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それから時は経ち、早いもので、もうそろそろ、今年度が終わろうとしている。
いつも通りに教室へ行くと、ラウルに話しかけられたのだ。
「おはよう!妖精ちゃん。あのね、話が合ってさ、そろそろ1年が終わるでしょう?
休みの日にみんなで出かけない?」
思わぬ誘いに、何か裏があるのかと勘繰ってしまった。
しかも、みんなとは誰の事を言っているのだろうか。
「あの、みんなって誰が居るのかしら?」
そう聞いた私に、ラウルは名前を連ねて行く。
メルティア、アグネス、ウィルフォードとラウル、そして私の様だ。
いつの間に仲良くなったのかは分からないが、私以外からはすでにOKをもらっていると言っているのである。
なので、私も了承をして放課後にみんなで話し合う事になったのだった。
その後ラウルは『じゃあ、また放課後でね!』と言い残して、手を振って戻って行く。
この前もそうだが、最近のラウルは以前と違って普通だ。
前の言動が嘘の様に思える。
私は、席へと戻るラウルの様子を見つめながら考えていると、途中、ウィルフォードと笑いながら話していたのだ。
これには思わず驚いて凝視してしまった。
・・・本当に、いつの間に仲良くなったのやら。
そして、その日の授業も終わり、放課後5人で学園の敷地内にあるカフェテラスへと行く。
席に着くと『何処に行こうか?』と快活に話を進めるラウルの会話術の高さに驚かされながら、どんどんと決まっていった。
とその時、外で手を振っている人が見えたのだ。
このカフェテラスは全面ガラス張りのなので、良く見える作りをしている。
私が目を凝らそうとする前に、ラウルが『うわぁ・・・』と小さく漏らしたのであった。
変な人なのかと、再度目を遣ると、何ともない、ミレットだったのだ。
ミレットはカフェテラスに入って来て『皆さん、こんにちは!』と笑顔で挨拶をしてくれる。
何をしているのかを聞かれ、口を開こうとしたら、ラウルが『何もしてないよ』と笑顔で言い張るではないか。
2人とも笑顔なのに、何故か言い知れない何かを感じる。
そして、そんな2人を見兼ねたアグネスが、『みんなで遊びに行こうと話していたんです』と切り出し、初めての挨拶をメルティアと一緒に交わしたのだ。
すると『皆さんで遊ぶのは楽しそうですね』なんて寂しそうに言われたら、誘わない訳にはいかない。
「よかったら、ミレットさんも一緒にどうかしら?」
「え!?妖精ちゃん!?」
ラウルは、口をあんぐりとさせたまま驚いている。
何故そんなに驚いているのか・・・。
すでに誘ってしまった事後だが、みんなにも確認すると、了承してくれたのであった。
ミレットも嬉しそうに会話に加わり、予定を立てて行く事にする。
だがその時、ラウルが下を見ながら何かをぶつぶつと言っていた。
「なんで、こんな事になってんの?この子、苦手なんだけど」と。
でも、その言葉は周りの喧騒に掻き消されて、誰の耳にも届く事はなかったのであった。
そして、そんな中でも女子トークは続く。
ミレットとメルティアは相性が良いのか、会話が弾んでいる様だ。
「美味しくて可愛いケーキ屋さんを見つけたんです。皆さんで行ってみませんか?」
すると、私とメルティア、アグネスは顔を見合わせた。
絶対に【FANCY FANCY】で違いないと確信を持ったのだ。
「もしかして、【FANCY FANCY】?」
私が問いかけると、ミレットは目を丸くして。
『はい!ご存じだったんですね』と、にこやかに返してくれた。
けど、おかしい・・・。
ミカさんの話が、一切出てこないのだ。
一番のインパクトだと思うんだけど・・・。
とその時、私達の話に興味を持ったラウルが話しかけて来たのである。
「なになに?そんなケーキ屋があるんだー。
折角だし、行こうよ!」
そうして【FANCY FANCY】に行く事が決まり、その前は王都を散策する事になったのだった。
「そうそう、この間【FANCY FANCY】で新作が出ていたのよ!」
「本当ですか?」
「期間限定だったから、行った時にあればいいわね」
と、女子達が盛り上がっている中、男子は・・・。
ウィルフォードが小声でラウルに問いかけていた。
「ラウル、本当に行くのか?」
「ん?行くよ?・・・なんで?」
「・・・・・・何でもない」
「え?何それ?変な店なの?」
ウィルフォードはオカマが居るとは答えられず、濁すこ事したのだ。
「変な店ではないが・・・・とても刺激的な店だ」
すると、ラウルは息を呑んで『・・・。それは、やらしい店なの?』と真剣に聞いて来る。
予想だにしない返答に、思わず目が点になってしまった。
「は!?そんな訳ないだろう!」
聞こえていないとは言え、女性が居る前で何て事を言い出しているのだろうか。
「今の言い方だと、そう思うでしょ?」
「そんな言い方してない!」
「いやいや、刺激的=やらしいは10代男子の性でしょ?」
ラウルは当たり前の如く言い放ったのだ。
思わず、呆れ顔で『なんか、言っている事がオジサンみたいだな・・』と呟いてしまった。
それに対し、ラウルは顔の前で手を振りながら、心外そうに返して来る。
「そんな事無いって。
・・・え?ない、よね?」
「・・・。
取りあえず、行けば分かる」
「ホント何!?
気になって、眠れなくなっちゃうじゃないか!」
そうして、男子は男子で、女子には聞かせられない話に、花を咲かせていたのであった。




