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王子の寝た子を起こしたら、夢見る少女では居られなくなりました!  作者: こさか りね
本編

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28

ラウルの案内を手っ取り早く済ませて、図書室へと向かう。


結局、妖精ちゃん呼びを()めさせる事は出来なかったのだ。


それにウィルフォードにも迷惑をかけてしまった事に罪悪感を覚える。


・・・早く行かなくては。


急く気持ちを(おさ)え、淑女として恥ずかしくないくらいの速足で歩く。


そして図書室へ入ると、いつもの席でウィルフォードが本を片手に読んでいた。


「ウィル?待たせてしまってごめんなさい。さっきは間に入ってくれてありがとう」


「ああ。案内はどうだった?」


眉間に皺を寄せて聞いてくる。


これは、怒っているわ・・・。


「大丈夫だったわ。迷惑をかけてごめんなさい」


「いいや、迷惑じゃない。

君が困っていたら助けるのは当たり前だ。

それよりも、いつ知り合ったんだ?

妖精と呼んでいたが、何かしたのか?」


・・・どうしよう。

言いたくないが、言わない訳にはいかない。

私は黒歴史を少し控えめに話す事にした。

   

「実は、私が庭園で口ずさんでいたら、留学手続きをしに来た、ネフタリアさんに話かけられたのよ」


話を聞いていたウィルフォードが、少し考えてから再度聞き返して来る。


「・・・そうか。

・・・全速力で逃げた、とはなんだ?」


・・・!?

え?聞こえていたの!?


ウィルフォードの席は結構離れていたから、まさか聞こえていたとは思わなかったのだ。


「えっと、急に話しかけられてビックリしちゃったのよ。

それに、歌っている人に話しかける人って余りいないでしょう?だから、その、おかしな人かと思ったの。

・・・私、失礼よね?」


そう伝えると、ウィルフォードは目を丸くした後、笑いを堪える様に口を開いたのである。


「・・・くくっ。

おかしな人って。ははっ。そんな事があったのか。

確かに驚くよな」


「笑い事ではないのよ!声をかけられた時は怖かったんだから」


「ああ、ごめん。

いや、俺の知らない所で密会しているのかと思ったよ」


「みっ!?密会!?

ちょっとやめて頂戴!そんな事ある訳ないでしょ!」


会話をしているうちに、いつの間にか、ウィルフォードの怒りは収まったようだ。


「そうだな。悪かった。俺が怒っていると思ったから、アイツを案内しに行ったんだろう?」


私はウィルフォードの顔が怖かった事を伝えると『案内中に何か言われたりしたか?』と難しい顔で聞き返してくる。


「友達になって、と言われたわ」

「・・・それ以外は?」


それ以外、とは?


質問の意図が分からず、『特にないわよ』と答えるに留めたのだ。


「そうか。友達はいいが、それ以上は止めて欲しい。

・・・すごく嫌なんだ。

もし、アイツに何か言われても毅然(きぜん)とした態度を取るって約束してくれないか?」


それ以上とは?と思ったが、不安そうにしているウィルフォードを見たら、肯定しか出来なかった。


「もちろんよ!ウィルを嫌な気持ちにさせる事はしないわ。約束する!」


「ありがとう。ほっとしたよ」


そう言って微笑んだのであった。


絶対にあの人に屈してなるものですか!

そう決意を新たにするのだった。



【次の日】


学校へ行くと、『昨日は大丈夫だったの?すごく不穏な空気がしていたけれど』とメルティアが心配そうに話し掛けて来たのだった。


「大丈夫よ。私、ネフタリアさんには負けないわ!」


「えっと、何かを競っていたのかしら?」


「そうじゃないんだけど、負けられないのよ」


そう答えた私に、メルティアもアグネスも、『程々にね、私達も応援するわ』と言ってくれたのだ。


と、その時。


「妖精ちゃんおはよー!」


噂をすれば出て来たな!

私は臨戦態勢(りんせんたいせい)に入る。


「あら、ネフタリアさん、ごきげんよう。

そして、(わたくし)はクリーヴランドですよ」


「妖精ちゃんのお友達?これからよろしくね!」


・・・・・・。


「こちらこそよろしくお願いします。

あの、何故エルを妖精ちゃんと呼ばれるのですか?」

メルティアが疑問に思ったのか、ラウルに聞いている。


・・・え。

ここで黒歴史を暴露されるの?


周りを見たら、まばらだが、クラスメイトがいるのだ。


・・・これはマズイ。


私はラウルが話し始める前に口を開いた。


「いや、あの、昨日そう呼びたいって言われたのよ。ね?」


私が話の流れを持って行くと、ラウルが笑顔で答えてくれた。


「そうだね。初めて会った時、妖精の様だったんだよ!すごく綺麗でビックリしたから話しかけたんだ。

名前は聞けなかったから、妖精ちゃんと呼んでいるんだよ。

だから、僕の中では、もう妖精ちゃんなんだよね。今さら変える気はないよ!」


変える気はないと、みんなの前でゴリ押しして来たのだ。


「そうだったのですね。確かにエルは妖精の様に可愛らしいから納得ですわ!」


・・・メル!納得しないで。

そしてアグネスも頷かないで頂戴。


でも、何とかなったんじゃない?

アニソンを全力で歌っていたのがバレなくて、本当によかった・・・。


思わず、ふぅっと心の中でため息が出てしまった。


そうして、ひと段落した時にウィルフォードがやって来たのだ。


私は、挨拶に行く事を(みな)に伝えて、その場を離れたのである。



【離れた席での会話】


「妖精ちゃんはさ、婚約者と仲良いの?」

「そうですわね。最近は良く一緒にいますよ」


メルティアはフェアリエルの背中を眺めながら答えた。


「ふーん、そうなんだ。相思相愛なのかな?」


(わたくし)は、そう思っているのですが、エルがイマイチ理解していない様で。

なので、見守っているのですよ。

ネフタリアさんも、あまり口出ししないでくださいね」


そう言って釘を刺したのだが・・・。


「へぇ。いい事を聞いたよ。ありがとう。じゃあまたね!」


そう言い残して去って行くラウルの背を見ながら、メルティアとアグネスは、何がいい事なのか、がよく分からなかったのだった。


そして授業が終わり、ウィルフォードと一緒に図書室に行こうと思ったのだが、ウィルフォードが先生に呼ばれた為、一人で先に行く事にしたのだ。


廊下を歩いていたら背後から聞き覚えのある声に呼び止められたのである。


「クリーヴランドさん!お久しぶりです」


振り向くと、ミレットが小走りに駆け寄って来た。


「あら、バンサムさん、ごきげんよう。お元気でしたか?」


「ええ。同じクラスになれなくて残念でした。

あの、私の事はミレットと呼んではくれませんか?」


「では、(わたくし)の事もフェアリエルと呼んでください」


そう伝えると嬉しそうに笑う彼女を見て、私も笑みを(こぼ)したのであった。


「それでは、(わたくし)は図書室に行くので、またね。ミレットさん」


「はい!フェアリエルさん、またよろしくお願いします」


そう言って、私達は別れたのであった。


それにしても、ミレットさんはいつも元気ね。


とても可愛らしい。

乙女ゲームだったら彼女がヒロイン役にピッタリだ。


そんな事を考えながら、今日も図書室へと向かうのであった。


そして図書室に着き、ガボの事を思い浮かべる。


鮮度を失わず長期間保存できれば、自領で消費できない物を他領へと流通する事が出来るのよね。


・・・やっぱり、冷凍する事かしら?


この国は食べ物を凍らせる習慣がない。

氷は必要な時にマジッククレーで作れる為、冷蔵庫はあるが、冷凍庫は無いのだ。


瞬間冷凍のマジッククレーを作成して、断熱ケースに取り付ければ、持ち運びも可能よね?

しかも、アイスクリームも保存できるから、いつでも好きな時に食べられるわ!


・・・なんて素敵なの!


早速、氷と風の本を見てみましょう。


そうして、本を探しに行き、席へ帰るとウィルフォードが既に座っていたのだった。


そして私は、先ほどの考えをウィルフォードに伝えたのだ。


「ガボか・・・。

確かに日持ちしないと聞いた事がある。

俺は食した事がないから、どんな物かは知らないが、ガボ以外にも、自領でしか出回らない物が流通可能となれば、途轍(とてつ)もない利益を生み出すな。

その、瞬間冷凍とは本当に鮮度が落ちないのか?」


「そうね。全ての物が大丈夫なのではなく、物によると思うの。

ガボの場合はそのまま食べる物ではないから、大丈夫だと思うけれど、キュウリとかは難しいと思うわ」


「・・・なんでそんな事を知っているんだ?」


「・・・え?

えーっと、夢!

そう、夢の中で見たのよ!

・・・お告げかもしれないじゃない?

試してみる価値はあると思うの!

なので、氷と風の本を持って来たのよ」


ウィルフォードがジッと私を見ている。


沈黙が緊張を(あお)る。

・・・騙されては、くれないかしら?



「・・・そうか。

君が言うと、あり得ない話ではない様な気がしてきたよ。

では、次はこれを作るんだな?」


ふぅ、納得してくれてよかった。

だから私は、これからのビジョンをウィルフォードに伝えたのだ。


「ええ。世の中をもっと快適に出来ればと思うわ!」


そう伝える私を見て、ウィルフォードは眩しい物を見るかのように目を細め口を開く。


「・・・フェアリエルは、すごいな。

以前語っていた夢を聞いて、可愛らしい少女の夢だと思っていた。

けれど今は、目的の為に日々変わって行く君を見るのが、俺はとても好きだよ。

君の考えや、行動力を、とても尊いものだと思っている」


()()()()と言う顔でウィルフォードが伝えてくれる。


・・・これは、本格的にマズイかもしれない。


私の中で、ウィルフォードの存在が、目を逸らしたくても、逸らせないぐらいに大きくなって来ている。


そう、私は、彼の事が好きなのかもしれないという事に・・・。



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