表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
7/15

【第7話】課外任務、仙霊の森へ——迫る影と、響く鼓動

「仙苑学院 上級学習者に告ぐ。本日正午より、霊域『仙霊の森』への実地課外任務を開始する」


掲示板に貼られた訓練通知に、学院中がざわめいていた。


「課外任務って、いきなり……」


璃蒼は貼り紙を見つめながら、胃の奥がきゅっとなるのを感じた。まだ仙術の演習にも慣れていないというのに、いきなり森へって何事。


「璃蒼、来るか?」


背後から聞こえた低音ボイスに、振り向くと朱蓮が肩を組む勢いで近づいてきていた。


「もちろん来るよな? お前、朱焔麒と音阿を従えてるんだ。期待されてるぜ」


(え、いま軽くプレッシャー押し付けられたよね!?)


璃蒼の内心の叫びは虚しく、容赦なく事態は進行していた。


◇ ◇ ◇


仙霊の森は、仙界でも特に霊気の濃い地帯だ。

この地に湧く「霊核」を守るため、かつて数多の神仙が戦ったという。今は霊獣たちの聖域として厳重に結界で守られている——はず、だった。


「……結界、弱まってる?」


青梗の声が緊張を孕む。


「誰かが手を加えた痕がある」


嵐真が低く呟くと、霄が口元を歪めて笑う。


「おもしろくなってきたじゃない?」


(やめて! “おもしろい”じゃない! これフラグだから!ホラー映画だったら真っ先にいなくなるやつじゃない!)


心の中でつっこみながらも、璃蒼の中に何かがざわめいた。音阿が静かに羽根を震わせ、警戒を示す。


「……奥に、なにかいる」


そのとき、森の奥から低く唸るような音が響いた。


現れたのは、巨大な獣——否、霊獣が堕ちた姿。

黒く濁った霊気をまとい、理性を失った“穢霊わいれい”。


「……あれは……」


「まずい、後衛に回れ、璃蒼!」


「でも、音阿が……っ!」


音阿が璃蒼の前に立ちはだかり、低く唸る。


「下がってろ!!」


炎の奔流が霊獣を焼き払う。朱蓮が一気に間合いを詰め、朱焔麒を解放した。


「……焔麒、少し暴れていいぞ」


燃え立つ赤き獣が唸り、地を裂く。


「いけ、音阿!」


璃蒼の術式が展開し、共鳴する音が空を震わせた。

音阿の音波が朱焔麒の猛攻とシンクロし、穢霊を包む。


——浄化の旋律が響いた。


◇ ◇ ◇


戦闘が終わり、璃蒼は膝に手をついて深呼吸をした。


(すーちゃん、見てた? ばぁば、今日ちょっと頑張ったよ)


朱蓮が肩を貸そうと手を伸ばしてくる。


「……無茶するなよ。お前、顔には出さないけど、怖かったろ?」


璃蒼は驚いて朱蓮を見る。


「……そんな顔、してたか?」


「してたよ。俺にはわかる」


(うわあああああ!? なんか……なんか今、めっちゃときめいた……!)


朱蓮はくしゃっと笑った。


「でも……悪くなかったな、共闘。お前と、音阿と」


(だめ、しぬ……こういうこと言うキャラ……好きすぎる……)


璃蒼は小さくうなずきながら、心の中で転げ回った。


◇ ◇ ◇


「今回の件、偶然ではないかもしれん」


任務報告を終えた玄曜が、険しい顔でそう呟いた。


「穢霊の出現、そして森の結界の破損……何者かの意図がある」


謎が深まる中、璃蒼は静かに音阿を抱きしめた。


(それでも、私は守りたい。すーちゃんとの絆を、私の第二の人生を)


空に浮かぶ月が、森を照らしていた。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ