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今日は、みんなでお出かけをする日なので、中央広場の噴水前まで来ている。
まだ、誰も来ていないので待っていると、お忍び用の指輪を付けたウィルフォードがすでに居たのだ。
声を掛けられるまで、全く気付かなかった事が、少し後ろめたく思ってしまった。
そして2人で待っていると、みんなやって来たのである。
ウィルフォードを見たみんなは、少し驚いていたが、お忍び様と説明すると、なるほどと納得をし、早速、街散策をする事にしたのだ。
普段、通らない脇道には雑貨店など、知らないお店が多数並んでいた。
思わぬ発見に心が躍る。
その後1時間程して、そろそろ休憩しようとFancy Fancyへと向かったのであった。
「いらっしゃい!
いっぱいお友達を連れて来てくれたのね!
今日は食べて行く?それとも、お持ち帰りかしら?」
今日も元気いっぱいに出迎えてくれたミカさん。
サーモンピンクの制服が眩しい。
私はあれ以来、このお店の常連となっている。
学園帰りにお持ち帰りするのがお決まりだ。
そして、変装をしていない私を見た時のミカさんはすごかった。
「貴女、フェアリーちゃんよね?
まあまあまぁ!ピンクのお目目だったのね。なんてキュートなの!
その内、妖精さんみたく、羽が生えてきちゃうんじゃないかしら?」
と、目を爛々と輝かせて迫って来るミカさんは、正直言って怖かった。
私は、後退りながらも、一言しか返せなかった事は記憶に新しい。
『いいえ、ミカさん。生えませんよ』と。
そんな感じで、ミカさんとは何だかんだ、仲良しになったのである。
「今日はこちらでいただいていきます。席は空いてますか?」
私はお店を見回しながらミカさんに聞いた。
「分かったわ。席を作るからケーキを見て待っていてちょうだい!」
そう言って、窓際のテーブル席を移動しに行く。
後ろを振り返ると、ミレットとラウルがポカンと口を開けていた。
「ミレットさんは、ミカさんに会うの初めて?」
「・・・え?
ええ。初めてです。前はいらっしゃいませんでした」
呆けた様に答えるミレット。
そしてラウルも、ミレット同様に呆然としていたので話しかけたのだ。
「ネフタリアさんも、何のケーキにするのか選びましょうか」
「・・・ん?
あ。そうだね。
いや、想像と違いすぎて意識が遠のいたよ」
と苦笑いしながら、こめかみを押さえるラウル。
私はどんな想像していたのかを聞いてみたのだ。
すると・・・。
「あー。それは内緒かな。
それにしても、すごい綺麗なケーキがいっぱいだね!」
話題を変えたかったのか、ケーキのショーケースを見ている。
とその時、ミカさんが帰ってきたのだ。
「お待たせしちゃったわね。
どれか決まった?
フェアリーちゃんは、いつものにする?」
ニコニコしながらミカさんが爆弾発言を投下したのである。
もちろん、それに反応を示したのは、言わずもがな、ラウルしかいない。
「えっ?フェアリーって呼ばれてるの?
じゃあ僕の妖精ちゃん呼びも全然問題ないじゃないか」
納得のいかない顔をしながら聞いて来るラウルに、私は何も言えないのであった・・・。
そんな場の空気を読んでか、ミカさんがラウルに話しかけたのだ。
「あら?貴方初めてね。あたしの事はミカさんって呼んでくれる?」
「はい。ミカさんはフェアリーって呼んでいるんですね」
と目を輝かせて聞き返すラウル。
「そうよ!すごく良い名前よね!
名は体を表すとは、まさにこの事よね!」
と興奮気味に話すミカさん。
ちょっと待って。場の空気を読んでくれたんじゃないの?
「そうですね。僕もそう思います」
と、したり顔で頷くラウルに、イラッとしてしまった事は仕方ないと思う。
そして、その様子を見ていたミレットが話題を変えてくれたのだ。
「あの、期間限定の新作があるって聞いたんですが」
「もちろんあるわよ!
今日はまだ、二種類ともあるから見てちょうだい!
【イタズラ好きのピクシーさんが集めた宝石はタルトに乗せていただくわ】と【ウンディーネさんの魅惑のキッスでメロメロメロンプリンアラモード】よ!
どちらもお勧めだから、ゆっくり選んでちょうだい」
ミカさんが身振り手振りで説明をしてくれる。
しかし、相変わらずネーミングセンスがすごい。
でも、本当に美味しそうなのよね。
ピクシー宝石タルトは色彩豊かなフルーツタルトだった。
「ミカさん、今日はピクシー宝石タルトにするわ」
「分かったわ!ほっぺが落ちちゃう程美味しいわよ!
皆さんは決まった?」
アグネスは私と一緒でメルティアはメロンプリンアラモードを選んだ。
「いつも来てくれてありがとうね。
サービスに、デザインチョコをトッピングしちゃうわ!
って・・・あら?
静か過ぎて気が付かなかったじゃない。
美男さんも一緒だったのね!」
・・・。
その言葉に場が静まる。
沈黙に我慢ができなかったのか、ラウルが吹き出すように笑いながら話し始めたのだ。
「くくっ。ウィルフォードは美男って呼ばれてんの?」
すると、ウィルフォードに睨まれたのか、急に静かになった。
「あらあら、喧嘩はダメよ。するならお外でしてちょうだいね!
美男さんはシャイだから私がチョイスするわ!楽しみに待っていて!」
「・・・ウィルフォードだ」
耐えられなかったのだろう。
苦虫を噛み潰した様な顔でウィルフォードが静かに言ったのであった。
「自己紹介ありがとう。ではウィルフォード君は前回と一緒でコーヒーでいいかしら?」
ウィルフォードはコクリと頷く。
それを見たミカさんの様子が、またしてもおかしい。
・・・すると。
「っんもう!本当にシャイボーイね!私の好みど真ん中だわ!」
とミカさんは興奮気味に言い放ったのだ。
「「「「「「!!?」」」」」」
全員、度肝を抜かれる。
そして、振り返りウィルフォードを見ると、半目になっていた。
なんか、現実逃避をしている様に見えるわね・・・。
そんな様子を見て、またしても、ミレットが空気を読む様に慌てて話題を変えてくれたのだ。
「あ、あの!
私はこの赤いハートのでお願いします」
そうして、話題を変える事に成功したミレットは『デザインチョコをオマケするわ』と言うミカさんに、ホッとした顔をして、お礼を言ったのである。
「そちらの美男さんは?」
「ラウルです!ラウルと呼んで下さい!」
まさか、自分も美男と呼ばれるとは、梅雨程も知らなかったラウルは、焦りながら自分の名前を連呼したのだった。
そうして、席に案内され、一息つく。
みんなを見ると、ウィルフォードとミレットが疲れ果てていた。
「二人とも大丈夫?」
ウィルフォードは『ああ。大丈夫だ』と言いながら目が虚だった。
もしかしたら、ミカさんが苦手なのかもしれない。
その後は長期休暇の話になり、みんなの過ごし方を聞いたりしたのである。
ラウルは1年ぶりに国へ帰ると言う。
長期休暇では間に合わない為、明後日から学園を休むらしい。
と、その時ミカさんがやって来たのだ。
「お待たせしちゃったわね。
では、皆さんごゆっくりしていってね!」
一口食べるとやっぱり美味しい。
ラウルは想像を超えたようで、目を見開き『これは美味しいね!みんなが言っていた事が分かったよ』と驚いていた。
そして、Fancy Fancyの居心地の良さは、やっぱりすごかった。
なんだかんだで話が盛り上がり、またしても、長居をしてしまったのである。
帰り際にミカさんへ長居の件を謝ったのだが『逆にもっと居てくれてもいいのよ!』と笑顔で言ってくれた。
ここのお店が繁盛しているのは、ミカさんの人柄もあるのだな。
と改めて思うフェアリエルだったのである。




