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スラムの転生孤児は謙虚堅実に成り上がる〜チートなしの努力だけで掴んだ、人生逆転劇〜  作者: 鳥助
第二章 伯爵家の養女

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81.愛し方

 午前と午後の授業を終え、私はルークを迎えにいった。


「お姉様!」


 数時間ぶりに見るルークはそれは嬉しそうに私に駆け寄ってきてくれた。頭を撫でると、とても嬉しそうな顔をして微笑んでくれる。


「では、お義母様の所に行きましょう」

「う、うん……」


 だけど、エレノアの事を出すと、途端に緊張した様子になった。今まであまり交流を深めていなかったのだ、どうやって接すればいいのか分からないのだろう。


「ルーク、大丈夫です。素直な気持ちですよ」

「……うん、分かった」


 勇気が出るように手をギュッと握ってあげると、ルークはキリッと表情を引き締めた。うん、これなら大丈夫だ。


 私達は手を繋ぎ、廊下を進んだ。そして、エレノアの部屋に辿り着く。ファリスが扉を開けてくれると、私達は部屋の中に進んで入った。


「お義母様、お待たせしました」

「お、お待たせしました」

「ようこそ、来てくださいました。さぁ、席に座ってください」


 軽く挨拶をすると、エレノアから席に座るように促される。私達は言われた通りに席に座り、程なくしてお茶を用意された。


 そのお茶を一口飲み、心を落ち着かせると、早速話題を切り出す。


「お義母様、お時間を作ってくださってありがとうございます」

「大丈夫です。話したいと思っていたところです」


 そう言って微笑むが、やっぱりどこか冷たい。まるで社交辞令をされているかのような感覚だ。


 エレノアの凝り固まった貴族の仮面を剥がすには、相当な力が必要みたい。一気に剥がすのは無理だろうけれど、少しずつならきっと……。


「今日はルークの魔力操作を見て頂きたいです。とても上手に出来ているので、ぜひ見てください」

「えぇ、私もみたいと思っていたところです。ルーク、あなたの魔力操作を見せて貰ってもいいかしら?」

「は、はい……!」


 エレノアの言葉にルークは体を固くした。緊張している様子だ。このままだと魔力操作が覚束ないのではないだろうか?


「ルークが緊張しているみたいですね。その緊張を解さないといけません」

「そうみたいですね。どうしますか?」

「もちろん、緊張を解します」


 私は席から立ち上がり、ルークの傍に寄った。そして、両手をギュッと掴んで、しっかりと目を見る。


「ルーク、いつも通りにやれば大丈夫ですよ。落ち着いてください」

「う、うん……」

「では、お義母様も一緒にやってください」

「私もですか?」

「お願いします」


 私一人でも大丈夫そうだが、ここは二人を近づけるチャンス。お願いをすると、エレノアは席を立ち、ルークの隣にしゃがみ込み、手をそっと握った。


「ルーク、あなたなら出来ます。自分を信じてください」

「お母様……」


 エレノアの言葉にルークは驚いたように目を丸くした。そんな事を言われたことがないようなリアクションだ。


 ありきたりな言葉だったけれど、それはルークの心に響いたようで――。


「僕、頑張る。だから、見てて」


 キリッと表情を引き締めた。その健気な姿を見て、少しだけエレノアの表情に温もりが宿ったような気がした。


 ルークが席から立ち、気合を入れる。


「今から始めます」


 そう言った、ルークは自分の体の中の魔力を操作する。魔力はゆっくりと動き出し、ルークの体を巡っていく。それは以前よりも上手になっていて、ルークの成長が感じられた。


「凄いです、ルーク! 前よりも上手になっていますよ!」

「えへへ、そ、そうかな?」

「お義母様も凄いと思いますよね? ルークを褒めてください!」

「えぇっと……。ルークの魔力操作はとても上手ですよ」

「ほ、本当……?」


 覚束ない誉め言葉を口にするエレノア。だけど、その言葉だけでもルークの表情は変わった。


 まるで、初めて褒められたような顔をした。その嬉しそうな様子を見ていると、慈しみの心が溢れてくる。


 ちらりとエレノアを見て見ると、いつもの完璧な微笑みが崩れていた。少し気にかかるような事がある、そんな顔をしていた。


 きっと、私と同じだ。慈しむ気持ちが芽生えたに違いない。その気持ちをもっと膨らませる必要がある。


「ルーク。素直な気持ちですよ」

「う、うん……」


 そっと、ルークの背を押すように言うと、ルークは戸惑いながらもエレノアの前に行く。


「どれくらい、良かった?」


 おずおずと言った様子でエレノアに問う。すると、エレノアは困惑した顔になった。こういう時、どう声をかけていいのか分からないみたいに。


 だから、私はそっと耳打ちをする。


「沢山褒めるんですよ」


 そう言うと、エレノアは困惑したながも微笑みを称えた。


「ルークがこんなことが出来て、素晴らしいと思いました。ルークは努力したのですね、とても偉いです」


 たどたどしい誉め言葉。だけど、そんな言葉でもルークを笑顔にする力はある。


 ぱぁっ! と、表情を明るくしたルークはエレノアに抱き着いた。


「……お母様に褒められた、嬉しい」


 その瞬間、エレノアは驚いたように少しだけ目を見開いた。ほんのわずかな変化だけど、きっとエレノアの心は見た目以上に衝撃を受けているはずだ。


 自分の子供が嬉しいと笑い、抱き着く。ごく普通のありふれた交流だけれど、この二人に取っては初めてに等しい交流。


 ルークは母親の温もりを感じ、エレノアは子供の温もりを感じる。お互いを意識するには十分すぎる交流だった。


 抱き着いて離れないルークを見て、エレノアは困惑している。こういう時、どうすればいいのか分からないと言っているようだ。


 だから、私はそっと耳打ちをする。


「抱きしめてあげれば、ルークが喜びますよ」


 そう言うと、困惑した顔をこちらに向けた。早くそうして欲しいと思っていた私は強く頷いて、行動を急かした。


 すると、エレノアはそっとルークの体を抱き寄せた。本当に抱き寄せるだけで、声とかはかけていない。だけど、今はそれで十分だ。


 今、二人は家族としての温もりを感じている。初めて……いや、きっとルークが生まれた時は抱き上げていた事だろう。だから、それ以来振りになる。


 慣れない交流に二人は私が声をかけるまで抱きしめ合っていた。

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― 新着の感想 ―
いいじゃん、いいじゃん!この感じで行ければ良いですね!
親に虐待された人が自分の子供を無意識に虐待してしまう事がある様に、やはり幼少期や思春期の家庭環境って人格形成において凄く大事なんだろうね。
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