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今日は私の誕生日。
16歳になりました。
そして、学園がお休みなので家でゆっくりと過ごしているのだ。
最近、色々あり過ぎてキャパオーバーなので、今日くらいダラダラしていても問題はないだろう。
・・・心の平穏を取り戻さなければ。
とその時、サーシャが大きな箱を抱えてやって来たのだ。
「お嬢様。ウィルフォード殿下からの贈り物が届いております。
どちらに置きましょうか?」
「ありがとう。では、そこのテーブルに置いてちょうだい」
・・・いったい何かしら?
昨日会った時には何も言っていなかったわよね?
私は早速、開けてみる事にした。
包み紙を開き、箱を開けると、出てきたのは、銀色の瞳がピンクのウサギの縫いぐるみだった。
ウサギの瞳がキラキラと輝いている。
よく見てみると。
・・・これは?
ピンクダイヤモンドじゃない!?
大粒なのが2つ埋め込まれていた。
そして、鼻にはアメジストが付いている。
もしかしなくても、誕生日プレゼントよね?
私は手に持っていた縫いぐるみを一度テーブルに置き、箱の中を覗いた。
すると、一緒にカードも添えられていたのだった。
【誕生日おめでとう。何を送ればいいのか悩んだが、気に入ってもらえると嬉しい】
実は、ウィルフォードと話す様になってから、誕生日の話をした事がある。
その話を覚えていたのだろう。
これは、お礼状だけでいいのかしら?
でも、返礼品を付けるのも変よね・・・?
悩んだ末、ウィルフォードの誕生日に贈り物をしようと決めたのだ。
この世界で初めての誕生日プレゼント。
・・・とても嬉しい。
思わず、縫いぐるみを抱きしめたのだった。
【その様子を見ていたサーシャは・・・】
お嬢様がとても喜んでいらっしゃるわ。
・・・良かった。
最近、悩み事が多いのかと心配していたのだ。
主人の喜ぶ顔が見られてホッとしたのであった。
「サーシャ?ウィルにお礼状を書きたいの。準備をお願いね」
「はい。すぐに準備致します」
何て書こうかしら・・・。
まずは、お礼よね!
それと、とても嬉しい事を書きましょう。
最後に縫いぐるみを大切にする事も忘れずに・・・。
カキカキカキ・・・できたわ!
「サーシャ、早速出してもらってもいい?」
「はい。お預かり致しますね」
その手紙は、サーシャが早馬で出してくれたので、すぐにウィルフォードの元へと着いたのだった。
「ウィルフォード様、フェアリエル様からお手紙が届いております」
「ああ。ありがとう」
そのまま受け取り、すぐに読む。
喜んでくれた様だ。
よかった。
そして、最後の一文に目を止めたのだ。
【縫いぐるみと毎日一緒に寝ますね】
あの縫いぐるみが、羨ましいと思ってしまった事を誰にも言えないウィルフォードであった。
それから休みはあっと言う間に終わり、今日からまた学園だ。
昨日はプレゼントで浮かれていたが、ウィルフォードと会って普通に話せるかどうか、不安になってきている。
そうして学園へ向かおうと、食事室からエントランスへ行こうとした時、兄が話しかけて来たのだ。
「エル、少しいい?実は来月の三週目の休みに剣術大会があるんだが、応援しに来てくれないかい?」
私は行く事を伝え、メルティアとアグネスを誘っても良いかを兄に問いかけた。
「もちろんだよ。でも剣術は女性から見たらどうなんだろう・・・?
楽しんでくれればいいのだが。
彼女達が良ければ、誘っておいで」
「分かりましたわ。ではお兄様、行って参りますね」
「ああ、気を付けて行っておいで」
そうして、馬車で揺られる事30分、学園へと到着した。
馬車を降り、クラスへと向かう途中、ウィルフォードが前を歩いていたのだ。
緊張する気持ちを落ち着かせようと、深呼吸を繰り返してから挨拶をする。
「ごきげんよう。ウィルフォード様。昨日は素敵なプレゼントを、ありがとうございます」
「おはよう。気に入ってもらえたのなら、嬉しいよ。
・・・それと、昨日は、一緒に寝たのか?」
!?
そうだった。浮かれすぎて手紙にそんな事を書いたわ。
・・・恥ずかしい。
「あ、はい。
・・・一緒に寝ました」
とその時、お呼びでない奴が割り込んで来たのだ。
「おはよー!妖精ちゃんと婚約者さん?
なんか、すごい話をしているね。
昨日、二人は一緒に寝たの?」
「は?・・・ばっ!?
そんな訳ないでしょ!!朝からなんて事言うの!止めて頂戴!」
本当に嫌だ。なんてデリカシーがない男なのだ。
「朝じゃなきゃいいんだ?」
「良くない!!」
私の頭の中には【毅然と】の文字はすでに消え去り、ムキになって、顔が赤くなってしまう。
そして、そんな私を見たウィルフォードが苦言を呈してくれた。
「あー、君。フェアリエルを余り揶揄わないでくれるか?困っているだろう」
「ごめんね。ムキになる妖精ちゃんが可愛らしく
て。ついつい」
そう相変わらず、悪びれも無く口だけで謝っている。
だが、それを聞いたウィルフォードの顔が変わった。
「君さ、フェアリエルの友達だから、大目に見てはいるが、友達の域を超える様なら容赦はしない」
「そんな怖い顔しないでよ。
でも、僕の国の文化はもちろん知っているだろう?
妖精ちゃんが気になるのは事実だけど、今すぐに、どうこうしようとは思っていないよ。
ね?安心して!
だから、婚約者さん?僕とお友達になってくれない?」
「・・・・。」
・・・すごい事になっているわ。
私はここにいて、いいのかしら・・・?
「・・・分かった。
私の事はウィルフォードと呼んでくれ」
「分かってくれてありがとう!
じゃあ、僕の事はラウルと呼んでね!
これから、よろしく」
そう言って、2人は握手をしたのだった。
それからクラスに着いて、アグネスとメルティアの所へと行く。
まだ、授業も始まっていないのに、精神的に疲れてしまった。
・・・って、そうだ!
こんな事で疲れている場合はない!
剣術大会の事を聞かないと。
私は2人に兄の剣術大会の件を話したのだ。
すると、2人は『もちろん行くわ』と返答をしてくれたので『詳しい事は後日また伝えるわね』と言い、先生が来た為、席へと戻ったのである。
授業が終わって放課後となり、今日もウィルフォードと一緒に図書室へと向かう。
何を話そうかしら・・・。
朝はラウルが乱入して来たので、緊張が紛れたが、今は2人きりだ。
プレゼントの話は朝にしてしまった。それに、一緒に寝ている件を掘り返すのも良くないわ。
色々と考えていたら、ウィルフォードが話題を振ってくれたのだ。
「王家直轄地に海があるのだが、海産物も凍らせる事ができるのか?」
「そうね。大丈夫だと思うわ。マジッククレーが開発できたら、試してみましょう」
そうして、やっと図書室に着いた。
「瞬間冷凍だったか?氷のみで大丈夫なのか?」
「いいえ、より早く冷やす為に風も使おうと思うの」
「分かった。では、早速調べてみようか」
そして二人で本を読み始めたのだが、その後、特に会話もする事なく、時間となり今日は終わりとなったのだった。
フェアリエルは気まずい雰囲気から解放される事に少し安堵してしまう。
そして、そんなフェアリエルの事をウィルフォードがジッと見ていた事には気付いていなかったのだ。




