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第四話 ①

「朝からお集まりいただき、ありがとうございます」

 早朝、王立学園に向かうリンネをたくさんの街の人が馬車乗り場まで見送りに来てくれた。

俺はバスケットの中からその様子を見守る。

リンネは集まってくれた人たちに一礼した。


「リンネちゃん」

中には昨日バケモノにされたマルティナさんの姿もあった。

リンネが学校に行くことを妬むマルティナさんを思い出して少し身構えるが、彼女はリンネの手をとり微笑んでいた。

「お勉強、頑張ってね。あなたなら出来るわ」

 優しい声にリンネも少し強張っていた表情を柔らかくし、

「はい! 頑張って来ます!」

 と、彼女の手を握り返した。


 見送りの最前列には、リンネのご両親がいた。

「リンネ。頑張って来てね。聖女を継ぐ道を選んでも、誰かを愛する道を選んでも……それがあなたの本当にしたいことであれば、ママは応援してるわ」

「ママ……」

 悲しそうではあるが、微笑む夫人とは対照的にリンネのお父さんは俯いている。

昨日のことは覚えていないそうだが、「リンネに行ってほしくない」というのが本音だとすると、この反応も無理はないだろう。


「パパ、ごめんね。寂しい……かな?」

「……リンネッ!」

 お父さんはリンネのことをギュッと抱きしめる。

その声には涙が滲んでいた。


「寂しい。けど、親のわがままで子の未来を潰すのは最低の親がやることだ! だから、引き留めない……。行ってこい! リンネ!」

「パパ……!」

 リンネもお父さんを抱き返す。

周りの見送りに来てくれた人達の中には、うっすら目に涙を浮かべている人もいた。


 街の人々と話しているうちに馬車は到着した。

リンネはその馬車に乗り、

「それじゃあ、行って来ます!」

 と、笑顔で手を振って見せた。


「リンネちゃん、頑張ってね!」

「学園生活楽しんでこいよ!」

「この街の誇りだよ!」

 街の人たちは口々にリンネにはなむけの言葉を贈り、手を振ってくれた。

彼らが見えなくなるまで、リンネはずっと手を振り続けた──


***


 暗いバーにて。

アナンダは足を組みながらカウンターに座り、ニヤニヤしながらヴリイソンを眺めていた。


「ケッ、大口叩いてやられてやんの」

「フン。……でもまあ、いいデータが集まりましたよ」


 頬に絆創膏を貼ったヴリイソンはソファに腰掛けて、ノートパソコンのキーボードを叩いていた。

カタカタという音が、男2人しかいない空間に響く。


「まずあの妖精。相当賢い。正体に関しては掴めませんでしたが、人間と同等の知能があると掴んで間違いなさそうですね」

「その『間違いなさそう』って言い回しなんかムジュンして……ぶべらっ!」

 ヴリイソンが指を鳴らすと、アナンダに軽い電流が走った。

ヴリイソンは何事もなかったかのように続ける。


「そして次にあの女。あの喋り口調からして……魂の出所が"あちらの世界"なのでしょう」

「ふーん、リンネつったな? つーこたぁついにこの世界の主人公がやってきたってワケかい」

「リヴァイアサン様のおっしゃる通りであれば」

 ふーん、と、アナンダは珍しく何か考え込むように腕を組んだ。


「そして、最後にインフィガーネット」

「あああいつ! なんで男のくせに女になるんだ! 最近のインフィナイツってそうなのか!?」

 アナンダは思考を辞めて不機嫌さを隠そうともせず、グラスの中の飲み物を一気に飲み干す。

「知りませんよ。……彼女の戦闘能力について分析しました。データをデバイスに送信しましたよ」


 アナンダの腰につけているバッグがヴー、ヴーと鳴った。

アナンダはそのバッグの中身を取り出し、わざとらしくため息をつく。


「これってつまりさあー……」

「『テストプレイ』、頼みますよ」

「はぁ〜、そうなるよな。わかりましたよ、社畜サマ」


***


第四話②以降の更新をもう少しお待ちください。

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