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スラムの転生孤児は謙虚堅実に成り上がる〜チートなしの努力だけで掴んだ、人生逆転劇〜  作者: 鳥助
第一章 スラムの孤児

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37.仕事開始!

「おお! 着替えてきたのか! すっかり普通の町の女の子に見えるぞ!」


 深緑色のワンピースに白いシャツ、髪もきれいに結ってもらった。いつもと違う自分の姿をノットに見せると、思った以上に好感触な反応が返ってきた。


「この姿だけ見れば、誰もスラムの子供だなんて思わないわね」

「ああ、全然問題ない。むしろ、こっちからお願いしたいくらいだ」


「本当ですか? 良かった……。じゃあ、私、ここで働いても大丈夫なんですね?」


 おずおずと確認すると、ふたりは優しく笑って頷いてくれた。


「もちろんだ。今の君を見て、嫌な顔をする人なんていないさ」

「お客さんにもきっと受け入れられるわ。安心して」


 その言葉に、胸の奥からじんわりと温かさが広がる。――私でも、ちゃんと人の前に立てる。スラムの子供から、一歩前へ進めた気がした。


「それじゃあ、さっそくだけど仕事の説明をするぞ。まずは、賃金の話からだ」


 ノットが少し気合いを入れて言葉を続ける。


「うちの店は朝、昼、夕の三回営業してる。一回の勤務で三千セルト。一日働けば九千セルトってわけだ」

「えっ、そんなにもらえるんですか!?」

「これくらい普通だろ。……そっか、今までまともな職場で働いたことなかったんだな」


 私の驚き方を見て、ノットはどこか気の毒そうな目を向けてきた。


「それと、うちで働いたらまかないも出すぞ。仕事の後で作ってやる」

「えっ、本当ですか!?」

「嬉しいか?」

「はい! とっても嬉しいです!」


 すごい、本当にちゃんとした料理が出るんだ……! それに席に座って、落ち着いてごはんを食べられるなんて――そんな当たり前のことすら、今の私には感動だった。


「今日は夕方の営業だけ手伝ってもらう。やることは掃除、接客、配膳、皿洗い。それと営業後の仕込みの準備もある」

「はい、分かりました!」


 やることはたくさん。でも、今までのように一人で黙々とする作業とは違って、人と一緒に動く仕事だ。ちゃんと周りを見て行動しないといけない。


「まずはハリーに色々教えてもらってくれ。俺は夕食の仕込みに入るからな」

「はーい、あとは任せて!」


 ノットはそう言い残し、厨房へと戻っていった。


「さて、それじゃあ……まずは掃除から始めましょうか」

「はい。よろしくお願いします!」

「じゃあ、水を汲みに行きましょう」


 ハリーはホールの隅にあるロッカーを開け、中からバケツを二つ取り出すと、その一つを私に手渡した。私たちはそのままお店を出て、近くの井戸へ向かう。


 ◇


「掃除を始めるわよ。ルアはテーブルを拭いてくれる? 布巾の使い方は分かる?」

「はい、大丈夫です。水に浸して、絞って使うんですよね?」

「その通り! あら、なんだ。スラム育ちって聞いてたから、何も知らないのかと思ってたけど、この様子なら詳しく説明しなくても大丈夫そうね」


 本当のスラムの子だったら、布巾の使い方なんて知らなかったかもしれない。でも私は前世の記憶がある。だから、基本的なことなら理解しているし、それが今役に立っている。


 布巾を水に浸して、しっかりと絞る。それからきちんと畳んで、テーブルの汚れを一つ一つ丁寧に拭き取っていった。


 テーブルの上には食べ物の跡がこびりついている。力を入れて擦っていくと、みるみるうちに綺麗になっていく。


 拭き終わったテーブルを確認しながら、気持ちが少しだけ晴れていくのを感じた。


「テーブル拭けた?」

「はい。確認していただけますか?」

「もちろん。……うん、バッチリ! 汚れ一つ残ってないわ。この調子で他のテーブルもお願いね」

「はい!」


 褒められて嬉しくなって、思わず声が弾んだ。その後も順調に他のテーブルを拭いていき、店内にあるテーブルをすべて綺麗にした。


「よし、テーブルはこれで完了ね。あ、そうそう。お客さんが帰った後にも、食器を片付けたらテーブルをもう一度拭くのよ」

「分かりました!」


「じゃあ、次は床の掃除よ。まずホウキでゴミを掃いて、その後モップで拭く作業だから」


 ハリーは再びロッカーに向かい、ホウキを二本取り出すと、私に一本を手渡した。


「ルアはあっちの端から。私は反対側から始めるわね」


 指示された通り、店の端に移動してホウキを手に持つ。そして、隅から床に沿って丁寧に掃き始めた。


 ホウキでゴミを集めると、砂ぼこりや食べかすが次々と現れる。イスを動かしてテーブルの下までしっかり掃くと、思った以上にゴミが溜まっていった。


「こんなに出るんだ……テーブルの下も手を抜けないな」


 集中して掃いていると、ふと目の前にハリーの姿があった。


「あら、もう終わったのね。綺麗に掃けたかしら?」


 ハリーは私の掃いた箇所を一つひとつ確認し、やがて満足げに頷いた。


「うん、上出来! ルアのやったところはゴミ一つ落ちてなかった。すごいじゃない!」

「本当ですか? 嬉しいです……!」

「丁寧に掃除してくれると、本当に助かるのよ。この調子で、次はモップで拭いていきましょ」


 また褒められた。こんな風に誰かと一緒に働いて、認めてもらえるなんて……。一人で黙々とやっていた頃とはまるで違う。人と一緒に仕事をするって、こんなに楽しいことだったんだ。


 私たちはゴミを片付け終え、次の作業――床の拭き掃除へと取りかかった。


◇ ◇ ◇ ◇ ◇


いつもお読みくださりありがとうございます。

これから他の書籍作業が入るようなので、更新頻度を三日に一回にさせていただきます。更新頻度は下がってしまいますが、これからもお読みくださると幸いです。

(作業の内容によっては、もっと更新頻度が下がる可能性があります。その時はまたお知らせしたいと思います)

お読みいただきありがとうございます!

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読者さまのその反応が作者の糧になって、執筆&更新意欲に繋がります!

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― 新着の感想 ―
ある意味、知識チートではあるなw 他のスラムの子は知らないことばかりw
おーこの作品が書籍化ですか?おめでとうございますw 更新してくださるなら楽しみにお待ちしております。
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