表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
スラムの転生孤児は謙虚堅実に成り上がる〜チートなしの努力だけで掴んだ、人生逆転劇〜  作者: 鳥助
第一章 スラムの孤児

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

49/72

49.急な依頼(2)

 私の言葉に、情報屋の男は口元を綻ばせ、ノットは不安げに眉をひそめた。


「ルア、本当にいいのか? 相手がどんな奴かも分からないんだぞ」

「それなら、ここにだって言えることです。お客さんがどんな人かなんて、来てみるまで分かりませんから。だから同じだと思うんです」

「それを言われると……確かにそうだが……。だがな、今回は今までやったことのない仕事だぞ?」

「それだって、今までと同じです。私はずっと、経験のないことを一つずつやってきました」


 ノットの不安を真正面から受け止めながら、私は自分の気持ちを言葉にした。ノットは唸るように黙り込み、考え込む。


「ノット、ルアがここまで言うんだ。認めてやってもいいんじゃないか?」

「むぅ……。だが、心配で仕方がない」

「気持ちは分かるさ。いきなり手を放すのは不安だろう。けどな、俺が保証する。ルアを絶対に酷い目には遭わせない」


 情報屋の男が静かに告げると、ノットはますます複雑な表情になった。しばし沈黙した後、ようやく決意を固めるように息を吐く。


「……分かった。ルアがやりたいなら、俺も協力しよう」

「ノットさん……! 本当にありがとうございます!」

「ありがとう、ノット」


 ようやくノットが頷いてくれた。胸の奥がじんわりと熱くなり、私は情報屋の男にしっかりと向き直った。


「これから、よろしくお願いします」

「あぁ、こちらこそよろしく。ルアには絶対に酷い目は合わせない」


 私がお辞儀をすると、情報屋の男は真剣な眼差しでそう言い、さらに言葉を続けた。


「この依頼が終わった暁には、大きな報酬を手にできるだろう。それがあれば……ルアがスラムを抜け出すことも不可能じゃない」

「えっ……スラムから、出られるんですか?」

「あぁ、それくらいの大きな報酬だ」


 突然の話に、思わず息を呑んだ。いつかスラムから脱出したい――そう願いながらも、ただ夢のようにしか考えていなかった。まさか今、この場で現実の可能性として示されるなんて。


「それは本当なのか?」

「あぁ。本当にそれほど大口の客だ。間違いなく、ルアはスラムを出られるはずだ」

「おい、聞いたか、ルア! スラムから出られるかもしれないんだぞ!」


 ノットが弾む声で叫んだ。まるで、まだ呆然として言葉を失っている私の代わりに喜んでくれているようだった。


「……信じられないです。本当に、そんな日が来るなんて……。スラムを出られるきっかけを、私がもらえるなんて……」


 胸の奥から、じわじわと喜びが広がっていく。ずっと「いつかそうなればいい」と夢見ていたことが、今まさに現実になろうとしている。


「この報酬があるからこそ、俺はルアに話を持ってきたんだ。スラムを抜け出すには、大きな力がいる。その力を、この仕事で手に入れてほしい」

「……私のために、そこまで……ありがとうございます!」


 私は思わず深く頭を下げた。ずっと頑張ってきたと思っていたけれど、私のことを真剣に考えてくれていた人がいた。その事実に胸を強く打たれ、これまでの努力が報われたような気がした。


「じゃあ、この話は進めていいな?」

「はい、お願いします」

「分かった。じゃあ、明日の朝に迎えに来る」


 それだけ言い残して、情報屋の人は店を出て行った。静けさが戻った店内で、私たちは顔を見合わせる。


「やったな、ルア! その仕事をやり遂げれば、スラムから抜け出せる!」

「本当に良かったわね、ルア。今までの頑張りが報われたのよ」

「……はい。ありがとうございます、お二人とも!」


 ノットとハリーがすぐに駆け寄り、心からの祝福をくれる。胸が熱くなって、私は思わず深く頭を下げた。


 けれど、次の瞬間ノットが表情を曇らせる。


「……すまん。俺にもっと力があれば、ルアをこんなに苦労させずに済んだのにな」

「私も……。大した助けもできなくて、ごめんなさいね」


 二人の言葉に私は首を振った。


「いいんです。私は、こうして働ける場所を頂けただけで十分なんです。だから――ありがとうございます」


 ノットと出会わなければ、ここで働くことすらできなかった。ハリーがいてくれなければ、私は何も分からないままだった。


 ここまで来られたのは、二人がいたからこそだ。だから――出会ってくれて、本当にありがとう。


 そんな思いを込めて笑顔を向けると、二人は一瞬ぽかんとした後、私以上に大きな笑みを浮かべてくれた。


「まったく……ルアは本当にいい子だな!」

「ええ。私も、出会えてよかったと思ってるわ」


 ノットが優しく頭を撫で、ハリーがそっと私の手を包む。二人の温もりが伝わってきて、胸の奥がじんわりと熱くなった。


「よし! 残りの仕事も気合を入れていけるか?」

「はい、もちろんです!」

「だったら、まずは腹ごしらえだな。昼食をしっかり食べて休んでから、また働こう」

「任せてください!」


 ノットの言葉に、私は力強く頷いた。お腹を満たせば、きっともっと頑張れる。今日の仕事を最後までやりきるために――まずはしっかり食べることからだ!

お読みいただきありがとうございます!

面白い!続きが気になる!応援したい!と少しでも思われましたら

ブックマークと評価★★★★★をぜひよろしくお願いします!

読者さまのその反応が作者の糧になって、執筆&更新意欲に繋がります!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ