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あれから10日が経った。
毎日王宮へと来ているが、未だに見つかっていない。
今日はウィルフォードも一緒に探せるとの事なので、学園が終わってから一緒に向かう事にしたのだ。
そして、帰り支度中にラウルが話しかけて来たのである。
「最近の妖精ちゃんは忙しそうだね?僕も何か手伝おうか?」
「ありがとうネフタリアさん。けれど、家の用事なので、余り公にはできませんの」
「そうなんだ。じゃあ、何か困り事があったら、いつでも頼ってね!」
まさか、心配されるとは思わなかった。
私は笑顔で『ええ。ありがとう』と返したのだ。
最近のラウルは前とは少し違う気がする。
彼への見方を、変えなければいけないわね・・・。
そう考えていたら、ウィルフォードがやって来た。
「フェアリエル、そろそろ行けるか?」
「ええ大丈夫です。お待たせしました」
私はメルティアとアグネスに挨拶をしてから、教室を出て王宮へと向かう。
今日は書庫を調べる予定だ。
やっぱり私だけでは、書庫への入室許可が、下りなかったのである。
その為、ウィルフォードがいる時には、書庫を優先的に調べる事にしたのだ。
禁書棚はウィルフォードが、それ以外を私が見ていく。
そうして時間が過ぎ・・・。
今日もやっぱり見つからなかったわね。
と思い、最後の本を手に取ったのだ。
それは古惚けた日記だった。
誰が書いたのだろうと思い、表紙を見たが、名は無い。
・・・取り敢えず読みましょうか。
そして見ていくと、本当に他愛もない、ただの日記だった。
でも面白いのが、今とは違う生活様式なのだ。
この日記は相当前に書かれた物なのだろう。
つい、面白くて読み進めると、途中から白紙になったのだった。
・・・やっぱり、日記って続かないのよね。私も二週間続けばいい方だわ。
そんな事を思い、パラパラと捲って本棚に戻そうとしたら、最後に何かが書いてある事に気付いたのだ。
・・・これは?
・・・・・・獣人!?
やった!!見つけたわ!
早速、ウィルフォードを呼ぶ。
そうして2人で図書室へと戻り、テーブルに日記を広げて、一緒に読む事にしたのだ。
・・・私達は文字を目で追って行った・・・
*ーーー*ーーー*ーーー*ーーー*ーーー*
この国で、獣人についての研究をしていたが、異端とされ、全ての資料を燃やされてしまった。
だから、日記の最終ページに忍ばせる事にする。
これを読んだ者。
時代が許すのであれば、是非、この事を公表してほしい。
世界は広く、様々な生命体が生息していると言う事を。
そして、私は昔、犬の獣人と会った事がある。
もちろん、この国ではなく、モンテリアール王国だ。
その国は【自由の国】と呼ばれ、人種や獣人への偏見がない。
ネイトピア王国と違って、獣人を調べる事も許されていたのだ。
それでも、獣人の数が多いと言う訳ではない。
私も10年滞在したが、彼女としか出会えなかったのである。
彼女は、人とは比べ物にならない程の、身体能力と勘の良さの持ち主だった。
そして、人の言葉を理解し、話せるのだ。
彼女の国は遥か南にある、緑生い茂る所だと言う。
様々な生物が共存する楽園・・・。
彼女は、その場所を【ティアラシア】と言っていた。
獣人は、やむを得ない理由がない限り、一生涯、ティアラシアから出る事はないと言う。
だが、そんな獣人にも例外がいる様で、それが彼女なのだと教えてくれた。
彼女は世界を見てみたいそうだ。
それから私は、言語についても聞いてみた。
何故、人と共通の言語を使うのかと・・・。
すると、遥か昔に、寺院の使者がティアラシアを訪れ、言語や教育を広めた、と言うのだ。
・・・これには驚いた。
私の研究を異端としたのは、寺院だからだ。
だからこそ、気が付いたのだ。
時代が変われば、異端とされる事も、無くなるのではと。
寺院の教えは【神が創り賜うた最高傑作が人間である】
この時代。
人より優れた身体能力や、生命力を持つ獣人は、教えの根底を揺るがし兼ねない。
だから、認められないと言われたのだ。
そして、私は思った。
きっとこの先、ネイトピア王国の獣人に関する記述は失われるだろう。と。
後世には、獣人がいる事さえ知らない。
そんな未来が、やって来るのかもしれない。
それに、私は彼女と話して分かった事がある。
獣人は私達と同じ、考えや心があって、人と何ら変わらないと言う事を。
彼等を虐げて良い理由など、何一つ無いのだ。
・・・この日記を最後まで読んでくれてありがとう。
読んでくれたついでに後一つ。
私の研究成果をモンテリアール王国で、同じ研究をしていた者に預けて来た。
研究が、どの様に残されているのか、将又、ネイトピア王国と同じく異端とされ、何も残っていないのか。
どちらかは分からないが、獣人の事が知りたいのなら、一度、訪れてみるのも、いいかもしれない。
日記は親愛なる友、ジェイデン・ネイトピアに託す。
きっと、後世に残してくれると、信じている。
*ーーー*ーーー*ーーー*ーーー*ーーー*
「・・・ウィル、読んだ?」
「ああ。
このジェイデン・ネイトピアは歴代王にいたな。少し待っていてくれ」
そう言ってウィルフォードは席を外し、歴代王の人名図鑑と地図を持って来たのだ。
「これを見てくれ」
開かれたページには、ジェイデン・ネイトピアの肖像画と年号、享年が書かれていた。
その他にも、何を成したかも書かれている。
時代を見ると、今から200年以上前だった。
「この日記は、そんなに前の物だったのね。あと、モンテリアール王国って、聞いた事がないけれど、ウィルは何か知っていたりするの?」
私が聞くと、ウィルフォードは地図をテーブルに広げてくれた。
「これは昔の地図なんだが、ここを見てくれるか?」
地図には私の知らない国が、いくつも点在している。
ウィルフォードが指した場所を見るとモンテリアール王国の名が書いてあった。
「あったわ。
・・・でもこの場所は確か・・・」
そう言うと、ウィルフォードが頷きながら、再度口を開いたのだ。
「そうだ。今のラピスライト合同国だよ」
「母の出身国ね!
・・・だから母は知っていたんだわ」
ウィルフォードは母が『他に何か、話していなかったか?』と聞いて来たのだ。
「いいえ。お母様も獣人の本を見たのは、随分前の事だし、先日ウィルに話した事が全てよ」
「そうか。これは一度、報告した方が良さそうだな。この日記は、俺が預かってもいいか?」
「ええ、もちろんよ。私もお父様に報告するわね」
そうして、両親に報告をし、後は兄を待つだけとなったのである。
・・・帰って来るまで、予定では後3日ね。
とそう思っていたのに、その日の夜に帰って来るなんて、全く、思いもよらなかったのだ。




