表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
5/15

【第5話】暴走する仙気、交わる絆。朱蓮、救いの炎となる。

「音阿、いくよ!」


璃蒼の声に応え、白銀の霊獣――音阿が軽やかに宙を舞った。

仙苑学院の演習場、今日は霊獣同士の連携演習。

美麗な空間を、音阿の尾がキラキラと光の軌跡を描く。


「はじめてにしちゃ上出来じゃねぇか。だが――」


演習場の向かい側、朱蓮が低く笑う。

その隣、紅蓮のように咆哮を上げるのは――朱焔麒しゅえんき


「お前、強者の前で油断するには早ぇぞ?」


「えっ?」


次の瞬間、朱焔麒が音もなく跳んだ。

地を蹴るというより、空間ごと焼き切ったかのような速さ。


「お、おとあッ!!」


音阿が瞬時に霊気を展開して防御するが、朱焔麒の爪がそれを切り裂く。

朱蓮が制止の気配も見せず、ただ微笑む。


「ほら、来るぞ」


「ちょっと待て!?」


けれど――。


その時、璃蒼の中で何かが弾けた。


熱い。痛い。眩しい。


息を呑んだ朱蓮の目の前で、璃蒼の体から紅白の光が一気にあふれ出す。


「璃蒼……お前……!」


「……は……ぁっ……、なんだ、これ……!」


霊気の暴走。


霊獣との絆が未熟な段階で、強い霊的ストレスを受けると発生する現象。


璃蒼の周囲に風が渦巻き、音が歪み、空気が震えた。

音阿が悲しげに鳴いた――


「璃蒼、気をしっかり……!まだ僕の声、届くはず!」


けれど意識が遠のいてゆく。


——もう駄目かもしれない。

——また、ここでも失ってしまうのか。


しかし、そのとき。


「……ったく、見てらんねぇ」


聞き慣れた低音が、爆ぜるように響いた。


朱蓮が風を裂いて、璃蒼の前に降り立った。

その背には、灼熱の焔を纏った朱焔麒。だが、今は完全に沈静化している。


「よくやった、焔麒。……あとは俺がやる」


朱蓮は、暴走する璃蒼の中へと、そのまま素手で霊気を流し込んだ。


「霊気ってのはな――魂の深さで決まる。お前、想像以上に“深い”ぜ、璃蒼」


彼の声は、火のように熱くて、どこか優しい。


「……戻ってこい。俺様が呼んでやる」


——その声に、璃蒼のまぶたがわずかに揺れた。


「朱蓮……?」


「やっと名前呼んだな。……気づくのおせーよ」


微笑む朱蓮の額には汗がにじんでいた。

彼は自らの霊気で、璃蒼の暴走を抑え、魂を引き戻したのだ。


「ったく、心配させやがって。……無理して、泣くくらいなら叫べよ。俺が、絶対助けてやる」


その言葉は、まるで遠い記憶の中の“誰か”がくれた救いのようだった。


璃蒼の頬に、熱い涙が一筋流れる。


「……ありがとう、朱蓮」


 

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ