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今日は月に一度のお茶会の日だ。
しとしとと雨が降る中、通いなれた石畳の道を馬車がゴトゴトと走る。
いつもは人通りが多く、商店からは活気のある声が聞こえてくるのだが、雨のせいなのか閑散としていた。
雨は嫌ね。楽しみにしていたお茶会が台無しだわ。
じめじめしている空気にうんざりしながら、ぼーっと車窓から外を眺めていた。
そうして、中央広場の噴水を超え、暫くして目的地の王宮へと到着したのだった。
豪奢なエントランスに馬車を停車し、扉を開けてくれるのを待つ。
いつものように王宮護衛騎士の手を借りステップに乗り出した時。
「・・・きゃっ」
雨でツルっと滑って派手に転んだ。
そのまま馬車の中に倒れ、頭を床に叩き付けた瞬間に前世を思い出したのだ。
・・・うぅ。頭いたい・・・。
脳みそを混ぜられている様な気がする。
もちろん打った痛さもさる事ながら、それよりも膨大な情報量に頭がパンクしそうで気持ち悪い。
情報過多で頭がクラクラする。
・・・これは、生まれ変わったって事。よね?
体感時間だと相当経った気がするのに、誰も来ないという事は、ほんの数秒の出来事だったのだろう。
・・・まずは前世と今世のすり合わせをしたいところなのだが、ここは王宮だ。
出来れば、ゆっくりと考えたいので、このまま自宅へと帰りたい。
倒れたまま考えている私に、先程の王宮護衛騎士が焦りながら話しかけて来たのだった。
「大丈夫でございますか!?」
そう言って馬車に乗り込もうとステップに足を掛ける。
あわわわ!どうしよう・・・。取り敢えず、気を失ったフリよ。
その後、王宮のエントランスでは宮廷医師がやって来たり、王宮護衛騎士が自宅へと帰れる手筈を整えて送ってくれたりと、こんな大事になるとは思わなかったのだ。
嘘を付いて迷惑をかけた事に罪悪感を覚えるが、もうどうにもできないので、流れに身を任せる事しか出来なかったのである。
そして、今度お詫びに行こうと心に留めて気持ちを切り替え、私は思考を巡らせることにしたのだった。
そう、多分ここは地球ではない異世界だと思う。
だって、前世では考えられない色彩を持つ人がいるのだ。
もちろん私もその一人なので、なんとも言えない。
それに、時代背景は中世ヨーロッパ風なのに、数は豊富ではないにしろ、何故か家電製品が存在している。
と言う事は電気があるという事で間違えない。
ドライヤーや、自動で湯を沸かせるポットはあるのに、交通手段は馬車だけって・・・。
私が言えた義理ではないが、もっと、どうにかならなかったのだろうか。と思ってしまう。
今までは当たり前だった事が、前世と比べてしまうと、何だかアンバランスな感じがしてしまうのは、致し方の無い事だろう。
と言う訳で、異世界に転生したのは、間違いのない事実なのだ。




