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王子の寝た子を起こしたら、夢見る少女では居られなくなりました!  作者: こさか りね
本編

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21

最近は、よくウィルフォードと一緒にいる事が多くなった。


今日の放課後も、自然科学の図書室で待ち合わせをしている。

いつもの席に行くと、既にウィルフォードが居たのだ。


「ごめんないさい。遅くなりました」

「いや、大丈夫だ。では、早速始めようか」


そしてすごい事に、ウィルフォードは色々な事を知っている。

私なんて足元にも及ばない。

 

そうして今日も意見を出し合い、ノートに(まと)めていく事が、とても充実した時間だと感じているのだ。


そんなウィルフォードに、私はいつも協力して(もら)うばかりでは申し訳ないと思い、何かお返しがしたいと申し出たら、『ウィルと呼んでほしい』と、ポツリと言うではないか。


本当に呼んで良いのかと迷っていたら、小さい時のウィルフォードのように()()()()としていたので、思い切って呼んでみた。


すると、嬉しそうに()()()()()笑ったのだ。


その顔に心臓がドキッとして思わず胸に手を当ててしまった。


イケメンにそんな顔をされたら、誰だってドキドキしてしまう。

だから、これはきっと違う。そう思う事にした。


それに、ウィルフォードは私を好きな訳では無い。この政略結婚を成し遂げたいのだ。


・・・勘違いをしてはダメだ。


そして、それからの私達は、色々な話をする様になった。

私も(かしこ)まらず自然に話し、ウィルフォードも二人の時は()と一人称が変わっていったのだった。


そんな日々が過ぎ、今日は学園が休みなので、王宮書庫へと来ている。


「ウィルは書庫に詳しいのね」


「あぁ。小さい頃から良く通っているからな。

・・・今だから言えるが、俺は君を魔女だと思っていたんだ」


えーっと、魔女とは?

思いもよらない話の展開に首を(かし)げて聞き返した。


「魔女?ですか?」


「そうだ。

・・・笑えるだろう?

君の前では思う様に話せなくて悩んでいた事があったんだ。

その時に見つけた本が、確かこの辺りに・・・これだ。

見てみるか?」


「ええ。ありがとう」


そう言って、微笑みを浮かべたウィルフォードから本を受け取り開いたのだ。


読み終えた後、最後のページを見たら、私に()()()()なティーナの絵が描いてあった。


「もしかして、私にメガネを送ってくれたのも、この本の影響?」


「・・・そうだ。

5歳の俺は君の力を(おさ)えるには、どうしたらいいのか、本気で考えていて毎日図書室へ通ったんだ。

・・・君と普通に話せる様になる為に。

・・・もちろん、今は魔女なんて思っていない」


「ふふっ、そうね。私は魔女じゃないわ。

それに、今は普通に話せているわよ」


思わぬ所でメガネの謎が解けた。


「俺は君と、こうして話ができる事をとても幸せに感じているよ」


「まぁ!大袈裟(おおげさ)よ。私だって、貴方とこうして落ち着いて話ができるなんて、少し前なら思いもしなかったわ」


そうして笑顔で向き合う2人は、他人(ひと)から見ると仲睦まじい恋人に見えてもおかしくはない。


そんな他愛もない話が出来るくらい、仲良くなっていた事に、フェアリエルは気付いていなかったのだ。




※ーーー※ーーー※ーーー※ーーー※ーーー※ーーー※




「最近のエルは少し変わったわね?大人になった気がするわ」

と放課後の庭園でメルティアが聞いて来たのだ。


「いつまでも、夢見る少女ではいられないと気付かされたのよ」


私が神妙な面持ちで答えると『なんか、意味ありげね』とメルティアも同じ表情で返してくれる。


「それに、もうすぐ2年になるし、少しは成長しないとね」


時間が経つのも早い物で、もうすぐ進級する時期だ。


そんな私達のやり取りを見ていたアグネスが躊躇(ためら)いがちに話し始めたのである。


「そろそろ、長期休みに入るでしょう?

私は実家に帰ろうと思っているの。それで、もし良かったら、みんなも遊びに来ない?」


「行っても大丈夫?久々に家族と会えるのに邪魔じゃないかしら?」

気になったメルティアがアグネスへ問いかけた。


「大丈夫よ。日帰りだと大変だから、是非泊まって行って。

両親もみんなに会えるのを楽しみにしているわ」


笑顔で話すアグネスに、本当に行っても大丈夫なのだろうと思った私は『すごく嬉しい!誘ってくれてありがとう!』とお礼を言い、3人でお泊りの予定を立てるのであった。


このセントラルオーサム学園には、長期休みが進級する前の2週間しかない。

3年と言うタイトな時間の為、夏休み等がないのだ。

それに前世の日本に比べると、寒暖差が少ないと感じる。

暑すぎて死にそうって事も、寒すぎて雪で外に出られないって事もない。

と言うか、雪が降っているのを見た事がない事に、今気づいてしまった。


「そういえば、話は変わるけど、エルは最近、殿下と親しくしているわよね?」

とメルティア。


「まぁ、そうね。婚約者だけど、友達みたいな付き合いをしているわ」


「友達?どう見ても、エルの事が好きでしょ?」

メルティアは呆れる様に言い放ったのだ。


私はその言い方に少しムッとして『違うわよ。それに、ウィルには好きな人がいるんだから』とトップシークレットな内容を口にしてしまったのだった。


「そう?じゃあ誰なの?」


マズイと思ったのは束の間、メルティアは信じていない様で首を(かし)げて聞いて来る。


「・・・いや、それは言えないんだけど、今度本人に確認してみるわ。じゃあ2人とも、また明日ね」

そう言い残して、私は図書室へ向かったのだ。


その後ろ姿を見ていた二人は・・・


「エルは全く気付いていなさそうね」

「そうね。大人になったと思ったのだけれど、恋に関しては全然成長していなさそうだわ」

「・・・とにかく、見守りましょう」

そうアグネスとメルティアが話している事を、知る(よし)もないフェアリエルだった。




私はみんなと別れた後、図書室でウィルフォードを待つ。

そろそろ試作品を作れる段階まで話が煮詰まってきたのだ。


「待たせてしまって、すまない」

「私も今来たところなので大丈夫よ。いつもありがとう。

それと、そろそろ試作品を作ろうと思っているの」


そう問いかけると、ウィルフォードは次の休みの日に作ろうと言う。


私としては嬉しいのだが、最近は私とばかり一緒に居る気がする。


そこで、先程メルティア達と話した事を聞いてみる、いい機会なのかもしれない。と思ったのだ。


「あの、ウィル?一つ聞いてもいいかしら?」

「なんだ?」

「私といる日が多くなってしまって、その、バンサム男爵令嬢は大丈夫?」


「・・・?

彼女がどうかしたのか?」


「いえ、お付き合いをしているのではなくて?」


笑顔で話を聞いていたウィルフォードの顔から、表情が抜け落ち、不機嫌そうな()()()()をしたのである。


私はそれに(何だか久々に見るわね)なんて、どうでも良い事が頭を(よぎ)ったのであった。

すると・・・。


「は?どこをどうしたらそうなるんだ?

婚約者がいるのに、他の女性と付き合う訳がないだろう。

・・・そんなに俺は信用がないのか?」


何事(なにごと)か!?

と思う程、感情を剥き出しにしたと思ったら、最後は痛々しい顔で聞いて来るウィルフォードを、傷付けてしまったと自覚した私は、即座に否定した。


「違う!

・・・そうじゃなくて。

以前、ウィルが楽しそうに一緒に歩いていたから、そうなのかと思ったのよ。

・・・だって、私達は政略だし。

私に遠慮しているのなら、悪いと思って聞いたの」


ウィルフォードは(しば)し考えた後、思い当たる事があるのだろうか、ため息交じりに口を開いたのだ。


「はぁ・・・。

彼女は(ただ)のクラスメイトだ。

それに・・・。

俺が好きなのは、君だよ」


!?


は?え?私?


と、(はと)が豆鉄砲を食ったような顔をしている私を見て、感心した様に告げて来たのだ。


「君はすごいな!あれだけ態度に出していたと言うのに全く気が付かないなんて。

・・・では、これからはもっと伝える事にするよ」


ニコリとキレイに笑ったウィルフォードの顔を見て、何故だか、狙われた小動物の気持ちが分かった様な気がした。

トキメキとは違う意味で鼓動が跳ねる。


「では愛しい婚約者様、次の休みの日に、また、お会いできる事を楽しみにしているよ」


そう言って、私の髪を一房(すく)い上げ、キスを落としたのであった。


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