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ヒトの骨格を持つ蠅の魔物に滅ぼされゆく世界を救う物語/アストリア戦記  作者: シューゲツ
第1章. The Resolve of Freedom’s Amethyst/自由なる紫水晶の決意
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第68話. 限りなき独創魔法:天馬の門

 自由の意思──風の魔法による転送魔法。


 エオルーン魔導学校の教師“フィルナス=イングス“が行うことのできるその魔法は、原則として個人一人しか転送させることが出来ない。


 その上、その願いを受け目印となることのできる魔導士が行き先におり、その者が訪れることを願うこと。

 そして、行き先の情景や雰囲気(マナ)を正確にイメージ出来ている必要があり、それは映像や写真では至らず、少なくとも転送する者、される者の両方が実際にその地を訪れている必要がある。

 

 ──だが、その技の限界を更に超える事は不可能ではない。

 

 魔法の主がもつ意思、そして環境の空気(マナ)が共に真なる自由な意思で統一している事。

 更に願いの力を増幅させる魔法陣により、願いが現実へと出力する力は更に上の段階へと押し上げられる。


限り無き独創魔法(ユニークマジア)


 個人が無限大のエネルギーを生み出す感情を見つけ出すことで可能となる、その者ただ一人が使える奥義である。


 アルテアが誇る天文学者にして真空の魔導士ウィルナード。

 かつて彼が修行に励んでいた日々、その時間の殆を修行場に身を置いていた一方、彼はその空に無限の自由を見出した。


 特に彼の関心を惹いたのは、上空の果てにある“真なる空に吹く風“。そこには大気によるものとは異なる、物質やエネルギーが存在し、確かに風が吹いている事を彼は見出した。


 そして、それを想い誰かに語る時、ウィルナードはどこまでも自由になれた。

 卓越した魔導士はその強烈な固有の雰囲気(マナ)を身にまとうことで、周りの大気中におり混ざる意思の影響を塗り替えてしまう素養をもつ。


「それではいきますよ〜、離れていてくださいね」


 ウィルナードは丸眼鏡を光らせ天球儀を飾る杖を掲げると、その周囲の風がとまり、まるで何かを描き出すかのように、再び大気が吹き始めた。

 いま、戦場の最後方において彼の立つ場を中心に風と分け与えられた銀焔により描かれているのは、陰陽が混じり合う紋様。それは、真空に秘められた力が互いにもつれあう様を示す魔法陣であった──


 そして、ウィルナードは一気にその願いを解放させる。


天馬の門(ペガススポータル)──!」


 戦場に突如出現する、円形の”渦巻く門“。


「いってらっしゃーい!」


 選ばれし戦士たちはその中へ次々と飛び込む。


 門を介した複数人の同時転送──それは通常の風の魔法を超えた力であった。

 その魔術は、真空より抽出されるエネルギーより、量子の門──多人数が遠方へと移動が可能となるポータルを開く。


 双槍のライデン=セルクをはじめとした、選び抜かれた討伐隊は、一瞬にしてそこへ到達する。


 その場所は、城からみて南方に聳える“ブールターグ要塞“と間反対、城の丁度すぐ北方に位置する“アパノイア砦”。


 いままさに、そこで“準備”を済ませた部隊と合流する手筈であった。


「攻め取り返すぞ!アルテアの城を!!」

「おおおおおお!!」


 転送を受けた兵達は、順調に進むことの運びを受け、はじめは意気込んでいた、


 ──が、


「……」


「待ってくれ、……何か変だ」


「……?」


 ウィルナードの開いた門よりその場所に辿り着いた先には、これから侵攻と奇襲を開始せんとする者たちがずらりと待機していた。


 兵士たちは到着した現地の様子を実際に見渡し、何やら異変に次々と気づきはじめる。


「──なっ……!!」


(これは……)


(いったい、どういう事だ)



「欠けている!ここにいてこれから討伐に向かうべき“強者“・・・作戦の要となる精鋭の面々が・・・!」



 ──



(ついに始めおったか……)



 空に手を伸ばすかの様に天高く聳えるアルテア城、そしてその北部に位置する頑強な砦。


 その両方と遠くに一望出来る丘の上に佇む、見事な洋館。周囲には木々と湖畔が広がり、アストリアに起きている脅威を忘れさせる様な、穏やかな様相を奏でている。


 人里から離れた場所にある、連なる棟が織りなし聳える美麗なる大館。アストリアにおいてその建築様式は伝統的なものであり、古くから代々受け継がれてきた、由緒ある“名家”であるという事を意味する。


 その護りも堅く、囲い聳える分厚い特殊素材の塀に、警護にあたるのは、武に秀でた名だたる一流の戦士たち。

 それは名家にとって、人々や魔物との喧騒から離れ身を置きながら、あらゆる手段で血筋を護るために必要なものあった。


(──こうして見れば、よくわかる)


(あの虫どもとの戦いに関われば、無事では済まん)


(男は八つ裂きにされ、女は拐われる……あれと関わってはならんのだ)


 洋館のテラスに立つのは、威厳ある髭を蓄え、白髪混じりの髪をたてがみのようにはやした壮年紳士。


“大領主 ベッカード=バーゼルスタイン”


 茜色の貴族衣装に身を包むその男は、その地一帯の権威の象徴であった。


 洋館の周りにたち並ぶ屈強な装備に身を包みし戦士は、彼が依頼したものである。


 ことが起こる3年より前、平和を迎えたアストリアであっても、固く防衛されてきたその地──しかし今や、ヒトの骨格を持つ蝿の魔物“ヴェスパ”がアストリア中に蔓延るこの状況では、一切まもるその手を緩めるわけにはいかなかった。


 それは、ヴェスパの巣に総攻撃をかけるこの状況においても変わらず、国の最高権力に食い込む大領主は自らの一族を護らせる事に戦力を割く判断を下した。


 しかし、事実として13国すべての城を堕としたという事実は、彼の心を折った。


 『城ですら陥落させる魔物にとって、名家の館を蹂躙するなどなどたやすいだろう』という暗い不安と予測──それは彼の心を削り続け、この土壇場になり、とうとうじっとしている事が出来なかった。


(あのハエの化け物、まるで地上の支配者がヒトからあの蟲へと塗り変わっていくようにみえる……)


(やはりこの戦い、素直に平和が訪れるとは思えん。今更攻め勝てるなら、この様な状況になってはおらんだろう!)


(私の身が終わる時、最も親愛なるもの……愛しいものにこそ側にいてほしい)


(フィオリナ……)


(私の可愛い娘……フィオリナ……)


(お前を危険に晒すわけにはいかん)


(あの化け物から何も護ることのできぬ、身体の細い脆弱な男──フィルナスから離れ、私の元へ来るのだ──!)



(“風の魔法“では、我が娘は守れぬ!!私のもとから娘を奪ったあの男を、潰す!!!)

AI非使用

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