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スラムの転生孤児は謙虚堅実に成り上がる〜チートなしの努力だけで掴んだ、人生逆転劇〜  作者: 鳥助
第一章 スラムの孤児

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3.ゴミ漁り

 フッと意識が浮上した。すると、すぐに飢餓感に襲われる。まだ、寝ていたいのに、耐えがたい飢餓感に起きざるをえなかった。


 ゆっくりと体を起こして、目を擦る。寝る前に半分のリンゴを食べたお陰で、なんとか寝ることが出来た。それでも、それだけでは足りなかったのか、朝になれば空腹になって起きる。


 空腹でゆっくりと眠る事も出来ないなんて……過酷な状況だ。だから、みんな必死に食べる物を探すし、食べ物を巡って争ったりもする。


 出来れば争うことはしたくない。怪我にもつながるし、恨みを買う事にもなる。だから、食べ物を探す時は慎重に動いて、他の子と鉢合わせをしないようにしなくちゃいけない。


 とりあえず、このまま黙っていてもお腹は膨れない。いつものゴミ箱漁りをやりにいこう。


 ゴミ箱にゴミが入れられるのはいつになるか分からない。早朝に出す人もいれば、夜遅くに出す人もいる。


 漁った後にゴミを入れられることもあるし、漁る前にゴミを入れられることもある。だから、新しいゴミに出会えるのはいつも運次第だ。


 とにかく、数を当たろう。そしたら、きっと漁られていない新しいゴミに出会えるはず。私は家から這い出て、スラムを出て行った。


 ◇


 人目のない路地を進んでいく。普通の人が通る道を歩くと、野次が飛んでくることがある。汚いスラムのゴミが、人間様の道を歩くな、と。


 だから、余計な争いを生まないために路地を歩く必要がある。人気のない路地を進んでいくと、一つ目のゴミ箱を見つけた。


 あそこなら大丈夫かも。そう思って近づこうとすると、その近くに人気があった。そのゴミ箱にゴミを入れられる時を待っている大人が路地に座り込んでいる。


 このゴミ箱はあの大人の人が見張っているのか……。だったら、手出しはしない方が良い。もし、無理にでも漁ってしまえば、暴力を振るわれる危険性がある。


 私はすぐにそのゴミ箱を諦めて、路地を進んでいった。


 何度か曲がり角を曲がった先、またゴミ箱を見つけた。だけど、そのゴミ箱にはすでにスラムの孤児が集っていた。三人のスラムの孤児がゴミ箱に頭を突っ込んで、食べ物がないか探している。


 その中の一人が凄い勢いでゴミの中に潜ると、他の二人も同じように潜った。そして、最初に潜った子がゴミから顔を上げて、すぐにゴミ箱から立ち去ろうとした。だが、その子供の服を他の子供が引っ張る。


「何を隠した!? それを寄越せ!」

「出して、食べ物を出して!」

「離せ! これは俺のだ!」


 食べ物を見つけたであろう子供は体を精一杯に動かし、その手を振りほどく。そして、路地を走って行った。残りの二人はそれが諦めきれず、その子を追って行く。


 誰かが近くにいると、こんな風に取り合いになる。だから、気を付けないといけない。私はキョロキョロと周りを見て、誰もいないことを確認すると、そのゴミ箱に近づいた。


 まずはこのゴミ箱から探していこう。もしかしたら、まだあるかもしれない。


 自分の身長くらいのゴミ箱に乗り込み、ゴミの中に入る。それから、ゴミを漁って食べる物を探す。木片や布片が出てきて、中々食べる物が見つからない。


 これは串だし……。じゃあ、この串は? そう思って串を引き抜いてみると、下の方に一つの肉片がついていた。やった、これは食べられそうだ!


 肉に付いた土を落として、肉片にかぶりつく。固くなっているが、これは食べられる。塩気も感じられて、美味しい。久しぶりにありついた肉に喜びが湧き起る。


 串に付いた肉を綺麗に平らげた。一口くらいの肉片だったけど、充足感がある。やっぱり、肉は美味しい。


「他にないかな?」


 肉を食べ終えると、すぐに他の食べ物を漁っていった。まだ、こんなんじゃお腹は満たされない。


 ◇


 あれから、ゴミ箱を漁った。その後に見つけたのは野菜の皮や端切れ、小さなパンくずだ。それでも貴重な食べ物なので、残さず自分のお腹に入れた。


 その後は何も見つけることが出来ず、このゴミ箱から離れる決心が付いた。だけど、離れる前にやる事がある。ゴミ箱の周辺に散らばったゴミを片づけることだ。


 前世の感性が残っているから、ゴミ箱の周りにゴミが散らかっているとやっぱり気になってしまう。使っている人もきっと気分が悪くなるよね。


 だから、用事が済んだら私はゴミ箱の周辺の掃除を始めた。そんなことをしてもお腹は膨れないし、余計に体力を使ってしまう。だけど、見て見ぬふりをして立ち去るのは自分の感情が許さなかった。


 落ちているゴミを全てゴミ箱に戻すと、路地にはゴミ一つ落ちていない綺麗な路地になった。これなら、住人が気持ちよくゴミを捨てに来てくれるだろう。そしたら、またおこぼれに預かる事も出来る。


 そうして私は漁ったゴミ箱の周辺の掃除をやり始めた。誰に褒められることもなく、自分が満足するという理由だけで掃除を続けていった。


 そして、その私の行動が一つの縁を繋いでくれた。その縁から私の人生は大きく変わることになる。

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