【第4話】イケメンと仙術と霊獣と。仙苑ライフ、開幕!
「……ここが、私の部屋?」
仙苑学院の寮は、一人一室のプライベート空間付きという、わりと豪華な仕様だった。
白木を基調にした室内は、静謐で落ち着いた雰囲気。壁には墨彩画か飾られ、窓の外には宙に浮かぶ庭園が広がっている。
(……なんか旅館の特別室みたいな部屋!)
「着替えはこちらに。学院制服も渡しておこう」
そう言って手渡されたのは、紅と銀の美しい学院制服。
袖口と裾に流れる仙紋が上品で、少し透ける生地が妖しく艶やか。
(……これ、衣装デザイン神すぎでは???)
しかも袖を通せば、まるで肌に馴染むようにピタリと収まる。
(……神々しすぎて、鏡が見れないんですけど)
⸻
◆ 初めての授業と演習
「授業は明日から本格的に始まるよ」
霄がさりげなくそう告げてきた。
教室は光の回廊を抜けた先、雲の上に浮かぶ学堂。講義はもちろん座学と実技の両方。
「最初は“霊気操作基礎”。つまらないだろうけど、大事なんだ」
と、青梗が笑う。
(いやいや、私にとっては全部新鮮なんだけど!?)
その翌日。
「霊気は感じ取るものではなく、流すものだ。呼吸のように、自然に」
先生役はなんと、嵐真だった。
穏やかながらも重厚な声に、教室全体が静まり返る。
(……めっちゃ“イケボ”で講義される空間、天国かな??)
けれど、講義は甘くない。
霊気の流れを感じ取ることすら難しく、璃蒼は集中しすぎて何度も鼻から息漏れしそうになる。
「肩に力が入りすぎている。……少し、力を抜け」
背後から低く優しい声と共に、手が璃蒼の背へふれた。
嵐真の指先から、静かに“気”が流れ込んでくる。
(……ちょ……これはBLの開幕じゃね!?!?!?)
心拍が跳ね上がる中、なんとか呼吸と霊気を合わせる璃蒼。
⸻
◆ はじめての実技演習、そして——
その日の午後は、霊獣との連携訓練。
「……こっちだ、璃蒼」
朱蓮に導かれ、璃蒼が向かったのは演習場の中心。
そこに現れたのは、燃えるような瞳の獣——朱焔麒。
「……あれが、お前の相棒か」
「そう、朱焔麒だ」
朱蓮が笑みを浮かべて言う。
だが次の瞬間、空気が震えた。
「——!」
璃蒼の足元に、白く淡い光が収束してゆく。
そこから現れたのは、白銀の鱗とふわふわの美しい尾を持つ、小さな霊獣。
音阿
「璃蒼、僕もいるよ」
澄んだ鈴のような声が、璃蒼の胸に響く。
彼(彼女?)の姿は、龍と狐が混じったような、小さく神秘的な存在。
「この子が……私の、霊獣……?」
「やっと会えたね。君の魂の音、ずっと感じてた」
璃蒼の指に頬をすり寄せるようにして、音阿は優しく瞬いた。
(……あぁ……この子、私の全部を受け入れてくれてる……)
目頭がじんわり熱くなる。
過去も、未練も、全部そのまま抱きしめてくれる存在。
その光景を見ていた朱蓮が、ぽつりと呟く。
「まるで初恋の再会だな」
「……うるさい……」
⸻
◆ はじまりの鐘
その夜、学院の塔から鐘が鳴った。
璃蒼の新たな生活が、いま本格的に始まろうとしている。
•イケボたちに囲まれ
•美麗な霊獣に懐かれ
•自分の魂と向き合う術を知る
「——これは、夢なんかじゃない。私の、二度目の人生なんだ」
胸にそっと手を当て、璃蒼は静かに微笑んだ。