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今日から2年生になります!
いつもより早くに家を出て、クラス表を見に来たのだ。
緊張するわ・・・。
ABCどれかしら?
みんなも一緒なら嬉しい。
そう思いながらAクラスから順番に目で追って行く。
すると・・・
・・・・あった!
2年もまたBクラスだわ。
みんなのクラスも確認すると、2人とウィルフォードも同じクラスだったのだ。
私はルンルン気分でクラスへ行くと、既にウィルフォードが席に座っていた。
「ごきげんよう。ウィルフォード様。
一緒のクラスになれて嬉しいですわ。よろしくお願い致します」
「おはようフェアリエル。私も嬉しいよ。
これからは、クラスメイトとしてもよろしく頼む」
笑顔で挨拶をしてから自分の席に着いた。
その後はアグネス、メルティアがやって来て、喜びを分かち合ったのだった。
それから暫くして、担任の先生が男子生徒を連れてやって来たのだ。
転校生だろうか?
そこには、黒髪金眼の美青年が立っている。
あれ?
あの人、どこかで?
・・・っって!!?
いつかのヤバい奴じゃない!?
なんでここに・・・。
見つかったら色々な意味でヤバい。
・・・・隠れなきゃ!
私は、前傾姿勢で前の人の陰に隠れたのだ。
すると、先生からの紹介が始まったのである。
「今日から皆さんと一緒に学ぶ事になります。
ラウル・ネフタリアさんです。
では、一言お願いします」
彼は、ネクタイを片手で整え、手を後ろで組み直してから話し始めた。
「初めまして。アリステリアス王国から留学で来ました。
ラウル・ネフタリアです。
分からない事など、教えて頂ければ嬉しいです。
皆さん、よろしくお願いします。
———うん?あれ?
・・・妖精ちゃん、じゃない?」
ラウルは教壇から身を乗り出してコチラを見ている。
そんな様子を見ていた先生が問いかけたのだ。
「ネフタリアさん?
クリーヴランドさんとお知り合いですか?」
「はい。留学手続きの時に知り合いになりました」
!!?
一言も話していないじゃない!
そんなの知り合いじゃないでしょ!!
と、私がそう思っている事は、誰にも知られる事はなく、話はどんどんと進んでいったのだった。
「では、クリーヴランドさんに後程、学園の案内役をお任せしますね。
では早速、今年度の教科書を配ります。落丁などありましたら、声をかけてくださいね」
あまりの出来事に、私は思考の海に沈んだ。
なんでこんな事になった・・・?
しかもこの人は、夢見る少女だった時の私の計画を間近で見ていたのだ。
つまり、知られたくない黒歴史を知っている。
私があの計画を実行した時、噂にならなかったのは、皆、口を噤んでくれたのだろう。
・・・だが、この人は違う。
だって、ヤバい奴なのだ。
私の黒歴史をペラペラと、なんの躊躇いもなく喋るだろう。
しかも、妖精ちゃんとか・・・。
訳の分からない、あだ名で呼んでいる。
・・・これ、止めさせないといけないわ。
「———ちゃん、聞いてる?」
・・・ん?話しかけられている?
「ねーねー。妖精ちゃん?」
!!?やばい!?
「あの、私はフェアリエル・クリーヴランドと申します。
妖精では、ありませんのよ?」
「やっと声が聞けたね。
前は全力疾走で逃げられたから、今回も逃げられちゃうのかと思ったよ」
・・・・・・。
・・・この人、わざと言っているわね?
どうしたもんか。と困っていたら、ウィルフォードと目が合った。
そして、席を立ちコチラへとやって来くる。
「失礼。
私はウィルフォード・ネイトピアと言う。何か困り事があれば、遠慮なく聞いてほしい。そして、フェアリエルは私の婚約者なので、個人的な相談は控えていただきたい」
「妖精ちゃん、婚約者いたの?
・・・ふーん、そっか。その方が面白いよね」
と笑顔で答えたのだ。
・・・え?何が?
・・・やっぱりこの人おかしい。
それを見兼ねたウィルフォードが提案したのだった。
「では、案内は私がしよう」
「えー!先生が妖精ちゃんに頼んだんだから、妖精ちゃんが案内してくれる?」
見ると、ウィルフォードの顔から表情が抜けていた。
これは相当怒っているわ。何とかしないと。
「ウィルフォード様、先生に頼まれたので、私、ご案内して参りますわ」
「・・・そうか。
では、先に図書室にいる」
そう言って、図書室へと向かって行った。
その様子をメルティアとアグネスが心配そうに見ている。
私は大丈夫だと分かる様に頷いて見せたのだ。
そしてラウルに向き直る。
「早速ですが、行きましょうか。
それと、私の事はクリーヴランドとお呼びください」
「すごく他人行儀だね。この学園に君しか知り合いがいないんだよ?
せっかく、楽しい留学になると思ったのに、とても残念だよ」
そうやって、とても寂し気に言うではないか。
ちょっと、壁を作り過ぎたかしら?
せっかく留学しに来てくれたのに、あんまりよね。
「あの、友達になりたくないとか言っているのでは、無いのですよ?」
「じゃあ友達になってくれる?」
そう聞かれると断るなんて事はできない。
「はい。よろしくお願い致します」
「そう。
・・・言質は取ったよ!
友達なら愛称で呼んでもいいよね?
でも婚約者がいるなら名前では呼べないなぁ。
だから、やっぱり、妖精ちゃんにしよ?」
間違ったかもしれない。
後悔先に立たずだ。
機嫌が良さそうなラウルを唖然と見ながら、そう思ったのであった。
【ウィルフォード視点】
今日から新しいクラスになる。
フェアリエルと一緒のクラスになりたい。
そうすれば、いつでも彼女の顔が見られる。
ウキウキしながら早めに学校へ行き、クラス表を見た。
目で追って行くと、フェアリエルはBクラスだったのだ。
俺は、どこにいる?
・・・・!!!
嬉しい!
気持ちが急き早歩きでクラスへと入った。
辺りを見回すが、フェアリエルはまだ来ていないようだ。
前Aクラスの友人と軽く話し、席に着く。
ソワソワしていたら、フェアリエルがやって来たのだ。
今日もとても可愛らしい。
俺には、フェアリエルだけが輝いて見える。
そして、彼女と目が合い、微笑んでくれたのだ。
・・・毎日これを味わえるのか。
嬉し過ぎて感極まってしまった。
フェアリエルは俺と挨拶を交わし、自分の席に着く。
みんなの前では、ウィルと呼んではくれない。
少し寂しいが、我慢しているのだ。
それから、担任が転校生を伴ってやって来た。
自己紹介に何となく耳を傾ける。
・・・アリステリアス王国か。
マジッククレーの原産地だったな、とそんな事を考えていたら。
「——妖精ちゃんじゃない?」
・・・なに?
見ると転校生はフェアリエルをジッと見ている。
なんだ?知り合いか?
・・・いつ、知り合った?
フェアリエルを見ると、机に突っ伏していた。何か考え事をしているのか、ずっとそのまま動こうとしない。
その後は教科書が配られ終わりとなったのだ。
そして、転校生はしきりにフェアリエルに話しかけている。
とその時、彼女と目が合った。
困っている。そう思い彼女の所まで行ったのだ。
挨拶をし、彼女が俺の婚約者だと知らしめる。
だが、彼はそれを面白いと言った。
フェアリエルは、分かっていなかったが、アリステリアス王国は婚約者がいようと関係ない。
遠慮などしない文化なのだ。と思い出した。
だから、俺が案内すると言ったのに、彼はいらないと言ってきたのだ。
どうしてくれよう、そう思っていたら、彼女が行くと言い出した。
——何故?彼の思うツボだろう?
確かに、彼女はアリステリアス王国の文化を知らない。
けれど、それに少し腹が立ってしまった。
俺は冷静になる為に、先に図書室へ来たのはいいが、逆に落ち着かない。
無理にでも付いて行けばよかったか?
2人で行かせるべきではなかったのでは?と頭を過る。
そうしてフェアリエルが来るまで、意味もなく本を捲りながら、悶々と考えるウィルフォードであった。
【ラウル視点】
僕はラウル・ネフタリア。
アリステリアス王国で父が公爵位を賜っている。
僕は長男だから、このまま行けば将来は公爵なんだよ。
そして今回、ネイトピア王国に留学する事となったんだ。
もちろん、これには訳があるんだけど。
・・・まぁ、その内に話すよ。
クラスに案内され自己紹介をしていたら、あの時の女の子がいたんだ。
運命を感じたね。
しかも、必死に僕の目に映らない様にしているんだよ?
すごく目立つ髪色しているのに。
・・・ははっ。可愛いよね!
名前は知らないが、僕の中で、妖精ちゃんと呼ぶ事にしたんだ。
その妖精ちゃんが学園を案内してくれるんだって!
僕は嬉しくなって、話しかけたんだけど、全く返事をしてくれない。
もしかして、聞こえてないのかな?
そうして何回か話かけていたら、やっと気づいてくれたんだ。
彼女は自己紹介をしてくれたが、今さら家名で呼ぶ気はさらさらない。
そう思っていたら、この国の第三王子が目の前に現れたんだよ。
しかも、妖精ちゃんの婚約者だと言うんだ。
・・・でも、おかしいな。
正式に公表されてはいないはずだ。
まぁ、公表されていたとしても、関係ないんだけどね!
僕の国では、何よりも気持ちが大事なんだ。
他国では【情熱の国】と呼ばれているんだって!
それに、恋に障害は付き物でしょ?
・・・まあ、まだ好きかは分からないけど、確かめる為にも俄然やる気になるよね!
さぁ、これからが楽しみだな!




