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次の日
食事中にアグネスが今日の予定を伝えてくれた。
「今日は湖に行こうと思うの。
みんなでピクニックしない?」
「楽しそうね!ピクニックは久しぶりだわ」
私が答えたその時、リュカディが『あの』と遠慮がちに話しかけて来たのである。
「ぼくも、いっしょにいって、いいですか?」
もちろんNOと言う訳がない。
可愛いリュカディが居てくれると、こちらも癒される。
私とメルティアは『是非に』と返事をした。
すると、リュカディが『リュカで、だいじょうぶです。ねえさまの、おともだちと、いっしょにあそべて、うれしいです。よろしくおねがいします』と頬を赤らめて一生懸命に伝えてくれたのだった。
・・・・可愛いが過ぎる。
撫でまわしたい・・・。
私は、撫でまわしたい欲望に打ち勝ち、アグネスの母がピクニックセットの手配をしてくれたので、早速出発したのだ。
「お母様、行って参ります」
「気を付けて行ってらっしゃい。
リュカ?皆さんにご迷惑をおかけしては駄目よ。
皆さんも是非、楽しんで来てくださいね」
そう言って笑顔で送り出してくれたのである。
馬車で揺られる事30分。
エメラルドグリーンの色をした湖が見えて来た。
・・・すごく綺麗だわ。
馬車を降りて、メイド達がピクニックの準備をしてくれている間に、周りを散策する事にした。
私は湖に近づき、中を覗き込む。
水深は、そんなに深くないのね・・・。
とその時、アグネスが口を開いた。
「これがガボよ」
そこには、ただの草が生えている。
・・・ん?
まだ実がなってないのかな?
メルティアも同じ事を思った様で、アグネスに聞き返したのだ。
「・・・これから実がなるの?」
「ガボはね、朝にしか実がならないの。今は実が落ちてしまったのよ。
朝に収穫した実も、その日に使わないと変色してしエグ味が出てしまうから、すぐに使わないとダメなのよね」
昨日、日持ちしないと聞いたが、まさか一日も保たないとは思わなかった・・・。
私が思案していると、準備を終えたメイドが話しかけてきた。
「皆様、準備が整いました」
そして準備された場所へ行くと、シートが敷かれ、その上にクッションやテーブルが置かれている。
テーブルにはお茶やサンドウィッチなどの軽食が用意されていた。
綺麗な湖を見ながらのお茶は格別だわ。
私はアグネスに、この休み中の事を聞いてみたのだ。
「アグネスは実家に帰ってゆっくりできた?」
「ええ。久々にのんびりとさせてもらったわ。やっぱり、賑やかな所より、こちらの方が合っているみたい」
そう言って嬉しそうに笑っている。
メルティアは辺りを見回してからにこやかに口を開く。
「ここは、時間がゆったりと感じられて落ち着けるものね」
とその時、リュカディがアグネスに問いかけたのである。
「あの、ねえさま?がくえんは、ゆっくりできないのですか?」
そう言われて、アグネスはハッとしたのか、リュカディに向き直り、話し始めたのだ。
「そんな事はないのよ。ただ、気持ちにゆとりを持てる時間が少ないと感じるのは確かだけど、それよりも大切なお友達と一緒に過ごせるのは、とても楽しいわ。
だから、リュカが大きくなった時、学園に通う事を楽しみにしてもらえたら、と思っているのよ」
「はい。ぼくも、たいせつな、おともだちをつくりたいです」
「リュカ君にもいっぱいお友達が出来るわ」
私はそう伝え、その後の楽しいピクニックは終わったのである。
【その日の夜】
3人でパジャマパーティーもとい、ネグリジェパーティーをした。
メルティアは、昨日話してくれた、兄の事をアグネスにも話していた。
アグネスも『応援するわ』と言って、みんなで初めての恋バナが出来たのだ。
そして最後の夜は、お菓子を食べながら、夜遅くまで楽しく過ごしたのであった。
【三日目】
楽しい時間は、あっという間に過ぎる。もう帰る日になってしまった。
アグネスがお土産屋さんに連れて行ってくれると言うので、みんなで村へと向かっている。
小さな村だが、観光客も少なくなく、宿泊施設や食事処、お土産屋さんが揃っていた。
この辺りは牧場が多いので、牛乳を使ったお土産が多くみられる。
アグネスはお土産屋に入ると『3人で何かお揃いの物を買わない?』と誘ってくれたので、私達はもちろん同意したのだ。
そして、3人で良い物がないかを探す事にする。
私は、文房具売り場に行く事にした。
棚を上から順に眺めていたら、パッと目に留まったのだ。
それを手にしてみる。
ハンドル部分に牛、豚、羊の絵が描いてあるペーパーナイフだった。
カラーもネオングリーン・ピンク・レモンイエローでとても可愛い。
2人にも声を掛けて聞くと、『可愛くて実用的でいいわね』と言ってくれたのだ。
メルティアは羊、アグネスは豚、私は牛にした。
みんなでお揃いって気分が上がる!
その他には、家にお菓子、ウィルフォードには牛の絵が描いてあるペンを買ったのだった。
そうして、時間が経つのも早く、もう帰る時間となってしまった。
挨拶を交わし、アグネス一家が見送ってくれる。
馬車は1日半かけて自宅へと向かう事になるのだ。
帰りも馬車の中では話題が尽きる事はない。
「今度のクラスもみんな同じだといいわよね」
「そうね。3クラスしかないから可能性は高いわよ」
と私とメルが話していると、窓から我が家が見えて来た。
「送ってくれてありがとう!気を付けて帰ってね」
「どう致しまして。また来週学園で会いましょうね」
そうして、楽しいお泊り会は無事に終わったのだった。
【後日】
妃教育で王宮へ行った時に、ウィルフォードにお土産を渡す事にした。
だが、差し出した時に悩んでしまったのだ。
王子に渡していい代物ではないのではないか?と。
だが、出した物を引っ込める事は出来ず、そのまま渡すと殊の外、喜んでくれたのだ。
ウィルフォードは以外にも、可愛い物が好きなのかもしれない。
私は、今度可愛い物があったら、プレゼントをしてあげようと思ったのであった。




