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第四話 ⑧

***


 寮室に戻ると先に戻っていたジュノーが待っていた。

「バスケット見つかったんだ。良かったじゃん」

 と、笑っている。

 そういえばジュノーと一緒に隠されたバスケットを探そうとしてたんだっけか。

「犯人誰なんだろうね。明日探す?」

「いや、いいよそんな。事を荒立てたくないし……」

 リンネは目を逸らしながらそう言う。


 それからしばらくリンネとジュノーは他愛もない会話や授業のことなどを話して過ごす。

 夕方になってジュノーだけ先に浴場に行ったので、今日のことに関してリンネと話すことにした。

「リンネ。あのさ、あのズルバッカーだけど……」

 放課後に戦ったズルバッカーの元となった女生徒の容姿に関して伝えた。

 するとリンネは「そっか」とあまり興味なさげに返した。

 どうしたんだろう。あまり元気がないようだ。らしくない。

「あのさ、ヒスイ。どうやったらインフィナイトになれるか分かる?」

 悩みを聞いてみようかと思った矢先に先制でぶちまけられた。

 まあ何となくリンネが悩むとしたらこのことだろうなとは思った。

 先ほど王子が言っていた言葉──『出来ればリンネを巻き込みたくない』というものが引っかかっていたのだろう。

 リンネはずっとガーネットに守ってもらってきた。

 そして今回は苦戦するガーネットを後ろから見守ることしかできなかった。

 リンネには確かに隠匿空間を作るという役割はある。

 ただ今の所本当にそれだけなのだ。

 無力感に苛まれてしまうことは間違い無いだろう。

「インフィナイトになるには……。自分以外の大切な存在を守りたいと強く思うことが大切だってのが定番かな」

「なにかを守りたい、か」

 そう言ってからふと気がつく。

 この条件、リンネがクリアするのは地味に難しくないか?

 ガーネットは国を守るため、カーネリアンは王子を守るためにインフィナイトになれたが、両者とも生まれながらその役目を背負い、その精神を16年17年叩き込まれ続けた人間だ。

 一方でリンネはこの世界に来てまだ1週間ちょっと。

 クロムの記憶に寄り添って体を張ることはできるが、"リンネ本人が"心底守りたい物なんてこの世界にあるだろうか?


「守りたいもの、あるかなあ……」

 リンネはそう言って、天井を仰ぎとてもとても大きなため息を吐くのだった。

 結局、その日は気になった事を聞けずじまいだった。

 特に王子とアーロンの関係を知った時のリンネの反応──『原作とは違う』というのはかなり気になったのに。

 同室のジュノーの存在もあり、好きなタイミングで話せないのももどかしい。

 これからも多難なのだろうなあ……


***


「二人目のインフィナイトですか」

「そう! つってもオレは別に普通に戦っただけだぞ!」

 何処かにある暗いバーにて、ヴリイソンとアナンダはソファに腰掛けながら話していた。

 双方とも苛立ちを隠そうともしない。

「貴方が無能だからではないですか?」

「んだとゴルァ!」

 バシンッ! と、机を叩いてアナンダは立ち上がるが、思い返せば不要な挑発をしたのは自分だったためグッと堪える。

 それよりもアナンダには伝えたいことがあった。

「……このままだと向こうの戦力は増える。あと1人か2人は増えるだろうな」

「でしょうね。そういった流れであることくらいは存じ上げていますよ」

 ヴリイソンはそう返しながらノートパソコンを打つのではなく、紙に直接何かを書いていた。

 「万年筆なんて使いにくい……」とぼやきながら書き上げたそれをアナンダに見せる。

 そこに書かれていたのは上段に3人、下段に3人、合計6人の人物の名前と似顔絵、そして大雑把なプロフィール。

 ただし、上段右の人物は描いている途中のもので、上に大きなバツを被せられていた。

「字ィきったな」

「うるさいですね、こう言った仕事をしているとアナログで字を書く機会無くなるんですよ!」

 字は読みにくいが、絵は万年筆で下書きなしで描いたとは思えないくらいバランスが整っていた。

 ヴリイソンは眼鏡をクイと上げる。

「ノア、アーロン……その流れであれば、ここに書かれている人物が次に変身する候補となります」

「なるほどね。リンネ・クロム以外は知らん奴らだな」

「アナンダ。貴方の予想では次は誰がインフィナイトになると思いますか?」

 アナンダはヴリイソンの質問の意図を理解し、顎に手をやって紙を凝視した。

「上の男3人が例の対象なんだな?」

「ええ。ただバツをつけた人物はまあ……」

「あーはいはい。言ってたね。だとするとこの2人のどちらかか両方じゃねえの?」

「リンネ・クロムや他の2人の女性は?」

「リンネは超警戒だけどおいそれと手を出せねえな。ジュノーは……何ともいえん。どれだけ知っているかだ。だがあと1人は……」

「……ええ」

 2人は同じ人物の顔を思い浮かべ、各々険しい表情となっていた。

「この女がインフィナイトになったら面倒だ。だが、危害を加えるのもまずい」

「もちろん。彼女の処遇に関しては"彼"が帰ってきたら考えましょう」

 それでは、とここまでで絞った3人をヴリイソンは順々に指差した。

「誰が次のインフィナイトだと思いますか?」

「流れ的に多分次も今在学している奴。だからコイツは無し。となると残り2人になる。……リンネの立ち位置が特殊だって考えると、消去法的に狙うならこっちになるな」

 アナンダは紙の一番左上に書かれた人物を指差した。


『ヴェルリヤ・サハスラーラ』


「彼を、インフィナイトにしないようにすればいいのですね」

「そ。上手いことやれよ」

 ヴリイソンはニヤリと不敵に笑う。

 まるで蛇のような形相だった。

「お安い御用ですよ」

 

次は1月更新予定です

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