【第3話】朱に水色、緑に黒—再会はイケボの嵐
仙苑学院は、空に浮かぶ巨大な蓮の花のようだった。
山の稜線から天へと延びる“仙気の橋”を渡りきった先に、それはあった。
浮遊する楼閣、虹色の霊気に包まれた庭園、宙を舞う紙のような鳥たち。
一歩踏み入れただけで、空気がきらめいている。
「……まって、世界観が豪華絢爛すぎん???」
璃蒼はひとりごちた。いや、脳内ツッコミが漏れていた。
仙人・玄曜に導かれて進んだ道の先に、学院の正門が現れる。巨大な門扉には、金の文字でこう記されていた。
《仙苑学院》
「よくきたな。璃蒼」
声の主に振り返ると、そこには——
「……朱蓮……!」
燃えるような朱の髪を揺らし、赤と金の仙服をまとった男が立っていた。
胸元がややはだけ、色気が洩れ出している。
その切れ長の目で見つめられ、璃蒼の心臓は思わずドラムロール。
(顔がHYDEと吉沢亮のハイブリッドなんですけど!?近距離反則!)
「また会えたな。新顔が来るって聞いてたが……お前だったとはな」
その声は、間違いなく——諏訪部順一枠。
「朱蓮……だよね? あの時の……」
「そうだ、忘れるかよ。あの時、お前、俺にずっと見惚れてたろ?」
「なっ、そ、そんな事実はない」
(やだもうこれ、再会イベントの台詞じゃん!!)
と、その時。
「やれやれ、相変わらず軽口が過ぎるね、朱蓮」
涼やかな声が割り込んできた。
振り向けば、薄い水色の衣をまとった整った顔立ちの青年が、扇子を片手に微笑んでいる。
「青梗……!」
(あ、これ……絶対“櫻井孝宏”枠の人……!)
「君が転生してきたのは、正直驚いたよ。
でも……なんとなく、また会える気はしていた。不思議だね」
その瞳に揺れるのは、涼しげな知性。そして、どこか懐かしい慈しみ。
そこへ、重厚な気配とともに、もう一人の影が現れる。
「…………ふむ。なるほど。これが、あの“魂の再生”か」
深緑を基調にした仙衣に身を包み、鋭い眼光と包容力のある声音を響かせた男——
「嵐真……!」
(はい、出ました。速水奨枠の重低音仙人……好きです!!!)
「俺はこの目で確かめる主義だ。
……だが、お前の瞳を見ればわかる。確かに“璃蒼”だな」
その瞬間、心の奥の何かが、じんわりと熱くなった。
そして、最後に現れたのは——
「ふふ、また面白くなってきたね。まさか君が来るとは」
濡羽色の髪を風に揺らし、どこか影を帯びた微笑を浮かべる青年。
鋭い眼差しと、皮肉の効いた言葉を纏うその姿。
「霄……」
(でた、宮野真守枠のニヒル系……策士属性確定)
「学院生活、きっと退屈しないよ。僕が保証する。ねえ、璃蒼?」
——ふわりと囁かれ、距離が近づいた瞬間、璃蒼は思った。
(なんでこんなにイケメンに囲まれてるの!?自分、元は57歳なんですけど!!!)
だが、それを口に出すことはなかった。
この“美形揃いの仙界学園”、これは、まさしく第2の人生の舞台。
そして、彼らとの再会こそが、始まりだった。
運命が再び巡り、蒼き魂が朱き炎と交わる場所——仙苑学院。
璃蒼の“異世界イケメンだらけライフ”が、いよいよ本格的に始まる。