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今日から学園の授業が始まる。
淑女としての教養は、母に叩き込まれたから、気を抜かなければ何とかなるとして、問題は史実だわ。
似たような名前で、しかも長いから覚えられないのよね。
前世、日本の歴史上の人物名を覚えるのも苦労した記憶がある。
そして今は、自宅から馬車で学園へと向かっているところだ。
私は家が近い為、自宅から通っているが、メルティアは学校近くにペントハウスを購入したと言う。
また、学園には寮もあるので、そこから通う事もできる。
ただ、高位貴族は防犯上の兼ね合いから、寮での生活は推奨されていない。
だから、メルティアも寮に入らないのだ。
寮のほとんどは低位貴族が使用する事になる。
この辺りは、平等とはいかないのだろう。
馬車で30分、学園へと到着した。
Bクラスに行くと、既にメルティアが席に座っていたのだ。
「メル、おはよう!」
「おはよう、エル!今日も元気ね」
それから二人で話していたら、色々な人が私達に話しかけてくれたのだ。
私はすごく嬉しくなったのだが、段々と話している内に異変に気付いたのである。
私の一言一言に異常な反応を見せるのだ。
・・・なんだろう。
前世で言う【太鼓持ち】の様な感じだ。
メルティアを見ると、首を横に振っている。
そして、ホームルームが始まるまで、ずっとその状態だったのだ。
お昼休憩になり、色々な人に誘われたが、丁寧にお断りをして、メルティアと2人で庭園へと向かった。
学園には食堂があるが、ゆっくりしたかったのでお弁当を持参したのだ。
「ふぅ、やっと落ち着けた。
メル?さっきの何だったの?理由分かる?」
「まぁ、大体は分かるわ。あの方達は私達の家と繋がりが欲しいのよ。
もしかしたら、親から言われているのかもね」
「・・・それって、私じゃなくても、いいって事よね?」
「そう言う事ね」
期待が大きかった分、しょんぼりしてしまう。
・・・・・・・。
精神的に疲れてしまい、メルティアをぼんやりと見ていたら、後ろのベンチに見た事がある子が居た。
・・・あれ?あの子。
教室で後ろに座っていた子じゃない?
そう思い、私と同じく、しょんぼりしていたメルティアに話しかけたのだ。
「ねぇメル。あそこにいる子、教室で私達の後ろに座っていた子よね?」
メルティアが振り返り確認している。
「確かにそうね。だけど、それがどうかしたの?」
「あの子、私達に話しかけて来なかったのよ」
「うん。それで?」
メルティアも疲れているのだろう。考える事を放棄している様だ。
「だから、私達の家に興味ないって事よ!
もしかしたら、お友達になれるかもしれないわ!!」
「エル、あなた・・・。
最高にポジティブね!そう言うの好きよ」
早速、メルティアと一緒に話しかける機会を伺う。
教室よりも、ここで話しかけた方が得策だろう。
そして彼女が昼食を食べ終わろうとした、その時。
今だ!!
私達は、淑女として恥ずかしくない程度の急ぎ足で、彼女の前に出たのだ。
「こんにちは。今、お時間はありますか?」
焦り過ぎて、前世のナンパ男みたいなお誘いになってしまった・・・。
もちろん相手は、急に出て来たものだから、ビックリして目が点になっている。
「!!?
・・・あっ。えっと、はい。時間はあります。」
『ふぅ』第一関門は何とかクリアした。
「あの、私、フェアリエルと申します。こちらは、メルティアです。
良かったら、お友達になってはくれませんか?」
緊張で顔が強張りそうになるのを制して笑顔を保つ。
「は、はい。私で宜しければ是非」
・・・や、やったわ!
告白に成功した様な達成感だ。
メルティアを見ると、顔が高揚していた。
よっぽど、嬉しいのだろう。
そうして私達は改めて自己紹介をした。
彼女はアグネス・ムーア子爵令嬢。学園の寮から通っているそうだ。
田舎から出てきたので、知り合いがおらず、ずっと不安だったと言う。
勇気を出して、話しかけてよかったわ!
色々話していると、お互い緊張が解けてきたのか、アグネスの屈託なく笑う姿や、のびのびとしているところが、とても素敵だった。
アグネスはブルネットの髪にブラウンの瞳をしている。
日本人に似ている色彩に、何処か懐かしさを感じるのであった。




