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前世、小説が大好きで暇さえあれば読み漁っていた。
ミステリー・冒険・SF・恋愛など色々なジャンルを読んでいたが、その中でも、私を虜にしたのは異世界を舞台とした小説だったのだ。
初めて読んだ時は、斬新なストーリーに心が震えたのを覚えている。
当時28歳。仕事に追われ、彼氏なし。
そんな私には、乙女の夢を詰め込んだキラキラとした、素敵な作品に心を揺さぶられたのだった。
それと、どうしても思い出せないのが、どうやって人生を締めくくったのかだ。
過労死なのか、病死なのかは定かではないが、親よりも先に逝ってしまった事は間違いがないので、悔いても悔やみきれない。
そう考えていたら、思わずポツリと声が出ていたのだった。
「親不孝者でごめんなさい・・・」
そうして意識はまどろみの中へと消えて行ったのである。
「うーん、頭痛い」
伸びをしながら目を覚ますと見慣れた天蓋が目に入った。
いつの間にか寝ちゃったみたいだが、ちゃんと家に帰れて一安心である。
・・・あれ?なんだか頬がパリパリするな。
身体をお越し、サイドテーブルの引き出しから手鏡を取って見てみると、涙の乾いた後が付いていた。
前世を思い出していたのは途中まで覚えている。
だが、いつの間に泣いたのだろうか・・・。
手鏡が入っていた引き出しからハンカチーフを取り出し涙の後を拭った。
そして頭に触れてみると、やはりタンコブが出来ている。
派手に転んだ割には軽傷だった様ね。
まぁ、吐き気もないし、多分大丈夫でしょ。
そう思い、ジッと鏡を見ながら今世の自分を考える。
前世とは違い、途轍もない美少女が今の私だ。
私、フェアリエル・クリーヴランドは8歳の公爵令嬢だ。
シルバーブロンドの髪にピンクダイヤモンドの瞳を持っている。
自分で言うのも何だけど、本当に将来が楽しみな顔よね。
私は手鏡をそっと引き出しに戻し、また寝ころんだ。
天井に掘られている花やツタをモチーフにした柄をぼんやりと眺めていると、ふと、頭を過ったのである。
そう言えば前世の時、密かに思っていた事があるのだ。
もし生まれ変われるのなら、今みたいに時間に追われる生活じゃなく、ゆったり、のんびり、自分の為に時間を使える自由な田舎生活がしたい!と。
そう、今世なら叶うのではないか?と思ってしまったのだ。
公爵家はお金持ちだから働かなくても大丈夫だし、できれば結婚もしたくない。
父は甘々だから、ずっと家に居たいと言えばいけそうだけど、母は手強いからなぁ・・・。
そこは今度考えよう。
とそう思っていたら。
・・・・・・。
・・・いや。ちょっと待って!?
婚約者がいた事を忘れているじゃない!!
・・・参った。
今日は色々あり過ぎて抜けてしまったわ。
と項垂れていたその時、ドアをノックする音が聞こえたのだった。




