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ヒトの骨格を持つ蠅の魔物に滅ぼされゆく世界を救う物語/アストリア戦記  作者: シューゲツ
第0章. The Engagement of Steady Diamond/揺るぎなき金剛石の約束
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第8話. 男女の視点の違い

[AI非使用]

「にしてもアリシアやっぱりすごいね!これだけ強かったらあいつらにも勝てるよね!」

 フランは両腕を前に構え、昂りながら言う。

「うーん、だといいけど…」

 私は、歴代新記録を出したらしい魔法のサンドバッグになんとなく自分の名前を入力しつつ、考える。

 これは、城や国のあちこちにあって、ハイスコアを出した者を私が直々に呼び出し親衛隊としてスカウトする目的も兼ねているのだが、基本上位に名前を連ねている者は固定で順位があまり変動しない。そういうこともあって、スカウトとしての機能はあまり果たせていない。

 スターユがやると多分まるごとぶっ壊すだろう。

(相性が問題なのよね…)

 私の能力は、貯金のようにためてきた意思の力も使えなくはないが、心理戦なんかで敵に対して心の底からの"揺るぎない意思"の力を蓄積することで真価を発揮する。心にない気持ちは出力が出来ない。

 あの虫どもに人間と同じような敵意や悪意の心があるかは疑問だ。ヒトの心を持たず、属性や状態異常にはあまり頼らない、純粋にフィジカルが強いタイプの敵は、スターユにとってはやりやすいだろうけど、私の能力は相性的に十分には噛み合わないことになる。

 というか、さっきの話からすれば、女である私の場合、こちらから攻撃しなければオスの敵には攻撃されないかも。


 攻撃されない手段…


 そうだ、レオニウス先生に、これは訊いておかないといけない。


「そういえば…昨日、クラウが言ってたのだけど」

「クラウ、彼女は敵に無視されたと言ってた。目があっても全く襲われず、攻撃されなかったって。それって、女の人でも襲われるひとと、そうじゃない人がいるってこと?」


「……なるほど」

 レオニウス先生はアリシアの疑問を受け、静かに目を閉じる。


「それは恐らく―」

 先生は、ゆっくりと目を開け、まっすぐ私達に告げた。


 …


(ききたいことは、ある程度はきけたかな)


 …


 私達はその後、レオニウス一家としばらく話をした。

 取り戻された家族の暖かさが、この先もずっと続いてほしい。

 何としても守り抜かなければならない。


 フランの友達、リアンという子も、生きているならば一刻も早く助けてあげたい。


[敵の準備が整う前に先制攻撃をかける]

 というのも、選択肢かも…。


 だけど、今の状況でこれはあまりにもリスクが高すぎる。まず、参謀が敵に加担している可能性が高い状況で、軍が思い通りに機能すると思えない。

 かといって例えば私とスターユ、あるいは他の信頼できるメンバーで向かったとしても、敵が虫だけならまだなんとかなるかもしれないが、いまの状況でとてもそれを実行するのは、なぜだか[とてつもなく嫌な予感がする]。

 誰かが捕まって、親しい者が激情し、準備不十分で助けに行ってまた捕まる…そういった連鎖。向こうからすればやりやすい事この上ないだろう。


 その前に、うまく軍が、城が再び機能するようになれば…リアンという子も今ならまだ比較的安全に助けられる。


 城内に出入りして、魔法や特殊な力でかき乱す奴、そいつをなんとかして引きずり出してやりたい。

 姑息で、狡猾。直接前には出ず、隠れて他人に手を汚させる。

 ひょっとすると、スターユが言ってた、恐らくほとんどがオスのヴェスパを後方で指揮している存在だろうか?


 リハルにギルドマスター、賊3人、男というのが共通点。


 仮に、奴がメスだと仮定すると…、

 そいつにもなにかヴェスパとしての習性だったり、行動のクセみたいなものもある?


 それに、城内に出入りして、参謀であるリハルすらも手籠めにして絡め取る、その姿は城内にいると目立って大騒ぎになってしまう虫のモンスターのらしい姿よりも、


 きっと、"人間と見間違うような姿"に近い可能性が高い。


「それにしてもスターユさん、やるよね~~~」

 フランが人懐っこく、スターユに絡む。

「む?」

(こらこら、スターユさん困ってるでしょ!)

「彼女が王女様だなんて~~。スターユさんのファン、いーっぱいいるんだよ!」

「ファ…ファン?私の…?」

 これは無自覚に多くの女性を泣かせてるな。

「そう、この国で一番強い剣士サマで、しかも背も高くてかっこいいって、女子がほっとくわけじゃないじゃん。みんなさ~~何度も何度もアプローチしてんのにぜんっぜんっ手応えないって!片っ端から撃沈!」


「む…私は、最初からアリシア様だけをみてましたから」

「ええっ!?」

 後先考えずからかっていたつもりが、スターユの口から飛び出したとんでもない言葉に、フランは目が点になり、顔を覆う。

「な~~~にバカなこと言ってるの!!!!」

 "気丈なる金剛石の一撃(ダイヤモンド・スラム)!!!"…のすっごく軽いやつ。

「ぐはっ!!」

 お仕置きを食らったスターユは悶絶する。

(ふ~~ったく、全く恥ずかしいったらない…)

(なんか、さっき炎を出したときよりも熱いし…)


 待てよ…


 フランの言葉が引っかかった。

 男女の視点の違い、行動原理…。


 スターユは、剣士としてはこの国で文句なしに、一番強い。はっきりいって誰も敵わない。


 ただ殖える、量を増やそうとするヴェスパのオス、

 対して、敵の魔物のメスの方は、ひょっとすると…。


 種のステータスを大幅に引き上げるための、頂点を目指してくるんじゃ―


 だとすると、考えが正しければ、こちらから例のコソコソしてる敵をわざわざ探す必要は、たぶん、ない。

 条件さえ整えば、向こうから、いずれ勝手に来る。


「あの、アリシア様」

 リゼットが心配そうに話しかける。

「大丈夫でしょうか」

「へ?」

 アリシアは目を丸くする。

「今日は確か、祝宴でしょう?準備などは…」

 頬に手を当てるリゼット。


(あ・・・)


 リゼットに言われるまでかんっぜんに忘れてた。

 既に日は高く昇っている。

 今夜は、同盟国との結束を高めるための定期的にある祝宴。

 専用のドレスや、挨拶だの、準備には、それはもう時間がかかる。


 今までの私なら、いまごろもろもろの用意にひたすら時間を費やしていただろう。

 それが今や戦うことしか頭になくって…。私もスターユのがうつってきてるのかも。

 行動を共にし始めて、まだ一日も経過していないのに…。


(ま、いいか…)


 今は間違いなく緊急事態。生き残れば今後もできるお祝いごとより、迫りくる脅威に立ち向かうため、優先される事をやってきたのは間違いない。


 毎日戦いに明け暮れて頑張ってくれてたスターユの気持ちが、少しだけわかった気がする。


 ただの戦闘狂なんて思ってたけど、ほんとに脅威と戦おうと思ってたら、こうならざるを得ないんだ。

 この先は、彼の気持ちも理解しなくてはならない。多分、そういう戦いになる。


「それじゃ、お城に戻って準備するわよ。あんた、私が服選んだげる」

(母さんかな…?)

 二人はレオニウス一家に暫しの別れの言葉を交わし、研究所を後にする。

 背後ではフランが元気いっぱいに手を降っていた。

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