仲間となりますので、みなさん、暖かく迎えてあげてください。
では、アリステリアスさん、どうぞ。」
「紹介に預かった。
私はベティニア・アリステリアス。
よろしく頼むよ。
それと、久しいな!ウィルフォード」
俺は名前を呼ばれて顔を上げると、思いもしない奴がいたのだ。
「は?何故、ここにいる?
・・・ベティ、ニアなのか?」
すると、尊大な態度で返して来たのだ。
「そうだと言っいてるだろう?
元気そうで何よりだ。
お主の父君から聞かなかったのか?」
・・・。
昨日言っていたのは、この事か・・・。
もっとちゃんと聞いておけばよかった。
俺が後悔している間に、話はどんどんと進んで行ったのだった。
「では、構内の案内はネイトピアさんかネフタリアさんのどちらかにお任せしますね。
それでは、教材を配り本日は終了となります。
また明日から、よろしくお願いしますね」
そうして、あっという間に始業日は終わったのである。
俺は帰り支度をしていると、ベティニアがこちらへやって来たのだ。
「ウィルフォードとは何年振りだ?」
「5年くらいじゃないか?
ベティニアは相変わらずだな」
「5年そこらで変わる訳なかろう?
・・・そうだ!
お主の魔女を紹介してくれるか?」
こいつは、昔の俺を知っている。
だから、揶揄うように言って来ているのだ。
「・・・。
魔女じゃない」
すると、目を細めて『ほう』と頷き、余計な事を言って来たんだ。
「そうか。やっと気づいたのだな。
・・・なんだ、面白くない。
お主は変わった様だな。
それで、誰だったか?」
「何故、紹介しないといけない?」
すると、しばらく考えた後、頬に手を当てながら、突拍子もない事を言い出したのだ。
「私とお主の仲だろう?水臭い事を言うでない」
「やめろ!フェアリエルに聞こえるだろうが!」
そして俺から名前を聞き出せた事に、ニヤリと笑い『そうだった。フェアリエルだったな』と呟き、大きい声を張り上げたのだ。
「ここにフェアリエルはおらんか?」
「おい!」
止めたのだが、時既に遅し。
ベティニアに呼ばれたフェアリエルが振り向いたのだ。
その様子を見ると、不安そうな顔をしていた。
そりゃそうだ、初対面の王女に名を呼ばれれば不安にもなるだろう。
だから俺は、すぐにフェアリエルの元へ向かったんだ。
「フェアリエル大丈夫だ。彼女は――。」
俺が話していると、付いて来たのか、ベディニアが俺の話を遮り、話し始めたのだ。
「其方がフェアリエルか。
とても美しい娘だな。私と友達になってはくれぬか?」
すると、少し戸惑う仕草を見せたが、断れるはずもなく。
フェアリエルは『はい。私で宜しければ、喜んで』と笑顔で答えていたのだ。
「堅苦しい言葉は使わなくて良い。と言いたいが、徐々に慣れてくれると嬉しいよ。
フェアリエル?これからよろしく頼む。
それと、構内の案内はフェアリエルに頼もうと思う」
・・・は?
何を言っている?
「待て。俺が行く」
「お主はお呼びでないよ」
ベティニアが、ニヤリと笑ったのだ。
そうは、させるか。
「いいや。俺が行く。
フェアリエル、悪いが、先にいつもの図書室に居てもらえるか?」
どうして良いのか分からないのだろう。
フェアリエルはコクリと頷いたのだった。
そして俺はもう一人、巻き込む事にしたのだ。
「ベティニア行くぞ。ラウルも付き合え。」
「え?僕も?僕、いらないじゃん!」
ギャーギャー騒いでいるラウルの腕を取り、もっともらしい事を述べたのだ。
「アリステリアス王国の王女の面倒を、臣下が見なくてどうする?だから付き合え」
「えー!?
王族の君が、そんな事言うの?
なんか、おかしくない?って、ちょっと。
分かったってば!引っ張らないでよ!!」
と、そんな様子を見ていたベティニアが『ははっ!お主らは仲が良いのだな。では、フェアリエル。また明日な』と言って、嵐の様に去って行ったのであった。




