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【本編完結】王子の寝た子を起こしたら、夢見る少女では居られなくなりました!  作者: こさか りね
本編

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ベンジャミン視点

「旦那様、お呼びと聞き伺いました」


私は、アルマの事を聞く為にアディの従者、サミュエルを呼び出したのだ。


「ああ。サミュエルすまないな。アルマの事で聞きたい事がある。

その後、どうだ?」


「はい。アルマとても有能です。知りたいと言う意欲が高く、日々、成長しております。

今まで閉鎖的(へいさてき)な空間にいたとは思えない程に使用人達とも馴染めています。

また、アディエル様との関係も良好でして、後2.3年もしたら一人前の従者となれる事でしょう」


「そうか。報告ありがとう。(あと)は、そうだな。

余裕があれば基礎教育、経済学などを教えてもらいたい。

将来、アディの(そば)に付くのであれば、必須になるからな。

その辺りは、本人のやる気次第で配分を考えてやって欲しい」


「はい。かしこまりました」


私は『よろしく頼むよ』と伝え、用件が終わったのでサミュエルに退出を促したのだ。


やはりアルマは、善良な少年だ。

私の目に狂いはない。

彼は、アディの為に日々、頑張ってくれているのだ。

それに私は(むく)いなくてはならない。


そして先日、寺院からの面会許可が出たのだ。


何が何でも権利を勝ち取り、彼を本当の意味で自由にしてあげなければいけない。


そう決意を固めて、今日も仕事へと向かうのであった。



【そして面会当日】


私は王都にある寺院へと足を運んだ。

馬車を降りると、神官長室へと案内されたのである。


「ようこそ、おいでくださいました。クリーヴランド公爵閣下」


「面会、感謝する」


・・・なんだ?

あの不遜な態度は・・・。


すると、神官長が高圧的に話し掛けて来たのだ。


「早速ではございますが、用件とは何でございましょうか?

まさか、とは思いますが、獣人の件ではございませんよね?」


「・・・どうしてそれを?」


神官長は、でっぷりとした腹を揺らしながら、余裕綽綽(しゃくしゃく)たる態度で、口を開いたのである。


「いえね、信徒の方にお聞きしたのですよ。競技場で頭に耳の生えた()()()が現れた事を。

それを、公爵閣下が口止めをしたとも聞いております。

それで?

私達に、何のお話があるのでしょうか?」


出鼻(でばな)(くじ)かれてしまった。

だが、負けられない。

・・・大丈夫。想定内だ。


神官長に私は、何も知らないかの様に問いかける事にした。


「獣人、だったか?何故、君達は知っている?」


「それは、資料に残っているからですよ。

獣人とは、動物の特徴を持った、野蛮で理性のない、人ならざる者です。

ですから、奴等は人ではないのです」


私は、顎に手を当てながら、再度、問いかけたのだ。


「・・・おかしいな。

200年以上前に、異端として、書類は全て破棄されたはずだ。

・・・どうして破棄したはずの寺院が持っているんだ?」


私はニヤリと笑い、神官長を見つめる。

彼は、コチラが知るはずがないと、(たか)(くく)っていたのだろう。

相当に焦っているではないか。


「それはっ!!

・・・記録を残す為です!

それに、何故その事を知っているのですか?」


「こちらも、獣人の記述が書いてある本を見つけてね。だから知っているのだよ」


「それは、異端者が書いたものです。神の意志に反します!

ただちに寺院へ提出してください」


唾を飛ばしながら言う神官長に、もう少しだと思い、更に挑発する言葉を並べる。

そうして、感情的にさせたところで、一気に攻め落とす算段だ。


「・・・何故?

君達は保管してあるのに、おかしな事を言うね?

・・・まさか。

そう言う君達も、異端者なのではないか?」


「そんな訳ありません!!

私達は、神に(つか)える神官です!神の教えは絶対です」


「そうか・・・。

では、神の教えを説いてもらおうか」


すると、神官長は顔を真っ赤にしながら、話してくれたのだ。


「はい。神が創り賜うた最高傑作が人間です。

人間は慈悲の心を持ち、そして与える事ができる、唯一無二(ゆいいつむに)の存在です。

この世界に、私達を超えるものは存在いたしません。

ご理解いただきましたか?」


私は、頷き、歩み寄る様に、悠長に答えたのだ。


「ああ。もちろんだとも。良く分かったよ。

慈悲の心は大切だな。

だが、君達は言っている事と、している事が違くはないか?

君達には、獣人に対する慈悲の心はないのだろうか?

・・・神の教えに反するな」


すると、神官長は『獣人は、人ではないからです』と言い放ったのである。


「今の話だと、慈悲の心は人に対して、とは限られていないだろう?」


「・・・それは、そうですが・・・」


私は、ここが攻め時だと思い、一気に追い込む事にした。


「君は、獣人と話した事はあるか?」

「いいえ。ありません」


「では、どうして彼らを(さげす)む様に言える?

彼らが一体、何をしたと言うんだ。

心がないとでも思っているのか?


もちろん、私も神の教えを重んじているよ。

だが、人間より優れている所がある者を、排除しようとするのは、神の教えではない。

寺院の考えだろう?


神を侮辱(ぶじょく)しているのは、寺院ではないのか?」


「そんな、ことは・・・」


神官長の顔が苦悩に歪む。

そして、私は、トドメの一言を放ってやったのだ。


「神は、生きとし生けるものへと慈悲を与える。

そして、獣人を創り出したのもまた、神だろう」


神官長は瞳を閉じ、そして、私を見つめた。


「・・・そうですね。

公爵閣下は、今回の面会で何を望みますか?」


先程とは違い、落ち着いた声で聞いて来る神官長に、私も姿勢を正し、敬意を払う。


「私は、獣人を人と同等と認めてもらいたい。

彼らにも、私達同様の権利が欲しいのだ」


「そうですか。分かりました。

この件は、一度持ち帰らせて頂きたく存じます。

それと、獣人は公爵閣下の所にいるのですか?」


何を今更?と思ったが、『ああ』と返事をする。

すると、神官長は真剣な顔で問いかけて来たのだ。


「これはお願いになるのですが、一度会わせていただく事は出来ませんか?」


「何故?君達が、彼を傷つけないと言う保証はないだろう?」


私がそう告げると、先程の苦悩に歪んだ顔をしながら、静かに口を開いたのである。


「傷つける様な事は絶対に致しません。

その場に、公爵閣下も居てくださってかまいません。

・・・先ほど言われた言葉が、頭から離れないのです。

私は、獣人と話した事も、会った事もありません。

彼らと会って、人と同じ心や理性があるのだとしたら、私達が今まで信じて来たものは何だったのか・・・。

それを確かめたいのです」


「それは其方(そちら)の問題だろう?アルマは関係ない。

と言いたいが、話してみると、見えて来るものがあるかもしれないしな。

・・・アルマが嫌でなければ、会わせよう」


そう伝えると、手を胸に当て、頭を下げながら『ありがとうございます。よろしくお願い致します』と返して来たのであった。


そうして、話し合いは終わりを迎えた。


それから馬車へ乗り、一息吐いた瞬間に思い出してしまったのだ。

出鼻を挫かれて、すっかり忘れてしまっていた。


・・・陛下から借りた武器(日記)を全く使えなかった事に。


まあ、でも、良い成果を出せそうなので、良しとする事にしよう。


そして、公爵邸へと戻りアルマを呼ぶ。


「旦那様、お待たせ致しました」


「仕事中に悪いな。

今日、寺院へと行って来たんだが、アルマと会ってみたいと言っているんだ。

これは強制ではない。

嫌なら断る事が出来るから安心してほしい。

・・・どうしたい?」


「はい。

・・・あの、私は寺院の事をよく知りません。

何故、私に会いたいのでしょうか?」


その時に気付いたのだ。

アルマに何も話していなかった事に・・・。


「そうだった。アルマには話していなかったな・・・。

実は、獣人に対して、人と同じ権利を与えて欲しいと話して来たんだ。

まだ確かな事は言えないが、その話し合いの中で、君に会いたいと言っていたのだよ」


すると、アルマは目線を下にして考えている。

そして少しすると、私と目を合わせたのであった。


「旦那様、ありがとうございます。

私も寺院の方とお会いしてみたいです」


「分かった。

では、詳しい日時が分かり次第伝えよう」


そして話は終わり、アルマは仕事へと戻って行った。


明日、寺院へ手紙を書くか・・・。


そうして、ベンジャミンの長い半日が終わったのである。


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