9
今日は妃教育を受けに王宮へと向かっている。
馬車が到着し、馴染みの護衛騎士さんがエスコートをしてくれた。
前回の事があったので、かなりしっかり目に支えてくれているのが分かる。
そして、私は先日の件を謝罪したのだ。
「先日は大変なご迷惑をお掛けしてしまいました。」
「いいえ、支えきれず大変申し訳ございませんでした。
その後、体調は如何でしょうか?」
顔を曇らせながら聞いて来る護衛騎士さんを安心させる様に笑顔で答えたのだった。
「お気遣いくださり、ありがとうございます。もう、大丈夫ですわ。
改めまして、わたくしはフェアリエル・クリーヴランドと申します。
先日の件で対応してくださり、とても感謝しております。
心ばかりではありますが、お菓子を持って参りましたので、是非、皆さんで召し上がってください。」
そう言うとホッとした様子で、笑顔で挨拶を返してくれたのだ。
本当に心労をかけてしまった事を、申し訳なく思う。
「お嬢様のお心遣い痛み入ります。
私は、ドミニク・ハーパーと申します。以後、宜しくお願い致します。」
「こちらこそ、いつもエスコートしてくださり、ありがとうございます。」
そして、その後は王妃様付きの侍女が案内をしてくれた。
妃教育は王妃様が自ら教えてくれるので、少し緊張してしまうのだが、それだけではなく、前世を思い出してからと言うもの、少し気になる事があるのだ。
それは・・・・。
妃教育中の王妃様の眉は、いつも八の字になっていて困った顔をしている。
もちろん、私がいない時はそんな顔はしていないし、顔の作りの問題ではない。
教え方は丁寧だし、声も優しい。
・・・本当に眉だけなのだ。
以前の私は全くもって、気のも留めていなかったのだが、今思うと、何かあるのだろうか?
と勘繰ってしまう。
今日も無事、妃教育が終わり、控室で帰り支度をしていたところ、窓の外からメイド達の噂話が聞こえて来たのだった。
「王妃様も複雑よね。陛下の初恋相手の孫に教えるの。」
「姿もソックリだって言うじゃない?
しかも、この婚約は陛下が言い出したって話よ」
「へぇ、よっぽど初恋の方が忘れられないのね」
・・・ふーん。なるほど。
でも、それって私、関係ないよね?
だって、祖母とは別の人間だし、性格だってきっと違う。
なので、考えても時間の無駄だと思い、今まで通り、気にしない様にしたのだった。
その時、ドアをノックする音が響いた。
「ウィルフォード殿下の使いで参りました。
フェアリエル様 お茶のご準備をしております故、この後、お時間がございましたらお起し頂きたく存じます。」
ウィルフォードの侍従がやって来て言ったのである。
これって、行かなきゃいけないやつよね?既にお茶の準備しちゃってるって言ってるし・・・。
「分かりました。では、案内をお願いします。」
「ありがとうございます。ご案内させていただきます。」
今回は庭園が見えるコンサバトリーでのお茶会だった。
既にウィルフォードが座っている。
「お待たせしてしまい、申し訳ありません。
お誘いくださり、ありがとうございます。」
椅子に座り、久々にウィルフォードの顔を見ると、いつも通りの《《しかめ》》面だった。
早速作戦を実行したいところだが、その前に確認したい事があるので問いかけたのだ。
「先日は、お花をくださりありがとうございます。
玄関がとても華やかになりました。
ウィルフォード様が選んでくださったのですか?」
「・・・ああ、そうだ。
・・・・体調は?」
「もう大丈夫ですわ。お騒がせしてしまい、申し訳ありません。
それと、ウィルフォード様は華やかな物が好きなのですか?」
「・・・・いいや」
「・・・そう、ですか」
なんと、殿下は派手好きではないらしい。
(では、どうしてあの花束だったのでしょうか?)とは流石に聞けない。
いつもなら、妃教育の事や、日常の事を話すのだが、今日はここまでで、いいだろう。
お互い無言のまま時間だけが過ぎる。
そうして時間になり、挨拶をして、自宅へと帰ったのであった。




