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ヒトの骨格を持つ蝿の魔物に滅ぼされゆく世界を救う物語/アストリア戦記  作者: シューゲツ/GQもん
第0章. The Engagement of Steady Diamond/揺るぎなき金剛石の約束
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第25話. この世の誰よりも強い、たった一つの意思

(退かない…!俺は…!)


オフィーリアを構えながら、その怪物と目が合う。虫の複眼の様なそれには、表情などは無い。


もう、言葉を交わすことも叶わないだろう…。


ヴェスパでありながら、戦士としての意志を持っていたアドゥバン“だった”それは、今や悍ましい巨大な蝿の怪物の姿へと成り果てている。


外ではみんなが避難を進めている最中だ、コイツを出すわけにはいかない。そして俺が諦めれば、絶望のマナ…瘴気がますます完成し、町を守る防壁の突破──無数のヴェスパの大群の侵入が近づいてしまう。


アリシアの能力を使うための魔力は、どうやらバングルには残っていない。

魔法や特殊能力を使うための、血筋もない。


それでも、戦い抜く決意は揺るがない。


“ガッッ──”

(!!)


死神の鎌のような爪が俺に向かって振り下ろされる。

なんとかオフィーリアで受け止めるが、出鱈目な力が徐々に、確実に覆い被さってくる。

そして、幾多ある爪も同時に俺を狙う…。


「いかん!」


レオニウス先生の声。

同時に兵士から直様火矢が浴びせられた。

この世のものとは思えない呻き声。

矢自体は装甲に弾かれているが、浴びせられた火を嫌がっている様子がある。奴は自身の爪で矢を払う。

注意が向こうにそれたその瞬間、俺は渾身の力を入れ、装甲の間…関節を狙い切り上げる。


が…手応えがなく、刃が…通らない。

(くっ…装甲が無い部分まで、硬い…!)


アリシアの能力も、作用しない。


次の瞬間…化け物の前腕に当たる大槌のような腕が持ち上がる。俺を狙い、頭から潰そうとしている。


「くっ…!」

レオニウス先生は直様駆け寄り、大筒を構え怪物の下から潜り込む。

そして、轟音と共に爆炎が迸り、砲撃が浴びせられた。

それを直に食らった奴は、再び悪魔の様な叫び声を上げる。


化け物は怒り狂ったかの様に爪を振るいながら、レオニウス先生の姿を補足する。そして狙いを定め、鋭い大爪を振おうとしていた──


「させるか!」


俺はその間に入り、それが振り下ろされるのをオフィーリアでなんとか抑える。

凄まじい力…強引に押し切ろうとしてくる…そして──


「くぅっっ!」


オフィーリアに被さる重みが突如、更に段違いに重くなった。火矢が浴びせられている様だが、俺にかかる重量は緩まず更に増すばかり。巨大なハンマーのような腕が、大剣の上から俺を潰そうとしている。


「ガハッ!!」

そして、負傷する声。レオニウス先生の上体を大槌が力任せに薙ぎ払った。彼は重装甲の装備に身を包んでいたが、そのパワーにより石柱に背中から激突してしまう。

「先生!」

女性兵士の一人が彼に駆け寄り介抱する…クラウだ。


そして、俺の頭上から大剣越しにかかってきていた圧力がふっと軽くなった。


頭上には、持ち上げられる巨大な黒き大槌。それは高くから俺を目掛けて振りかぶり、勢いをつけようとしていた。


圧倒的な重量が、一気に、振り下ろされる──



瞬間──


これまでの記憶、昨日と…アリシアと行動を共にした今日の出来事。そして、想いが一瞬で駆け巡る。


目の前は、真っ暗な世界──


右眼は視えず、残った左眼も視認できない。



すると


”一筋の光“


それはまるで


“流れ星”の様な、閃光だった


光が、呼びかけてくる──



──この世の誰よりも強い意思を、ひとつ示せ──



真っ暗な世界に線を描き、瞬く間に駆け抜ける『光』



たったひとつ、たった一度きり



今の俺には…


能力や魔法を使いこなす血筋はないけど、


絶対に譲れない意思…願いがある。


何があろうとも、どんな怪物が立ちはだっていようとも。


俺は──


「俺は、アリシアを迎えにいく!!必ず!!!!」


俺は、最後に残っていた全ての力を以って、オフィーリアを渾身の力で振るい、叫んでいた。


眩い碧の光。音もなく、その光は拡がっていく。


そして、鳴動と共に溢れ、迸る──


玉座の間にギリギリ立つ俺の目の前は、異形の怪物ではなく…巨大な穴を開けた壁と、割られた霧の合間に見える、満天の星空があった。


怪物は…その体躯の殆どが消しとび、消滅していた。


負傷していたレオニウス、彼を介抱するクラウは、一撃で化け物を屠るその姿を声もなくただ目に焼き付ける。



シルベニア城外 裏門──


城の外で避難を進めていたリュクスとリハルたち。そこにはフラン、リゼットの姿もあった。


”ズゴオォォォォン“

「!!?」


突如、上方から轟音。

彼女らが目を向けた先にあったものは、城の上階にあたる城壁が眩い閃光と共に撃ち抜かれる様だった。

立ち込めていた霧が割った様に退けられる。そして、砕け散り、舞い散る怪物の残骸。

続けて、遅れてくる、突風。


それと──


ふらついている、満身創痍の剣士の姿。


(あれは、スターユ君!?)


奥に何人かいる様だが追いつかず、その剣士は間も無く体勢を崩し…


「!!!!」


落下する──


リュクスは風と共にふわりとその身を浮かばせると、突風の様な風と共に猛スピードでそこへと身を繰り出す。


そして──


(間に合って!!)


彼女は疾風の如く彼の落下地点にたどり着くと、風を練り上げる様に抱え、円形に幾十にも束ねる。


風の魔法──それは“自由な意思の力”で練り上げられた風のマットだった。


落下してきた彼の身はそこへと預けられ、ふわりと弾み、衝撃は吸収される。


彼女は容態を確認すると、額に手を覆う。


「スターユさん…すごい傷…」

追いついたフラン達は心配そうにその姿を見つめた。


「気絶してるみたいね。傷が酷い箇所の止血は施したけど、骨も、何箇所も折れてる…。でも、彼は…勝ったんだわ」


リュクスは砕け散った怪物の異様な残骸に目をやりながら言った。通常のヴェスパとは異なる”怪物“との、想像を絶する戦いを、彼は終えた。薄れゆく不気味な残穢を感じながら、そうリュクスは確信した。


(アリシアちゃん──きっと、うまくいってるよね…)

AI非使用

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