第10話. ただのお友達
[AI非使用]
同盟国記念祝宴―
それは、アストリア外の国も含む近隣諸国との会談と、パーティーを兼ねていた。
ここでうまく立ち回れば、他国との連携協力が得ることができる。それはこの状況を打開するのに必要だと判断され、危機的な状況だからこそ、開催された。
今回は、近隣の友好国である、発展目覚ましい魔法道具の輸出大国ユースタシアと、海を挟んだアストリア外にある赤き砂の大地、バルメキアが参加している。国を守る加護の要となるアリシアはこの国から動くわけにはいかず、十分な兵力・警護とともにシルベニア城に要人が集まってきていた。
大円卓で行われた、会談での各国の報告によれば、ヴェスパが出現しているのは今のところシルベニアのみ。
アリシアの呼びかけが功を奏し、ユースタシア、バルメキアとも快く協力の意思を示し、兵力や魔法道具の提供が決定された。
(これで、あとは城に隠れてる敵さえ引きずり出して仕留めれば、この国を、この世界を救うことができる…あともう少し!)
その後はこれまでの同盟国との周年記念、更なる結束の絆と勝利への盃として、祝宴が開かれる。
シルベニア城 大広間―
祝宴会場となる大広間では、夜空に照らされた床や壁が輝き、きらめいていた。
緊張は一時ほぐれ、生真面目な大臣や政管、屈強な将校たちも盛大な宴に皆沸いている。
(じ〜〜~)
アリシアは遠目でスターユの方を観察する。
(は~、ちょっとやりすぎたかな…)
アリシアは同盟国の首脳と席を共にしており、なおも交流を図っているが、スターユとは一旦物理的に離れ離れ。
彼には重要な任務を任せてある。が、彼の周りには男も女も彼と話したいのか人だかりが出来、賑わっている。ドレスアップさせて敵をおびき出すつもりだったが、これじゃ人が多すぎてだれが怪しいのかよくわからない。
「あの人のことが、そんなに気になる?」
「わわっ!」
アリシアにやわらかく問いかけたのは、アストリア外の同盟国であるバルキメアを治める王女、ノクティアだ。
褐色の光を照返す肌に、黒く揺らめくドレス。頭から流れるヴェールの姿をした美しい王女。
その気品に満ちた佇まいと、治める者としての手腕や実績は、かねてからアリシアにとっての憧れだった。
なるべく悟られないようにしていたつもりではあったけど、無駄だったか。
「ふふ、顔に書いてあるわよ~?あなたの気持ち」
「ノクティアさん、はは、やっぱりあなたには隠し事はできないや」
(自分ではあんまりわからないけど、なんか会う人会う人に次々とばれてる…それも一瞬で)
「これははやく、あなたの国に蔓延る魔物をなんとかして、ゆっくり恋をできるようにしてあげなくちゃねぇ…」
「スターユ君と、あなたのためにも」
(…)
「彼はせっかちなのは、苦手だろうから、ねぇ?」
(…)
「あの」
「ん~、なにかしら?」
「―ノクティアさんは、スターユとは…その、知り合い…なんですか?」
「知りたい?」
ノクティアは悪戯っぽく笑みを浮かべる。見知っている人、信頼できる人のはずなのに、私は緊張している。
「…はい」
「ふふ、たーだーの、お友達よ?」
「そう…ですか、あはは」
ほっとすべきところなのに、私は妙な冷や汗をかいていた。
一方、スターユは―
(どうしてこんなことに…)
祝宴ではアリシアとはしばらくは物理的な距離をおいて行動することになっていた。
王女に与えられた俺の任務はざっくりいうとこうだ。
・何らかの誘いがあったり、不審な人物がいたら、そいつの顔と名前などできる限り特定しろ
・能力にかかると危ないから会話は最小限にとどめる
・誘い自体は、きっぱり断れ。私に知らせず他人と二人きりになったら殴る(今度は手加減ナシ)
(本当に俺は、信用されてるんだろうか)
それが、今、俺の周りには人、人、人…俺を囲っている。
城や王国内でアリシアと一緒に行動してたのがすでに広まってるらしい。次々に進展具合を聞いてくる。
これでは、不審人物を探るどころではない。
「いつからお付き合いしてたんですか!?」
「ご結婚は前提なの!?」「ご子息のご予定は!」
何なんだ、あんたら。一緒に行動しはじめた当日だぞ!?いや、そういう関係も確かにあっていいとは思うが、王女だぞ…。
自分のまいた種ということもあるかもしれないが、今はこれ以上アリシアに迷惑をかけるわけにはいかない。
スターユは、先ほどのアリシアとの、魔法や、マナに関する話を思い出す。
(相手に気持ちを伝える魔法…か)
今は、余計なことを話すと、そういう雰囲気、マナが形成されてしまい、引きずりださなくてはならない敵が遠ざかってしまう気がする。俺はとりあえず、話題をそらしたり適当に流してみることにした。
―が、あまり効果がない、むしろますます興味津々になってきてるような。
なんだろう、仮に名付けるとしたら、過剰な"期待"のマナに圧倒されているのか?
じゃあ、"拒絶"だとか"無関心"のマナなんてのもあるんだろうか?
ここは一旦、俺とアリシアの話題に触れるような、そういうマナをつくらせないように徹底する。
それでいて、向こうが望んでいるものに対応するような空気を形成するような言動で、マナを変えることができるかもしれない。
うーん、どうしよう。俺は嘘が苦手だし、どーも言動が読みやすいらしい。
[やっぱり正直が一番!アリシアへの想いをすべてぶちまけた]
[目の前の女の子の手を握った]
[アリシア様は俺の癖には刺さらない、絶賛彼女募集中だ!とアピールした]
[事実を告げる]
いろいろ選択肢がある気がしたが、俺は…。
「ねぇ、もう手は繋いだんですか!?二人っきりの時はなんて彼女を呼んでるの?」
「落ち着いてください。私は、危険な魔物が蔓延る危機的状況の中、アリシア様の護衛を任命されました。そういった接触はありません。私は、アリシア様のことは、『アリシア様』とお呼びしております」
(これは事実だ)
王家の血筋の能力で殴られたり、衣服やネクタイを整えてもらったりしたけど、この質問に対しては正しく返答している。
心にある嘘偽りない気持ちなら、通るはず。
「たしかに、こういう状況ですもんね…」
周りの雰囲気が変わった。見知らぬ関係への過剰な期待・加熱から、蓋をあけてこんなものか、という反応。
でもそれでいいんだ。周りの人だかりが少しはけていく。
(ふぅ…)
「ふ~ん、結構、純情なのね」
やわらかい声ーー
その子は堂々と割り込んできた。
ふつう、マナー違反だが、でも、なんか周りの人は怒るどころか頭を下げ、素直に避けている?
この人は…。
きめ細かな褐色の肌に、神秘的な長い黒髪。
頭から体は滑らかなヴェールが流れるように包む。
背が高く、俺にやや迫るぐらいの体格の女性。
ノクティアだった。
「お久しぶりねぇ、スターユ。お元気かしら?」
「ノクティア様…」
「お会いしとう御座いました!」




