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今日は貴族としての慈善活動の為、お母様と公爵領の寺院へと来ている。
この寺院は各領地、そしてどの国にもあるのだ。
教えの根底として人間が如何に尊く優れているのか。
また、慈悲を与えられるのも人の理だからこそだ。
を基盤に、その国ごとに多少変わるそうだ。
そして国とは独立した組織となる。
王都の公爵邸から2日かけてやって来た私達。
大体1、2か月に1回のペースで行っているのだ。
寺院とは神の教えを説き、そして平民の学び舎としての役割を担っている。
私達は神官から話を聞き、寄付するのが役目だ。
最近は学び舎に通う平民が増えた事。
物の物価が上がった事。
領地民の人数の推移など、平民の状況や生活を間近で聞ける機会なのだ。
平民は出産したら寺院へと届け出なくてはならない。
領地の人口数の把握は寺院の仕事なのである。
そして、母が言うには、平民の人数が領地の繁栄につながる事。
私達は自領の為に、最善を尽くさなくてはいけないと言っていた。
そうして無事、寄付も終わり、自領にある公爵邸へと行く。
今日はここに一泊するのだ。
明日は領地が隣のマルティネス侯爵家に招待をされている為、早く出ないといけない。
それから、やることを済ませて、早々に就寝したのであった。
【次の日】
マルティネス侯爵家のお茶会に母と一緒に向かっている。
馬車の小窓から初夏の日差しが注ぐ中、私の唯一の友達の事を考えた。
侯爵家の令嬢メルティアとは、小さい時からの幼馴染だ。
領地が隣同士と言うのもあるが、同じ年で面倒見の良いメルティアを私はとても好きなのだ。
そうして考えている内に、マルティネス家へと到着したのである。
メルティアとメルティアの母が出迎えに来てくれている。
私はメルティアに久々に会えた事が嬉しくて、思わず抱き着いてしまった。
淑女として、はしたない行為だと分かってはいるが、我慢出来なかったのだ。
そんな私を、母が何か言いたそうに見ていたが、大目に見てくれたのだろう。
何も言われなかったのだった。
母同士は挨拶をしていて、これから茶会の場所に移動するのだろう。
私はメルティアの部屋へ案内された。
黄緑とクリーム色を基調とした部屋で、安らぎのある落ち着いた部屋だ。
私は辺りを見回して席に着くと、早速話し掛けたのである。
「メル、久しぶりね!ずっと手紙のやり取りだけだったから、会えてとっても嬉しいわ!」
「私もよ。エルは王都に居るから、なかなか会えないものね。
でも、元気そうで安心したわ」
アップルグリーンの瞳を細めて、喜びを返してくれた。
髪色はヘーゼルブラウンで、この部屋同様にホッとする色彩をしている。
それから、挨拶はそこそこにして、お互いの領地の流行品や、これから通う学園の話をして楽しんだのだった。
「そうそう、ウィルフォード殿下とはどうなの?」
「うーん、ぼちぼちかな。
・・・なんで?」
「いえ、前はいつも手紙に書いてあったのに、最近のには全くないから、どうなのかと思ってね」
なかなかに鋭いメルティアだ。
「そうだったかな?これと言って、書く事がなかったから。
あと、今はまだ言う事が出来ないけれど、とある計画を実行中なの!
達成が見えてきたら、話を聞いてくれる?」
「もちろんよ。それにしても、また何かしているの?
ウィルフォード殿下を余り困らせてはダメよ」
心配そうに言ってくれるが、私は大丈夫だと笑顔で返したのだった。
「ふふっ。大丈夫!きっとウィルフォード様も結果、良かったって。言ってくれると思うわ!」
そうして時間は過ぎ、お別れの時がやって来る。
楽しい時間はどうして早く過ぎてしまうのだろうか。
次はまた、いつ会えるか分からないが『また今度』と約束をし『手紙を書くわね』と言って、さようならをしたのだ。
それから帰りの馬車の中は行きと違って、少し、しんみりとしていたのだった。




