開
掲載日:2026/01/12
謎のボタン「開」。
少年はそのボタンを見て、ずっと悩んでいた。取りつかれていた。
「開」の隣には「閉」もある。 どちらかでいいはずなんだ、このボタンは。
よく考えてみよう。 少年は長く息を吐き、気持ちを整える。
そもそもエレベータは、指定の階につけば勝手に開く。閉めたいときは「閉」を押せば良い。
開いているのに「開」を押す必要はないし、誰かがドアに挟まったら、安全装置で勝手に開く。
つまり、基本開くのだから、あらためて「開」く必要はないのだ。
生き急いでいる者だけが「閉」じる。
しかし、少年は自分も「閉」を押すのだから、この仮説は当てはまらないと思った。
チーン。4Fについた。
山田さんが乗ってきた。静かに1Fのボタンを押し、「閉」を押す。
少年は静かに見守る。
籠が下りていく感覚・・・ 止まる。 1Fだ。
山田さんは不思議そうに少年を見て、外へ歩いていった。
少年はただ、ボタンを見つめていた。
扉がゆっくりと閉じていった。




