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王子の寝た子を起こしたら、夢見る少女では居られなくなりました!  作者: こさか りね
本編

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22

次の休みの日


試作品を作る前に、妃教育を受けるのだ。


いつもは緊張しながら王妃様の元へと向かうのだが、今日は違う。


先日、キスをされてからと言うもの、その事ばかりを考えてしまうのだ。


ウィルフォードは、私の事が好きだと言っていたが、本当なのかと疑いたくなる自分と、もし本当ならばどうすれば良いのか、と悩む事に疲れ果てていた。


今日もそんな事ばかりを考えていたら、あっという間に王妃様の部屋へ着いてしまったのである。


「王妃様、失礼致します。フェアリエルにございます」

「どうぞ、入ってらして」


そして今日も丁寧に教えてくれる。

恙無(つつがな)く終わり、ウィルフォードの所へ行こうとしたら、引き止められたのだ。


「ウィルフォードから、何か言われていない?」


いつもよりも眉をハの字にして、神妙な面持(おもも)ちで聞いて来る王妃様に、私は好きって言われた事だとすぐに気付いた。


「・・・はい」

言い辛くて気まずい雰囲気が出てしまう。


そうしたら、王妃様が絶望した顔になり、いきなり私の手を取ったのだ。


「フェアリエルさん、何か困った事があったら相談しに来なさい。必ず力になりますからね!」


王妃様は切羽詰まった表情で伝えてくれるのだが『貴女の息子に好きだと言われて困っています』とは流石に言えない。

だから、無難に返す事にした。


「はい。ありがとうございます」


私は、親子で色々と話すぐらい、仲良しなんだな。と思い、時間となった為、(ふたた)びウィルフォードの所へと向かったのだ。


【王妃視点】


ウィルフォードがフェアリエルさんに婚約解消の話をした様だ。

気まずそうにしていたわ。


・・・なんて言う不甲斐のなさ。


解消になるのなら、契約は無効だわ。

ウィルフォードへは後程(のちほど)、問い詰めましょう。


そう息巻く王妃であった。



【視点は戻り、その頃のフェアリエルは・・・】


私はウィルフォードの侍従に客間へと案内されていた。


どんな顔をして会えばいいのか分からない。

ウィルフォードに会うだけなのに、妙に緊張する。

と、その時。


「フェアリエル。待たせてすまない。妃教育はどうだった?」


・・・あれ?(いた)って普通ね。

意識をし過ぎていたのかもしれないわ。


「今日も、とても丁寧に教えてくださったわ。ウィルも忙しいのに付き合ってくれてありがとう」


「俺は君に会いたいからな。今日も会えて嬉しいよ」


そう言って、愛情たっぷりの笑顔を送ってくれたのだ。


・・・意識のし過ぎじゃなかった、愛情表現がすごい。

すっかり()()られたわ。


私の意識の違いでそう思うのか、口調も態度もいつもより柔らかい様に感じる。


()()()()している私に『早速始めようか』と言ってウィルフォードは私の隣に座ったのだ。


・・・えっ・・・隣?

近くない?


私はマジッククレーを手に取りコネコネする。

すぐ隣にウィルフォードがいる為、なかなか集中できない。



「・・・あの、ウィル?ちょっと近くない?」

「そう?この方が手伝いやすいからね」


時間を作って来てくれているのだ、ウィルフォードのしやすい方が良いだろうと思い、納得したのだった。


「そう、なのね。

・・・ごめんなさい。集中するわ」


一つ一つの工程を思い浮かべて落とし込んで行く。

火と水を組み合わせて水蒸気を作り出すのだが、今まで一つの元素しか作った事がないので、なかなか上手く行かない。


『ふぅっ』と、思わずため息が出てしまった。


「何か分からない事があったのか?」


「ええ。二つの元素が結びつかなくて。言葉では分かっていたけど、ちゃんと理解していなかったんだわ」


「そうか。

・・・少し触れるよ」


そう言って、私のマジッククレーを持つ手の上から自分の手を重ねて来たのだ。

そして肩は完全に触れ合っている。


!!?


思わず、ビックリして固まってしまった。

それなのに、ウィルフォードは何事もないように話を続ける。


「今、頭の中で浮かぶ回路が共有されているのが分かるか?

俺がこれから繋いでいくので良く見ていてほしい」


そう言って、どんどんと落とし込んで行く。


すっ、すごいわ!


私が理解していたのって、上辺だけだったのね。と再認識した。


そうしてあっという間に作り上げていく。


「ここまで来ればどうだろう。後は出来そうか?」

「ええ、ありがとう。やってみるわ」

最後の仕上げは何とか自分で作る事ができたのだ。


すぐに形に出来ると考えていた、自分の甘さが嫌になる。

あんなに大見得(おおみえ)を切ったのに、ウィルフォードがいなければ大半は実現できない。


「私、何も理解していなかったわ。貴方がいなければ、このマジッククレーも作る事が出来なかった。本当にありがとう。自分の詰めの甘さを実感したわ」


「まぁ、確かに理解はまだ足りていないが、君の出したアイディアはとても素晴らしい物だ。

作る事は、知識と経験を積めば出来る様になるが、アイディアはそうはいかない。

君は、もっと自分を()めてあげてもいいのではないか?」


「ありがとう。

・・・私、もっと頑張るわ」


前世の知識を使っているので、素直に喜べないが、頑張る事は私にも出来る。

もっともっと、精進(しょうじん)しなくては。



【その日の夜】


ウィルフォードは母に呼び出された為、母の部屋へと来ていた。


部屋へ入ると不機嫌な顔を隠そうともせず、いきなり(まく)し立てて来たのだ。


「ウィルフォード。あなた、フェアリエルさんに解消する事、伝えたんですって?

今日、聞いたわ。

・・・とても、気まずそうにしていたわよ。

いいこと?(わたくし)は、この先、フェアリエルさんに何かあったら必ず力になりますからね。

本当に(なげ)かわしい」


悲壮感たっぷりでハンカチを目に当て、泣いているパフォーマンスをしてくる。


・・・そう言えば、解消するって話しをしたな。と思い出し、問い掛けたのだ。


「母上、何の話ですか?」

「だから、婚約解消の話よ!伝えたのでしょう?」


ものすごい勢いで怒りをぶつけて来た。

顔を見ると、やはり涙は出ていない。


「いいえ、解消するとは話していませんし、するつもりもありませんよ」


「・・・どう言う事?

フェアリエルさんに聞いたら、すごく言い辛そうだったわ。

あなた、何を言ったの?」


「これからの事を少々。

(ちな)みに、なんて聞いたのですか?」


「何か言われていないか。と聞いたのよ。

それより、解消はしないの?」


「はい。解消するのを止めました」


「なんて事。(わたくし)、てっきり解消の話をしてしまったのかと思っていたわ。

早速、マクシエル様にも、お伝えしないと」


そう言って喜び(いそ)しんで、部屋を出る支度をしている。

俺は部屋へ戻るか、と歩き始めたら母が再度、口を開いたのだ。


「ウィルフォード、いいこと?何事も全力で取り組みなさい。やり残した事があっては、まともに後悔すらも出来ないのよ」


「はい、母上。肝に銘じます」


母からの有り難い教訓を教えてもらい、俺は退出したのであった。


その後、両陛下の心に安寧が(もたら)されたのは言うまでもない。


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