ウィルフォード視点
フェアリエルの様子がおかしい。
目も合わなければ、俺が近づくと怖がる様に、ビクッとする。
・・・何かしたか?
だが、心当たりがない。
好きだから仕方がない事だと分かってはいるが、不安が拭えない。
それとも、ラウルが彼女に何かしたのか・・・?
アリステリアス王国の本を読んでいたしな。
これは、確かめなくてはいけない。
そして、今日は彼女とのお茶会の日だ。
悶々と考えながら待っていると、フェアリエルがやって来たのだった。
彼女を見ると、相変わらずの俯き加減だ。
挨拶を交わすが、その先が続かない。
俺は、昔に戻ってしまったのではないか?と錯覚してしまう程に、心が疲弊していた。
そして、思わず口から出てしまったのだ。
「俺は、何かしてしまったのだろうか?」
とその時、フェアリエルと目が合った。
「違うのよ。ウィルが何かしたとか、そういうのではないの」
「では、ラウルか?」
「ネフタリアさん?あの方は関係ないわ」
フェアリエルの顔を見るとラウルは本当に関係ない様だ。
じゃあ、どうして・・・。
俺はそのままの勢いで問いかけた。
「どうして俺を避ける?」
「ごめんなさい。私の態度はウィルを傷付けていたわよね。
その・・・。
ウィルに対する気持ちに変化があって、どう接すればいいのかが、分からなくなってしまったの。
私も気付いたばかりで、気持ちを持て余しているのよ。
だから、少し時間をもらえると嬉しいわ」
そう言われて、俺の心はザワついた。
だが、肝心な事を確認しなくてはいけない。
「・・・分かった。
俺の事が、嫌いではないんだな?」
「もちろんよ。嫌いな訳ないわ」
その言葉を聞いた瞬間、歓喜に沸いた。
もしかしたら、フェアリエルは俺を異性として、意識し始めてくれているのかもしれない。
ダメだが期待してしまう。
・・・嬉しい。
飛び上がりたい程に嬉しいが、彼女の前だ。
姿勢を正す程度に留めたのだった。
・・・でも、ダメだ。
顔がニヤける・・・。
・・・はぁ。本当に重症だな。
ずっと、俺の気持ちの100分の1でもいいから、気持ちに応えてほしいと思っていた。
・・・それが、叶うかもしれない。
感激とは、まさにこの事だろう。
そう喜びに浸っていたら。
『なんか、ウィル本人に話したらスッキリした気がするわ』と笑ってくれたのだ。
久しぶりに見た彼女の笑顔に、思わず見とれてしまった。
そして、何も話さない俺に、彼女は『ウィル?どうしたの?』と可愛らしく聞いて来たのだ。
「ああ、すまない。思いに耽ってしまった。
フェアリエル?
今度、街へ遊びに行かないか?二人で行った事、ないだろう?」
「そう言えば、そうね。
ええ。是非一緒に行きましょう!」
そうして、和やかに茶会は終了したのだ。
街デートの約束ができた事に大満足のウィルフォードであった。
【ラウル視点】
妖精ちゃんが全然相手にしてくれない。
それに、なんか警戒されている様な気さえする。
攻め方を変えた方がいいかな?
まずは友達として、心を開いてもらう所から始めるか。
そんな事を考えていたら前からミレット・バンサム譲が歩いて来た。
うわっ!
隠れたいのに隠れる場所がないじゃないか。
・・・参ったな。
僕には最近悩みがある。
バンサム譲に気に入られてしまったが為に、何かにつけて話しかけて来るのだ。
普通の話なら別に良い。
だが、大体が『私を好きになって欲しい』と言ってくる。
はっきり言って迷惑だ。
すると、やっぱり目が合ってしまった。
「こんにちは。ラウルさん」
「ああ。こんにちは」
「今日はお一人ですか?」
「そうだね。そろそろ帰る所だよ」
「では、途中まで、ご一緒しても良いですか?」
「・・・うん。途中までね」
二人で廊下を歩く。生徒達は皆帰ったのか、誰もいない。
・・・沈黙が続く。
そして、最初に口火を切ったのはバンサム譲だった。
「私の事、少しは好きになってくれましたか?」
・・・出た。
これを毎回聞かれるのだ。本当にうんざりする。
キッパリ言った方がいいよな。
「僕はね、妖精ちゃんが好きなの!だから、君の事は好きにはならないよ」
「フェアリエルさんには婚約者がいますよ?」
「だから何?僕の国では、そんなの関係ないよ」
そう伝えた僕を見て、不思議そうに首を傾げている。
なんだろう。
すごく不気味に見えるのは・・・。
と、そう思っていたら、バンサム譲が口を開いたのだ。
「いいえ。ここはネイトピア王国です。ここにいると言う事は、この国の決まりを守らなくてはいけません。
そうしないと、秩序が乱れます。
フェアリエルさんを好きなら、どうぞ、アリステリアス王国で口説いてください」
いつも言っている事は滅茶苦茶なのに、こういう時には、筋道立てて話してくる彼女に腹が立った。
「余計なお世話だよ!
・・・はぁ。
君も大概しつこいね。こんな事言われても、まだ僕の事が好きなの?」
「はい!なので、私を好きになってください!」
「好きにはならないよ」
「私、いつまでも待ちます!ラウルさんがフェアリエルさんを諦めるまで!」
「諦めないし!もし諦めたとしても、君を好きにはならないよ」
押し問答が続く事に、嫌気がさし始めた頃、彼女が笑顔で言い放ったのだった。
「大丈夫ですよ!気持ちは変わるものです!」
・・・あれ?
「・・・何処かで聞いた様な気がするな。
まぁ、とにかく。
君の事は考えられないから。ごめんね」
よし、ここまで言えば大丈夫だろう。
そう高を括っていたら、バンサム譲が恐怖の一言を告げたのだ。
「そうですか・・・。
では、もっと推して参ります!」
「いや、いいってば!!
・・・もう、話を聞いてよ」
そう、ラウルは実感した。
一方的な好意がどれ程、迷惑に感じるかを。
そして、確かに実感したのだが、自分を顧みないのがラウルと言う人なのだった。




